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苦難を生き抜く少年の成長物語!山本有三の『路傍の石』③

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10月第1作目には、山本有三の小説、『路傍の石』を取り上げます。

路傍の石』は、極貧の家に生まれた主人公の愛川吾一が、様々な苦難・困難を経て経済的・精神的に自立した人間になろうと努力し続ける成長小説です。

1937年頃から朝日新聞に連載されるなど、注目を集めていましたが、戦争期の時代背景により、当局からストーリーに干渉され、未完に終わる、という形の珍しい小説でもあります。




『路傍の石』――苦難に負けず、自分の人生を生き抜く少年の成長物語

山本有三(1887~1974)

栃木県生まれ。
本名、山本勇造。
小説家、劇作家、政治家。
東京帝国大学(現東京大学)文学部独文学科卒。
在学中、「新思潮」の創刊に参加。
大正期中頃から社会劇・歴史劇を発表し、大正末期より小説の世界に進出する。
革新的な子ども向けの教養書シリーズ「日本少国民文庫」の編纂も手掛け、戦後は参議院議員としても活躍した。
1965年、文化勲章受章。

代表作品:『波』『女の一生』『真実一路』『路傍の石』

【書き出し】


そのとき、吾一は学校から帰ったばかりだった。

はかまをぬいでいるところへ、おとっつぁんが、ひょっこり帰ってきた。

おとっつぁんは、彼に銅貨を一つ渡して、焼きイモを買ってこいと言った。

よっぽど腹がすいているらしく、いやにせかせかしていた。


【名言】

たったひとりしかいない自分の、
たった一度しかない人生を、
ほんとうに生かさなかったら、
人間、生まれてきたかいがないではないか。

世界に、なん億の人間がいるか知れないが、おまえというものは、いいかい、愛川、愛川吾一というものは、世界中にたったひとりしかないんだ

人間はな。人生という砥石で、ごしごしこすられなくちゃ、光るようにはならないんだ。


【あらすじ】の前編・後編は第1回、第2回の記事をご覧ください🎶


【解説】

・苦難・困難に負けない成長小説

愛川吾一は、普通の人であれば挫けてしまうようなことがあっても、何度でも立ち上がるしなやかさを持っています。

これでもかというくらいに苦難・困難の続く吾一の半生。

たとえば、こんなエピソードたちがあります。


・父親がお金を稼がずに家を空けるという経済的な事情から中学進学を断念。

・小学校卒業と同時に呉服屋での丁稚奉公に出る。

・名前を五助に変えられてしまう。

・奉公先の御曹司である昔の同級生・秋太郎との立場が逆転。

・成績優秀だった吾一が、勉強のできない秋太郎と、その妹・おきぬの使用人になってしまう

・おきぬは、吾一がほのかに好意を寄せていた相手。しかし、使用人になったとたん、恋の相手・おきぬの態度が激変。

・東京に出て文選工となってからは、およねとの恋を諦める

・恋を諦めたのは、ずっと不在だった父への孝行の道を選んだから。


このように、成績優秀だった吾一が、学業の道を閉ざされたり、恋の相手から使用人扱いを受けて傷ついたり、親孝行のために恋を諦めたり、と苦しい日々は続きます。

しかし、我慢して努力を続ける吾一。

その姿が一貫して描かれていることが、読者の胸を打ちます。


・努力を続ける者にはチャンスが与えられる

このように、けなげに努力を続ける吾一には、必ず応援してくれる人が現れ、チャンスを与えてくれます。


たとえば、

・元担任の次野からの紹介で、商業学校への通学の機会を得る

・事務職の社員へ抜擢される

などのチャンスが現れます。



・一種の教養小説・成長小説

挫折に負けず、努力を続ける人には道が拓けていく……!

という流れが感じられるため、「路傍の石」は苦しい主人子公のお話ながら、夢や希望が垣間見えます。

このような小説のジャンルは、人々に勇気を与えてくれる、一種の教養小説・成長小説として知られています。


◎「路傍の石」の有名シーン

「路傍の石」には印象的な有名シーンが登場します。

この一連のシーンを知っているだけで、「路傍の石」通になること間違いなし!

一部原文も交えながら、ご紹介していきましょう。


・鉄橋ぶらさがり事件

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