【月刊お気楽フリーランス論 sidestory#11】フリーランスは心の元気が大事という話。
株式会社ケロジャパンの吉河です。よろしくお願いいたします。
中川は会社を作るときから、従業員は「一人」と決めていました。それは私がいちばんよく知るところで、その理由も理解しているつもりです。会社をばんばん大きくして、人をたくさん雇って、事業を拡大するというよりも、自分がわかりやすく実感できるちからで戦いたい。プレイヤーでいたい。だからこそフリーランスでもある。
そんなケロジャパンですが、過去には何度か人を増やそうとしたことがあります。また、少人数の編プロが人を増やそうとして、増やしたと思ったらうつで退職した、行方不明になった、などと苦戦しているのも見てきました。そこで痛感したことがあります。
自分の(相手の)心のタイプを知っておいたほうが、(お互いに)仕事はやりやすい。
相手の性格を知っておいたほうが、言い方ややり取りの方法などを工夫できるのと同じようなことです。
心が風邪を引く、という表現がありますが、私が見た狭い限りでは、「風邪」の人と、「もともとそういう傾向がある」人がいるように思います。風邪で調子が悪いだけの人と、もともと体が弱いのに、そう見せてない人がいるように。
以前、中川が自殺騒動を起こした話を書きました。それ以来、最近はありませんが、中川は時々「ちょっと今日(仕事)無理かも」と言ってくれるようになりました。私は、中川がそうなるのを既に知っているので、もう動じません。中川も、私が動じないのを知っているからこそ言ってくれるのでしょう。お互いの理解というのは、互いの気持ちを楽にさせます。
■「無理」と言えない相手とは仕事しなくていい
一方で、仕事を手伝ってもらっていた人が心の調子、そして体の調子を崩して、長期休職を余儀なくすることがしばしばあって、その度に私は相当驚きました。どの人も積極的に業界に飛び込んできた人で、とても頼りになって、お願いした以上の結果で返してくれていて、いつも元気いっぱいに見えていたから。
私が鈍いんです。サインはあったはずなのに、その人の背景に気づかなかったのだから。そして彼らに共通するのは、頑張りやさんということでした。
例えばそういった人のなかには、体とメンタルのためには「不規則な生活はしないほうがいい」という人がいる。そう、そもそも睡眠時間が3時間でいい人と、睡眠時間が15時間必要な人がいたとしたら、同じ時間軸で仕事をするのは難しいじゃん?
仕事って、何かしら、それぞれがちょっとずつ、どこかで折り合いをつけてやっていくものだと思うのね。我慢する折り合いもあるだろうし、夢のためには、という前向きな折り合いもある。
そのときに、自分は睡眠時間が15時間必要なのに、それを言わずに(知らずに)仕事受けちゃったら、確実にキャパオーバーするじゃん。で、相手にも迷惑かけちゃうじゃん?
自分がどういう時に体調を崩すのか、どういう時に心が不安定になるのか、敏感になること。やりたいことを大切にしつつ、自分が壊れそうなことを学習し、避けていく。
もちろん相手の期待に応えたいために、頑張る期間というのはあっていいと思うんだ。でもそれが、自分にとって得るもの(相手が喜んでくれることを含む)が何もない頑張りなら、多分頑張りかたを間違えてる。中川のいう「成長」とか「相手が好き」といった条件に通じます。
デキナイと言いにくい、ということはあるのかもしれない。けれど、「これを言ったら、仕事失うかも」「仕事できないと思われるかも」とか一人で思う前に、一度言ってみることも大事なんじゃないかなあ。
案外人って言われないとわからないものだし、自分の(やむにやまれぬ事情を)言えない相手だったら、そもそも仕事しちゃいけない相手だと思う。相手が悪いとかそういうことじゃなくて、相性みたいな話。
だって、「いつも遅刻する」人の理由が、単なるズボラなのか、もしかしてそういう体なのか、それを知るだけで、待っている人の気持ちって全然違うじゃん。だから遅刻する理由が明確にあるんだったら、言ったほうがいい。
「いつも飲み会に来ない」人が、「お酒がキライ」なのか「そういう場がキライ」なのか、はたまた「一緒にいる人たちがキライ」なのか、あるいは「家に事情がある」のか、「お金がない」のかでも、相手の心持ちはだいぶ違う。自分のタイプを相手に理解してもらうのって、結構大事だと思うんです。
■「好き」と「得意」は違うこともある
話は少し変わりますが、私たちはずうっと、大学生にバイトしてもらっています。曜日替わりで、夜の間に1日数本の記事をまとめ、翌朝提出してもらうという仕事です。私は仕事をお願いするときの説明が恐ろしくヘタクソなのですが(ダメじゃん…)、みんな素晴らしく仕事ができる。そこで、私がどういうときに「仕事ができるなあ」と思うのか考えてみると、2つの共通点がありました。
1)早い段階で、自分の力量がわかる。
2)連絡が速やか。
1)は、「この分量なら1時間で終わるだろう」「3時間なら、このくらいできるだろう」といった自分の力量の把握です。
この把握がなかなかできないと、キャパオーバーの仕事を受け続けてしまうことになる。過去一人だけ、朝になると「起きられなかった」「体調が悪い」等々の連絡をしてくるなど、仕事がうまくできなかった学生がいて、でも必ず次は頑張ると言うのです。
こちらとしても、締め切り時刻を伸ばすとか、本数を減らすとか、いろいろ策を講じても辛そうだった。そのため、相談の結果、その学生はこの仕事から下りることになりました。
仕事をしてみて、自分に向かないことが初めて明らかになったんだろうと思います。それは私たちも同じで、やってみてもらって、無理そうなことがわかった。つまり、相性が良くなかったのでしょう。彼は「頑張りたい」と最後まで言ってくれましたが、気持ちと体、ひいては心がうまくつながらなかったのかな、辛い仕事をさせちゃったな、と今でも思うことがあります。
どれだけ好きなことでも、平均1時間で終わる“単純作業”に、極端な話、一年続けても3日かかってたり、納品できなかったりしたら、それは仕事として向いてない。「好き」と「得意」は、違うこともあるのが現実なんだ。もちろん好きを得意にするための根性があって、努力が苦にならなかったら、また別の話です。逆に言えば、ヘタクソだから好きじゃないことって、沢山あるから。
2)は、相手の状態を想像する力です。相手のことを考えたら、連絡は早いに越したことはありません。締め切り時間があるということは、相手は待っているということ。相手も、その先に待っている人がいるかもしれません。仕事は、約束事の連続なのです。
そして例えば、10本お願いされているけれど、締め切り時間までには5本しかできそうにない。でも締め切りを3時間延ばしてくれたら、全部できる。そういった交渉は、自分の能力が把握できているからこそです。
■自分の代わりはいないのがフリーランス
言えばいいのに、と簡単に言うけど、それが言えないから困ってるんじゃん、という心理はあると思います。私だって、言いたいけど言えないことなんて、てんこ盛りです。でも、言わずに済むのなら言わなくていいけど、言わなかったらものごとが改善しないのなら、なるべく言ったほうがいい。
とりわけフリーランスとして働くのであれば、跳ね返ってくるのは自分自身。いくら健康診断で問題なくても、心の元気を保たないと、代わりはいないんだよ。相手にとって、フリーランスの代わりはいくらでもいるけど、自分にとって、自分の代わりはいないんです。
会社員だったら休業補償とか少し出るかもしれないけど、フリーランスだったら収入はパーになってしまいます。だからこそ、自分のご機嫌には敏感になっておきたい。人に自分を理解してもらうのも、自分の身を守るためです。
今でも私は、ある朝起き上がれなくなった彼らになんと声をかけたらいいのか、正直わからずにいます。でも少なくとも、私は変わらずここにいて、ボールを取る準備は万端だ。どうかいつだって、「言ってもらえる」人でありたいと思っています。
(ー次回は、12月28日(月)頃更新予定ですー)
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「月刊お気楽フリーランス論」
フリーになってから19年、ネットニュース編集を始めてから14年、本が売れてから11年、そして会社をY嬢こと吉河と始めてから10年。一旦の総…
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