両想いなのに結ばれない⁉アンドレ・ジッドの「狭き門」②
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今月は、アンドレ・ジッドの『狭き門』を取り上げます。
『狭き門』では恋愛と禁欲的信仰の間で葛藤する二人が描かれます。
彼女の宗教的禁欲や、彼女に見合う自分になるまでは……と自己研鑽をつづける主人公。その結果、両想いなのに結ばれないという、こじらせ恋愛の悲劇。
聖書の一節、「狭き門より入れ」(マタイ伝)が冒頭に掲げられ、ノーベル文学賞作家ジッドが繊細な筆力で読者を引き付けます。
※あらすじは山内義雄著『狭き門』(新潮文庫)を参考にしています。
『狭き門』――恋愛と禁欲的信仰の間で――
アンドレ・ジッド(ジイド)
【書き出し】
ほかの人たちだったら、これをもって、一巻の書物を書き上げることもできただろう。だが、私がここに物語る話は、私がそうした生活を生きんがために全力をつくし、そして、私の精根がそれに傾けつくされたところのものなのだ。
【名言】
※あらすじの前半はこちらです⇓⇓
【あらすじ(後半)】
私はアリサと一緒になれる希望があるからこそ、高い徳を目指して努力してきた。
しかし、彼女の手紙には、「心の聖らかさを求めることは、私たちの好き嫌いではなく、一つの義務なのです」とあり、その頑なな態度が変わることはなかった。
数か月後に私がフォングーズマールに行ったとき、アリサの容貌にはまったく潤いがなくなっていた。
話をしていても距離を感じ、一日一日が私の悩みを深めていく。
私が「昔のアリサはどうなってしまったのだ?」と問うと、彼女は、「なぜ率直に、前ほど君が愛せなくなったとおっしゃらないの?」と言う。
「僕の恋は、僕が生きている限り続くんだ。僕をこんなに苦しめて喜んでいる君は、君自身、僕を愛したことを忘れてしまったのか?」
と私が嘆くと、アリサは「私は年を取ったのよ」と返すのだった。
それから三年後の夏の終わり、フォングーズマールに立ち寄った私は、郷愁を感じながら思い出の場所を歩いていた。
ふと思い立って庭に入ると、突然アリサが現れた。
私は激しい感動で言葉を失い、その場に膝をついてしまう。
そんな私に手を差し伸べた彼女の体はやせ細り、顔は蒼白に変わり果てていた。
私は憎しみと愛おしさで胸がいっぱいになりながら、冷淡に話そうと努めた。
アリサは、将来私に娘ができたら贈るようにと、紫水晶の十字架を取り出したが、私は受け取らなかった。
それは、私が母の形見としてアリサに渡したものだった。
私は、「僕がいったいだれと結婚するというのだ?君よりほかに愛せないことは分かっているくせに」と言って、彼女を強く抱きしめ、力いっぱいに接吻した。
しかし、
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仲川光🌸世界文学入門①
世界文学のなかから、名作をご紹介します。 作者、書き出し、あらすじ、時代背景を紹介するとともに、解説では、仲川光ならではの視点で、物語の…
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