現在価値という観点で譲渡のタイミングを検討、比較を数字で説明する【M&A日記】
現在価値という考え方がある。
今の1億円と10年後の1億円とを比べると、今の1億円のほうが価値があるというものだ。
理由としては、今の1億円は運用することができるため。
運用というと目減りのリスクを考えるかもしれないが、預金でも良い。
仮に定期預金の金利を0.2%とするなら、10年で預金額は約1億2百万円に増える。
10年後は1億2百万円になるので、10年後の1億円と比べると、現在の1億円のほうが価値が高い、ということになる。
M&Aにおいて、譲渡側には譲渡側のタイミングがある。
今譲渡すべきでないということもある。
理由は様々だが、譲渡価格に関することで言えば、
業績はまだまだ伸びるため、今譲渡してしまうのはもったいない
今は市場環境が悪いため、もう少し環境が良くなって買収企業が高値を付けるようになってから売りたい
などということがある。
これは果たして本当にそうなのか?を数字でちゃんと整理しておくことが必要だと考えている。
億円単位の譲渡額を手にしたとき、これには様々な運用方法がある。
プライベートバンクや不動産投資などによって、安全資産とは言い切れないかもしれないが、実は決してハイリスクではない運用によって、利回り3~5%ぐらいの実現が可能だ。
例えば今譲渡すると5億円という評価になったとする。
5億円を利回り5%で5年間運用すると、約6.4億円にまで増える。
ということは、仮に5年間譲渡を延期するとすれば、5年後に6.4億円以上で譲渡できる状態になっていないと、結果的には今譲渡したほうがよかった、ということになる。
ちなみに10年だと約8.1億円にまで増える。
複利の効果は絶大だ。
10年間で企業価値を3億円以上増加させることができる!という自信が今売るべきでない根拠となる。
運用にリスクがあるのと同様に、企業経営にもリスクがある。
順調に利益を出している会社だとは言え、5年後も10年後もそうであり続けるかどうかは分からない。
むしろ企業価値が減少してしまう可能性だって決して少なくはないだろう。
また、譲渡後には時間が生まれることも見過ごしてはいけない。
譲渡後に新しい事業を立ち上げることができるかもしれない。
5年間の事業活動によって、その会社にはまた新しい価値が生まれる。
これも含めて考えるべきではないか。
各選択肢のリスクと現在価値との比較に加え、自身に生じる新たな選択肢も含めて総合的に検討することが大事だと考えている。