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史上最年少での芥川賞を受賞した問題作――石原慎太郎の『太陽の季節』③

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1月第1作目には石原慎太郎の『太陽の季節』を取り上げます。

石原慎太郎といえば、長らく東京都知事を務めていたイメージですが、現役大学生・史上最年少での芥川賞を受賞するという華々しい経歴を誇る作家でもあります。



『太陽の季節』―無軌道で不道徳な若者の生態を真正面から描いた話題作


『太陽の季節』は、1955(昭和三十)年、文芸雑誌「文學界」七月号に新人賞受賞作として発表されました。

当時、石原慎太郎は一橋大学在学中の大学生で、この作品が文壇デビュー作でした。

翌年、『太陽の季節』は第三十四回芥川賞を受賞。

当時史上最年少での芥川賞受賞となり、爆発的な人気を博します。

同時に、作品の倫理性をめぐっては、社会的にも賞賛と非難の嵐が巻き起こる大事件となりました。




石原慎太郎(1932~2022)

兵庫県生まれ。政治家、作家。
一橋大学在学中に執筆した『太陽の季節』で芥川賞を受賞。
1968年、参院選全国区でトップ当選、1972年に衆議院議員に当選。
福田赳夫内閣で環境庁長官、竹下登内閣で運輸大臣に就任。
1999年、東京都知事に当選し、四期務める。
2012年に衆議院に復帰したが、2014年、政界引退を表明。
映画俳優の故・石原裕次郎は実弟である。

代表作品:『太陽の季節』『処刑の部屋』『弟』など


【書き出し】


竜哉が強く英子に魅かれたのは、彼が拳闘に魅かれる気持と同じようなものがあった。

それには、リングで叩きのめされる瞬間、抵抗される人間だけが感じる、あの一種驚愕の入り混じった快感に通じるものが確かにあった。




【名言】


「乾き上った季節に、獲物は案外多かった」


「何故貴方は、もっと素直に愛することが出来ないの」



※あらすじ・解説①は前回の記事をご参照ください。




【解説②】


・一体どこが「芥川賞」の決め手なのか?

『太陽の季節』は1955年7月号の『文学界』に新人賞受賞作として発表されました。

物語の新鮮な面白さに驚嘆の声が上がる一方で、倫理的な問題作などと揶揄され、大人たちからのひんしゅくと好奇の目に曝されました。

翌年、芥川賞を受賞した後には爆発的な人気となり、石原慎太郎は「芥川賞の学生作家」としてあらゆる新聞、ラジオ、週刊誌などで取り上げられます。

『太陽の季節』を載せた『文藝春秋』は引っ張り凧となり、単行本は30万部を超えるベストセラーとなりました。

ただ、芥川賞を受賞したとはいえ、選考委員の中でも4人が推薦、残る4人が反対、と、その評価は真っ二つに割れたそうです。

・湘南の海に出没する不良青年などは昔から存在していたものの、それを文学として作品化したのは画期的なこと。

・旧世代の大人たちの道徳を完全に無視し、自分達なりの割り切った論理によって行動する若い世代の新鮮さ。

・抑圧をまったく感じさせない本能的な伸びやかさ。

これらの論点から、今までにない新しさと問題性を秘めた快作として、多くの人に争って読まれるべきにふさわしい作品であったと今日まで評されています。


芥川賞というと、単純に文章が上手いというよりも、物語の切り口が斬新であったり、既成社会に疑問を投げかけるような作風がおおいに評価される傾向があるように感じています。

その流れは「太陽の季節」当時から健在。

むしろ、既成道徳にまったく捉われない本能的作風が大いに評価された記念すべき作品として、日本文学界に君臨するのが「太陽の季節」のような気がしています。



・「太陽の季節」のヒットは時代の要請によるものか?


「太陽の時代」が文壇に登場した時代は昭和30年代。

戦後十年がたち、高度成長期に差し掛かった頃で、消費文化は急に贅沢になり、盛んだった学生運動も鳴りを潜める時代。

青年たちは夢を失い、焼け跡の中で夢を描いた作家たちもエネルギーを失いはじめていました。

同時期には、何に向かって反抗していいか分からない若者ががむしゃらに反抗するような小説が数多く世に出ていきます。

そんな中で、「太陽の季節」は刺激を待ちわびていた読者たちに熱狂的に迎えられたわけです。

戦後の鬱屈感を振り払うような、挑戦的な野心作。

頭上の霧が晴れないようなモヤモヤを抱えた国民に、「太陽族」が鮮やかな一撃を加えたのは間違いなく、必然的に文学界に躍り出た作品だったのかもしれません。



・「太陽の季節」の「太陽」は日本?


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