【月刊お気楽フリーランス論 sidestory#8】処理速度は速いに越したことはないという話
株式会社ケロジャパンの吉河です。喫茶店では隅っこが好きです。よろしくお願いいたします。
中川が大量の編集や原稿書きをこなしていたため、芋づる式に私も「忙しいでしょ」とよく言ってもらいます。でも、実のところ私は、「忙しい」がよくわからない。というより、「忙し」くならないように仕事をしている気がします。
いそがし・い【忙しい】--デジタル大辞泉
[形][文]いそが・し[シク]《動詞「急ぐ」の形容詞化》
1 多くの用事に追われて暇がない。多忙である。「目が回るほど―・い」
2 せかせかして落ち着かない。せわしない。「―・い性分だねえ」
私の「忙しい」というイメージは、期日までに自分がやりたいわけでもない仕事がてんこ盛りで、ベッドで寝る暇もなく、食事はデスクに向かったままか移動中にスナックをかじる程度、体も心もどこか病みかけている、そんな状態です。
でも私はご飯はちゃんと食べてるし、十分寝てるし、健康だし、フリーランスだからできる量のできる仕事しかやらない。
天気の話題のように最近忙しいかと訊かれ、真面目に「忙しくないよ」と言うと、何故か「そんなはずはない」と信じない人がいる。そのことを不思議に思っていた私に、ある友人がこう言ってくれました。
「中川さんのあの量を自分がやると考えたら、超多忙だからじゃない?」
あ、そうか。
ビジネス上でいう「忙しさ」って、つまり仕事でどれだけの時間が食われているということ。かつ、忙しさの基準は、自分なんだ。もちろん寝る暇もなければ、それは「忙しい」だけど、寝食遊の時間が確保できている条件下で、どのくらいの仕事をこなせるか(処理能力)は人によるということ。
で、中川は、同じ時間で「できる量」というのが、人より超絶に多い。それだけの話なんだ。
「儲かってまっか」「ぼちぼちでんな」って、大阪人はほんまよう言うたもんやわ~。多忙かどうかじゃなくて、処理能力の問いと答え。
ところで私は、ものすごい面倒くさがりやです。片付けるのが面倒だから、部屋にあまり物を置かない。重ね着やコーディネートは面倒だから、なるべく一枚で成立する服、合わせやすい服を買う。汚れるのも洗濯するのも面倒だから、トイレや玄関などにマットは敷かない。
そして、こと運動においては左に出る者はいない。というくらい、激しい”運痴”。学生時代の、できない子にとっては公開処刑、見せしめのような鉄棒や跳び箱といった体育の授業を呪ったものです。あんなのするくらいなら、ストレッチとか教えてくれたほうが良かったやい。
そんな私は、1991年に東京で開催された世界選手権で衝撃を受けます。陸上のスター選手だったカール・ルイスが100メートルを世界新記録(当時)の9秒86で走り、優勝した時、つくづくと思ったのです。
100メートル先に発車ベルが鳴っている電車があったとしたら、カール・ルイスは乗れるけど、私は乗れないんだ……。
私は、50メートル走でちょうどそのくらいのノロノロタイムでした。同じくらいだったからこそ、倍走れる人がいる、という事実はわかりやすく私に響きました。(なお令和元年度スポーツ庁の調査によれば、50メートル走女子の平均タイムは、小学5年生で9.63秒、中学2年生で8.81秒。)
電車通学をしていた中学生の頃のこと。いつもギリギリの朝、駅の2Fにある改札で発車ベルが鳴り始めるのを聞きながら、ホームまで階段を3段飛ばしに駆け下りる日々を送っていました。するとある日、最後の最後に着地した時、足がグキッとねじ曲がったのです。目の前で電車が行ってしまい、虚しくホームに取り残される自分…。
全治数ヶ月の剥離骨折をしたことのある身にとって、同じスタートでも自分は半分の距離しか行けない。足が遅いというだけで、学校に間に合うという可能性の扉が閉ざされることが数値となって突きつけられました。もっかい書く、カール・ルイスは遅刻しないのに、私は遅刻しちゃうんだ。いや、ルイスと比べんなって話だけどさ。
それ以来、ゴールまでの処理時間がどのくらいかかるのか、どうしたら短縮できるのかを常に考えるようになりました。
また、同時期に世界史の先生が、雑談のなかでふと口にした「なるべく多くのことを、”ついで”にやってしまったほうがラク」といった話は、ものぐさな私にクリーンヒットします。
たとえば、夜、こたつでみかんを食べていたとする。トイレに立った時には、トイレに向かう途中でみかんの皮を捨て、コーヒーマシーンのスイッチを押し、用を足したあとコーヒーをピックアップ、あとで入るためにお風呂も沸かしておく……という具合です。
時々、朝歯を磨きながらコーヒーを淹れていて、コーヒーでうがいをしてしまうという失態を犯したりするけれど、「ついで」行動は、私の基本です。
走るのを速くするのは、私には無理。でも、仕事においては、知恵や練習、道具で処理速度を上げられる部分はあるのではないか(もちろん、何を面倒と思うかは人によって違うもの。以下はあくまでも私の場合です)。
■仕事の処理速度を上げる小さな工夫
というわけで、私がケロジャパンに入った最初の年のボーナスは、レッツノートの最上位モデル(現物支給)を中川にリクエストしました。実家から事務所まで、激混みの田園都市線に乗ることを考えると、とにかく丈夫なものが第一条件。
どこでもすぐに仕事ができるよう、立ち上がりの早いSSD、長時間バッテリーも必須でした。良い道具は、良い。Windows7は10にアプデし、今もサブマシンとして活躍しているほか、現在は、キーの高さが低くなってより打ちやすくなった2台めのレッツノートを愛用中です。
道具といえば、椅子も、なるべく疲れなさそうな椅子を選びます。中川はパイプ椅子に長時間座っていても平気平気な人ですが、私はこだわる。例えば腰痛になってケアするための時間とお金がかかるくらいなら、最初からなるべく腰痛になりにくいものを使いたい。初期投資です。
キーボードを打つのも早いに越したことはありません。中川もキーボードを打つのは非常に速く、もちろんブラインドタッチ。アメリカの高校で鍛えたとかで、社会人になると、女子から「中川くんのキーボードを打つ音は、鳥の羽音のよう~」と言われた、とかなんとか。
原稿を書きすぎて(キーボード打ちすぎて)キーの文字がすっかり摩耗し、つるっぱげになったキーボードでも、中川は何食わぬ顔で使っていました。文字通りブラインドなキーボードに大笑いしたのを覚えていますが、ともあれ、私と中川のキーボードを打つスピードが鬼であることはたしかです。カール・ルイス理論でいくと、人が1枚打ち込む間に、2枚でも3枚でも打ち込めたほうが、仕事が早く終わるじゃん。
入力も省エネ化できるものはします。私はショートカットキーを駆使するのはもちろん、よく使う単語や挨拶、会社名などはすべて最初の一文字か二文字だけで出てくるように登録。記入することが多いものとして、ローマ字一文字で自分のメールアドレス、「0」だけで自分の電話番号なんかも登録してあります。
その他、自分にとって、その時主要な人の携帯電話番号も覚えるようにしています。これは私が携帯電話のバッテリーを持ち歩くのを面倒くさがるためで、電源が切れたら、何もわからない。誰にもつながらない。誰かの番号を調べるにはひと手間必要だけど、頭の中に入っていたら、さっと出る。「この人と連絡がとれたら、おおよそこの範囲はカバーできる」という人の携帯電話番号を覚える。
固定電話ってなんとなく覚えていたものだけど、携帯電話の番号って、ほんっと覚えない。実家の番号はわかるけど、両親の携帯電話番号って、ちょっと怪しい。意識しないと覚えられないので、頑張って覚えています。
あとは、メールも用件を簡潔に、かな。もらうメールも、丁寧過ぎて長ーーーーくて、結局何を言ってるのかよくわかんないメールだと、私の脳がバグを起こして、「で、何をすればいいですか?」とか聞いちゃう感じ。メールはさっさと処理したい。瞬発力を上げ、短縮技を使うことで、だいぶ作業時間は短くなります。
といって、いちばんは、中川の処理速度が速いから、一緒に走るためにはこちらも速くないといけないというだけだけどね。前提として、仕事をする者同士のCPUが似ていることって、とても大事です。仕事相手にイライラすることがあったら、それはたぶんCPUが合ってないよ。
と、ここまで、面倒くさがりだからなるべく最短距離でゴールに行きたいとかヌケヌケと書いておいて、この下書きをnoteの投稿画面で書いていたら、上書き保存に失敗。イチから書き直したのですが‥。面倒なことを回避するためには転んだら学ぶことが大事ですね、というわけで、今後ワードで下書きをしてからこちらにコピペすることにいたします。とほほ。
(--次回#9は、12月7日(月)更新です--)
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「月刊お気楽フリーランス論」
フリーになってから19年、ネットニュース編集を始めてから14年、本が売れてから11年、そして会社をY嬢こと吉河と始めてから10年。一旦の総…
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