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53日目

46日目以降、僕の精神はようやく落ち着きを取り戻そうとしていた。

約1ヶ月半、自分の精神を落ち着かせるために毎日その日あったことや、気持ちを書いてきた。この日記は、僕の精神安定剤のような働きをしていたのだ。

誰にも打ち明けられないものを、悶々と抱えていると、いずれ病気になる。そうならないために、毎日、日記を書き始めた。

別居してから2週間が経ち、僕の心にようやく平穏が訪れようとしていた。

今朝、弁護士から「契約書に判子が欲しいので時間があるときに来てほしい」とのメールが入っていた。ちょうど昼過ぎに近くでアポイントがあったので午後3時過ぎに向かうことにした。

午後3時前、客先で打ち合わせを済ませ、弁護士事務所に向かう。弁護士事務所が入っているビルには、塾、保険代理店、税理士事務所、結婚相談所などが入っていた。いわゆる雑居ビルだ。築年数は25年ぐらいだろうか。真新しさは無いが、古臭さもない。エレベーターだけが手狭な印象を持っていたい。

ちょうどエレベーターに乗ろうとしたとき、小学生ぐらいの男の子と遭遇した。おそらく、今から塾に行くのだろう。小学生の男の子を尻目に、娘のことを思い出す。

元気にしているだろうか?娘とはもう半月会っていない。会ったとしても「なんで一緒にいてくれないの?」と聞かれるだろうし、なんと答えていいかわからない。面会はしたほうが良いのかも知れないが、離婚理由が妻の不倫なだけに僕の口からはとても説明できない。弁護士との先日の打ち合わせでは面会は希望することにしたが、よくよく考えているとどんな顔で会ったよいのかよくわからない。そして想像もできない。

弁護士事務所に着くと早速、契約書の説明を受け、同意のサインと捺印をした。
契約内容については丁寧に説明してくれたので、時間がかかったが署名と捺印はすぐに終わった。
弁護士から、「その後なにか変化ありましたか?」と聞かれたので、「特に何も」と答えた。

「このまま行くと裁判になりますが、先方はその事わかっているのでしょうかね?」
「おそらく、そこまで気が回っていないのだろうと思います。そして、舐められているのだと思います。」
「そうですか。いずれにしても来週連絡ください。裁判の準備をしますので」

もともと裁判する気で内容証明郵便も送っている訳だが。
裁判となれば、代理人を立てるか自分が出るしか無い。
欠席した場合は、欠席裁判となり判決が決定する。判決が決定した場合、裁判所命令で資産の差し押さえが可能になる。

さすがに誰も来ないということは無いだろう。
あとは裁判の行方を見守るだけになる。

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中江兆史
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