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統合に向けての対話

その日は、彼女と同行する予定ではなかった。
しかし、朝の会議で急遽同行する事になったのだ。

夕方のアポイントだったので、帰りの車の中で話すタイミングがあった。
そして、彼女が別れた後に泣きながら話していた自分の自己肯定感が持てないという話を思い出した。

自己肯定感が低い原因は、アダルトチルドレンにあると思うと伝えた。そして、アダルトチルドレンの概念を知らなかった彼女に、アダルトチルドレンを一通り説明した。

アダルトチルドレンは、子供の頃のトラウマが要因で、もしかしたら、心当たりが無いだろうか?と聞いてみた。
その時の感情にもう一度向き合う事で、自分の中にある傷ついたインナーチャイルドを癒やすことが出来たら、自己肯定感を上げることも出来るのではないかと。

彼女の過去に何があったのか?
もしよかったら、話してくれないか?と伝えた。

彼女は少しの沈黙の後、ポツリポツリと話始めた。

幼少期、生まれながらに心臓が弱く、亡くなった妹がいたとのことだった。
妹が亡くなる前、いつも病院の廊下で一人待っていた事が多かったそうだ。

当時、父親は仕事で忙しく、いつも夜遅くに帰っていた。母親は、いろんな事が重なって常にイラついていた。
彼女の両親は、学生時代のデキ婚だった。大学も中退し、すぐに働き始めたが、若い夫婦にとっては子供を抱えての生活は苦しかったようだ。
そして、彼女が小さい頃はとても貧乏だったことも辛かったと。
欲しい物も買ってもらえない。お金が無いことを知っているから、わがままも言えない。スーパーで「買って、買って」とわがままを言っている子が羨ましくてしょうがなかったこと。

彼女が子供時代にかかえていた悲しい感情がどんどん溢れだしてきた。

そして妹が亡くなった事で、母親の依存度が一気に高まったという。子供をなくした母親が残った我が子に対する感情は計り知れない。
その依存を彼女は一心に受け止めた。この時点で親子が完全に逆転してしまっている。母親には幼い部分があるとも話していた。

その後、二人目の妹が生まれた。でも、その妹も死んでしまうのではないかととても不安だったそうだ。いつの間にか、またいなくなってしまうのではないかという不安が常にあった。彼女が目を話した隙に死んでしまうのではないかという漠然とした不安。
その事が原因で、小学校一年生の時、不登校だったという。

祖父母と同居するようになってから、彼女の心は改善したようだった。
しかし、11歳頃に死んだ妹の墓の掃除を一人でしにいったりしていたともいう。危ないからもう一人では行くなと言われてから、やめたそうだった。

この話は親にもした事がないと言う。というより、本人の本質的な事に関わる要因に、本人すら気づいていなかった。

彼女の抱える問題がはっきりと見えてきた。そして、彼女の心を癒やすために僕はここにいる事を悟った。

彼女は、自分の中の二面性だけを感じて、自分の気持ちや本心がどこにあるかもわからないまま、心がずっと彷徨っていた。なぜ、自分の中に二面性が存在したのか?そして、彼女の心の乖離。

突然の別れ話も、全て腑に落ちた。


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中江兆史
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