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大空に散った若者たち~百田尚樹の『永遠の0』①

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12月第1作目には百田尚樹の『永遠の0』を取り上げます。

小説『永遠の0』は、2006年に出版。

2013年末には岡田准一主演で映画化され、記録的なミリオン動員を果たしました。

作品内では、戦後世代の姉弟が、特攻で戦死した祖父・宮部久蔵の生涯を調べ、戦争とは何かを学んでいきます。


『永遠の0』……大空に散った若者たち――特攻とは何だったのか



百田尚樹(1956~)

大阪府生まれ。放送作家、小説家。
同志社大学法学部を中退後、放送作家となり、「探偵!ナイトスクープ」ほか、さまざまな番組を手がける。
2006年に『永遠の0』で小説家デビュー。
文庫本がミリオンセラーとなり、2013年に映画化、2015年にドラマ化された。
2013年、『海賊とよばれた男』で本屋大賞を受賞。

代表作品:『永遠の0』『海賊とよばれた男』など


〈書き出し〉


プロローグ

あれはたしか終戦直前だった。

正確な日付は覚えていない。

しかしあのゼロだけは忘れられない。

悪魔のようなゼロだった。



【あらすじ】


司法試験に四年連続で落ちた二十六歳のぼく、佐伯健太郎は、フリーライターの姉の頼みで、戦死した本当の祖父・宮部久蔵について一緒に調べることになった。

ぼくらは六年前、祖母が亡くなった時に、血がつながっていると思っていた祖父から、宮部のことを聞かされた。

宮部は終戦の数日前、特攻で戦死したそうだ。

祖母との結婚生活は短かったが、その間にぼくの母が生まれた。

祖母は戦後、今の祖父と再婚した。


ぼくはそれを知っても、特別な感情は抱かなかったが、特攻で死んだ宮部が、世間で言う「熱狂的愛国心をもったテロリストである」というのは、何か違うような気がした。


ぼくは戦友会に手当たり次第に手紙をを書いて、宮部のことを知る人物を何人か探し出した。

しかし、聞けば宮部は「生きて帰りたい」が口癖で、彼のことを「海軍航空隊一の臆病者」と罵る者もいた。

宮部は、戦況が悪化し、特攻が始まっても、「生きて帰ると妻に約束した」と言って、決して特攻に志願することはなかったそうだ。


一方で、宮部が、開戦当初は世界最高水準の戦闘機だった零戦を見事に操る、凄腕のパイロットであったことを知った。

そんな彼が、なぜ特攻で亡くなったのか――。


宮部は教官として多くの特攻機を見送り、その中には自分の教え子も沢山いた。そうした中、「自分一人が生き残ることはできない」と思ったのかもしれない。

特攻が始まっていた沖縄戦の後半から、宮部は人が変わったようにげっそりと痩せ、無精髭を伸ばし、目だけが光っていたそうだ。

また、取材を通して、ぼくと姉の、戦争に対する見方も変わっていった。

特攻で死んでいった人たちは決して狂人ではなく、家族や国を思うなかで、その短い生涯を意味深いものにしようと苦悩した人間であったこと。

そして、生き残った者とその家族も、苦しみを胸に秘めて生きてきたことを知ったのだ。


やがて、ぼくらは、宮部の死の真相にたどり着く。

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