恋愛・家庭・不倫……時代によって善悪は変わるのか?トルストイの『アンナ・カレーニナ』③
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今月は、トルストイの『アンナ・カレーニナ』を取り上げます。
トルストイといえば、近代文学を代表する世界的文豪です。
同時代に活躍したドストエフスキーと並び、ロシア文学の世界的存在感を一気に引き上げた立役者でもあります。
長編が多く、登場人物も多いですが、ドストエフスキーと比べると、ストーリーの筋書きも比較的シンプルで分かりやすく、王道の名作、ともいうべき作品が多いのが教養としては概要だけでも知っておきたい名作の数々!!
『アンナ・カレーニナ』と共にトルストイの代表作として有名なのが、『戦争と平和』です。
今、世界で戦争が起きている中で、まさに旬の話題かもしれません。
ただ、『戦争と平和』はかなりの長編であり、ストーリーのご説明にやや時間がかかる大作です。
まずは、話の内容が比較的分かりやすく、考えさせられる議論もしやすい『アンナ・カレーニナ』の方をピックアップさせていただきますね。
『アンナ・カレーニナ』―世界的文豪トルストイの描く恋愛・家庭・不倫
レフ・トルストイ(1828~1910)
【書き出し】
すべて幸福な家庭は似通っているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸の趣を異にしているものである。
【名言】
【あらすじ】は第1回、第2回の記事をご参照ください🎶
【解説】①
『アンナ・カレーニナ』は、レフ・トルストイが五十歳近くになってから五年の歳月をかけて完成させた作品です。
『戦争と平和』と並び、トルストイ文学の最高傑作として、現在に至るまで高い評価を得ています。
作家として円熟期を迎えたトルストイが『アンナ・カレーニナ』では恋愛・結婚・不倫をテーマに、男女の人間関係が掘り下げられていきます。
・キリスト教的教訓を含んだ作品
トルストイと言えば、『イワンの馬鹿』という子ども向け民話に代表されるように、キリスト教的教訓を含んだ作品も多く手掛けています。
『アンナ・カレーニナ』でもキリスト教的作風は一貫しており、基本的には不倫により道を誤った男女の悲劇を教訓的に描き出すような内容となっています。
作品の書き出しの扉には、「復讐はわれにあり、われこれを与えん」という聖書の聖句が書かれています。
「不倫」という神の教えに逆らった生き方をした「アンナ・カレーニナ」。
「彼女の魂を裁くことができるのは、同じ人間ではなく、神のみである」という意図が込められています。
そして、物語は次のような有名な書き出しで始まります。
「すべて幸福な家庭は互いに似通っているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸の趣を異にしているものである」
書き出しからしてすでに、これから起きる悲劇が暗示されています。
・貴婦人が不倫に走る
高級官僚カレーニンの妻であったアンナ・カレーニナは、青年将校ヴロンスキーと道ならぬ恋に落ちます。
アンナは知性と美貌を兼ね備えた優れた女性でしたが、淡白な夫との結婚生活には物足りなさを感じていました。
あるとき、夫の浮気が原因で別れの危機を迎えていた兄夫婦の関係修復をとりもったアンナでしたが、今度は自分が不倫する側にまわってしまいます。
ヴロンスキーは、アンナの義妹キチイが恋するお相手。
ところが、キチイがヴロンスキーに求婚されるはずであった舞踏会で、ヴロンスキーは人妻であるアンナに一目惚れしてしまうのです。
穏やかな家庭を描くキチイと、不倫で身の破滅を招くアンナ
アンナにヴロンスキーを奪われたキチイはショックのあまり病に罹りますが、やがて、以前から自分に好意を寄せてくれていたリョ-ヴィンと結ばれ、幸せな家庭生活を送ります。
一時の情熱的な恋に身を焦がし、破滅していくアンナとヴロンスキー。
周囲からの祝福を得て、落ち着いた温かい家庭をつくっていくキチイとリョ-ヴィン。
物語はこの二組のカップルが対照的に描かれていきます。
アンナが不倫に走った原因は?
アンナは才色兼備で、離婚の危機にあった兄夫婦の間を取り持つなど、心優しい一面を持つ素敵な女性でした。
彼女を不倫に走らせた原因はどこにあったのでしょう?
第一に考えられるのは、
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