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極自分史 #1 YMO「東風」
「東風」 日本版
Yellow Magic Orchestra © 1978
Written by Ryuichi Sakamato
「東風」 は1978年11月25日発売のYMO―Y.M.Oが正しい表記のようだがYMOとする、デビューアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』のB面1曲目だ。発売当時は中学3年生、まだ音楽雑誌は購読していないし、しかも体育会系の部活だったので、リアルタイムにYMOの存在を知る由もない。
YMOを認知するのは、79年の秋だったと思う。バンドをやっていた同級生の影響でいくつかの音楽雑誌を読み始めた頃、何かの記事でチューブスの前座で大うけしたことを知り、発売されたばっかりの『ソリッド・ステイト・サバイバー』も一緒に、LPレコードを購入したと記憶している。80年にはY.M.Oは大ブレイク、シングル「テクノポリス」や「ライディーン」がヒットするのは既知の通り。
2枚のアルバムを購入した頃は、まだプレイヤーから直接ダビングできるカセットデッキを持ってなかった。よって「東風」はB面の最初という針を落としやすいこともあり、ファーストアルバムの中で再生回数が一番多い曲だった記憶している。
さらに80年の終わり頃、ファーストアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』にはUSA版が存在することをやはり雑誌で知り、早速渋谷のタワーレコードで購入した。79年には日本発売されていたとわかり唖然とする。おそらく増殖とパブリック・プレッシャーも同時期に購入したと思われる。
Yellow Magic (Tong Poo) USA版
Yellow Magic Orchestra © 1979
Written by Ryuichi Sakamato
USA版の「Yellow Magic (Tong Poo)」を聴いてまず驚いたのは、間奏にボーカルがあったことだ。ロックの間奏はギターソロという構成にならされていたので、日本版「東風」の間奏は少し間延びした印象がぬぐえなかった。—既に発売されていた『パブリック・プレッシャー』の「東風」はなおさらそう感じた。
間奏にボーカルが入るだけで間延びもしないし、2曲目の「中国女」との相性も抜群によくなる。なんで日本版でボーカルを外したかはわからないが、USA版のほうが断然かっこいいと思った。90年代に『フェイカー・ホリック』が発売され、渡辺香津美さんのギターパートを聴くに至り、「東風」のかっこよさを再発見したし、『パブリック・プレッシャー』の「東風」はライブの魅力を半減させているなとあらためて感じた。
極自分史 Part 1
一浪はしたものの志望校には合格せず、アルバイトをしながら受験勉強は続けてたが、うやむやのまま進学をあきらめ、たまたま募集していた楽器の問屋で働き始める。ギターもピアノの出来ないので、せめてと思い部活を引退してから少しかじっていたドラムを始めた。
高校生のときは、パンク・ニューウエーブが全盛でセックス・ピストルズ、クラッシュ、ザ・ジャム、ザ・ダムドなどのパンクバンドやスージー&ザ・バンシーズ、ザ・プリテンダーズ、バナナラマ、オルタード・イメージ等々の女性ボーカルバンドやアナーキー、スターリン、リザード、ゼルダの国内組、シーナ&ザ・ロケッツ、ザ・ルースターズ、ザ・ロッカーズ、ザ・モッズ等のめんたいロックバンド、その他RCサクセション、ARB、などのロックバンドが流行っていた。
一方、楽器が上手に弾け、中学時代からディープパープルやレッドツェッペリン、グランド・ファンク・レイルロード等のハードロックを演っていた連中はサディスティックスやプリズム、高中正義、カシオペア等のインストロメンタルを志向する。—フュージョンではないが、当時はやっていた竹田和夫さんの「暗闇のレオ」を演ってたやつもいた。
これに70年代はディスコが混ざってくる。70年代ディスコにはいくつかの潮流があり、アース・ウインド&ファイヤーとシックに代表されるR&B系とジョルジオ・モロダーのエレクトリックサウンド、そのほかディスコの女王ドナー・サマー、アラベスクやビージーズ、ザ・ノーランズ、ヴィレッジ・ピープル、テイスト・オブ・ハニー、シスター・スレッジ、リップス・インク等が流行っていた。あと時代が前後するが、シェリル・ラッド、ファラ・フォーセット・メジャース、スティーヴィー・ニックスなども好きだった。—この3人とも髪型が似ている。
僕はYMOも好きだし、パンクも聴くし、R&Bやディスコ系の音楽も好きだった。が友人たちにはディスコ系も聴くといえず悶々としていた。ディスコ系はハードロック系、パンク系ミュージシャンの敵だったので、なかなかいえなかった。—クイーンの映画「ボヘミアン・ラプソディ」でもロジャー・テイラーが「地獄へ道ずれ」の録音の時、「俺はディスコなんかやんねいよっ」とごねていた。当然のビヘイビアとアティチュードだ。
80年代になるとバンクの連中はどんどんR&Bに回帰していって、ジョニー・ロットンはジョン・ライドンに改名してパブリック・イメージ・リミテッドを結成、ディスコっぽい曲を発表しているし、クラッシュもダンスミュージック調のヒット曲も出している。第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンが始まり、ダイアー・ストレイツ、ポリス、エルヴィス・コステロから、カルチャークラブ、デュラン・デュラン、ヒューマン・リーグ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、ヤズー、ユーリーズミックス、デッド・オア・アライブ、ニュー・オーダー等が全米チャートを席巻する。
こんな素地で楽器業界に入ったのだが、仕入先は有名楽器メーカばかりで、モリダイラ楽器、アライ貿易、神田商会、フェルナンデス、ESPなどのギターメーカーや野中貿易、鈴木楽器、全音などのクラシック楽器、京王技研、YAMAHA、ローランド、カシオ等、キーボードメーカーであり、販売先は楽器店や楽器コーナーなので、ギターかピアノの素地がない僕は必然的に厳しいことになった。
80年代中頃は取引先の人たちとブルースやハードロックバンドをやりながら過ごしていた。先輩のヘビメタバンドの対バンとして神楽坂のエクスプロージョンに定期的に出演したのもこの頃だ。ヘビメタの聖地でサンタナやエリック・クラプトン、B・Bキング、サム&デイブ、ブルース・ブラザーズ、ローリング・ストーンズ、マーク・ボランを演奏した。まだまだ機材が高く、周りにYMOを演奏できる人が周りいないので、高校の友人と頭脳警察、ヒカシューやP-MODEL、リザード、ゼルダなどを演奏して顰蹙を買ったこともあった。
87年くらいから世はバブル経済全盛で、その勢いに乗って90年に外資系の会社に転職した。この会社の時、IT系投資家と知り合い96年にはベンチャービジネスを始めることになる。結局このビジネスはうまくいかず、98年には大赤字をを出し事業は解散、僕は別の会社に移ることになる。その時代の話は別の項で書こうと思う。
Yellow Magic (Tong Poo)(Official Music Video)
Yellow Magic Orchestra © 1979
Written by Ryuichi Sakamato
2005年グーグルはYouTubeを買収したがそのシナジーは素晴らしく、2010年代からは YouTube配信を生業とする若者が世界中に現れた。僕らオールドウエーヴはそのニューウエーヴとは全く無関係だが、高校の頃観たくても観ることができなかった色々なバンドの映像を観ることができるようになり、失っていた音楽への興味が再燃した。
そんな中で、YouTubeをサーフィンして見つけたのが「Tong Poo」の Official Music Videoだ。記憶ではテレビで1、2回観たことはあるが、全編をゆっくり視聴したことはなかった。するとすごいことに気が付いた。Official Music Videoを視聴するとイントロから17小節目の4拍目、―映像では东风の文字が出て3小節目の4拍目、がリムショットのようにカツッと聴こえる。さらに最後まで聴くと、間奏明けイントロに戻って同じところ、―映像だと教授が後ろを振り向く1拍前、がカツッとまた聴こえる。
このカツッという音は、YouTubeでこれを観るまで幸宏さんのミスショットだと思っていたのだが、どうやらこれこそが幸宏さんのプレイスタイルだと分かった。幸宏さんはビートルズのリンゴ・スターやベンチャーズのメル・テイラーのようにスネアのリムとヘッドを同時に叩く奏法でプレイしていたという。いい音の時と失敗した音の時で不安定になるがそれが味だとおっしゃっている。
そこで日本版とUSA版を聴きなすとイントロではリムショットのような音はないが、間奏明けのイントロではなんと同じ個所にリムショットのような音が聴ける。Official Music Video は Yellow Magic (Tong Poo)(Official Music Video)とクレジットされているのでUSA版と同じだが、イントロのドラムが違う。ビデオではイントロが始まって、2小節でキックが入り、次にハット、最後にスネアと順繰りにフェイドインしている。こちらのほうがかっこいいと思う。
伝えたいことが散漫なので整理すると以下のようになる。
幸宏さんはスネアプレイでリムとヘッドを同時にショットするスタイルであるとおっしゃっている。
東風とYellow Magic (Tong Poo)では間奏が異なる。(吉田美奈子さんのボーカル
Yellow Magic (Tong Poo)(Official Music Video)はYellow Magic (Tong Poo)とイントロが異なる。(ドラムの入り方)
さらにYellow Magic (Tong Poo)(Official Music Video)では、イントロでスネアのリムショットのような音も確認される。
間奏明けのイントロでは3バージョンともリムショットのような音が確認される。
吉田美奈子さんのボーカルはアルバム制作時に録音されているらしいので、Yellow Magic (Tong Poo)が制作時のバージョンといえる。日本版では省かれたボーカルがUSA版で復活したとすると、Official Music Video のイントロのドラムの入り方と、リムショットらしき音はどういうことだろう?
Official Music Video のリムショットのような音は幸宏さんが「不安定」と言っていたミスショットなのだろうか?僕にはどうしてもそうは思えない。幸宏さんは、シンプルにキック、スネア、ハイハットで曲にアクセントとグルーブをつくっているからだ。
3バージョンとも同じドラムテイクだとすると、間奏後のはリムとヘッドをヒットするいい音なのでそのままにして、最初のリムショットっぽい音はミックスダウンで消したのかもしれない。
Official Music Video を聴いているとリムショットがイントロからメロディーに移るための緊張感を与えてくれていることがわかる。ということは曲の一部としてイントロからメロディーに移る緊張感を出すためにわざとリム強めの叩き方をされているのではないだろうか。
いろいろ調べたが正解はいまだにわかっていない。幸宏さんも教授も鬼籍に入られた今、本当のところはわからないかもしれない。既にファンの皆さまの間では既知に事で今更、鬼の首を取ったように書くことではないかもしれないが、皆さんのご意見も伺いたいのでコメント頂ければと思う。
X@nobuhiroterで検索してください。
この件を調べている中でいろんな方がTong Pooをカバーされてたのでいくつか紹介させていただく。
東風色々
Yellow Magic (Tong Poo)
スネアの音もオリジナルに近いと思う。イントロと間奏後のリムショットのような音まではさすがに再現されてない。
「東風」 日本版
スネアの音色が違うのと、ビートが若干あとノリのように思うが演奏が生っぽくてかっこいい。
「東風」 日本版
数ある「東風」の中でスネアの音色が一番似ていてかっこいい。間奏はギターがないが、KINOKUNIYA LIVE っぽい。
東風 パブリック・プレッシャー版
お二人の演奏すごくかっこいい。
「東風」 Bass & Drums Only
この方のシリーズすごく気にいっている。
Tong Poo 東風
これ、凄いね!パーカッションやってる人、凄すぎる!
Tong Poo
個人的に一番好きな79年のBOTTOM LINEバージョンのTong Pooで香津美さんギターソロはほぼ再現されてる。幸宏さんが若干走り気味なテンポに細野さんが少し遅れながら合している感じも再現されている。
ギターパートの再現
原曲