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追悼・鯉江良二氏 「誇り高く土に還る」 

小代焼中平窯の西川です(^^)

今回は、惜しくも2020年にお亡くなりになった陶芸家・鯉江良二氏について書いていきます。




鯉江氏との出会い


はっきりとした年は忘れてしまいましたが、鯉江氏にお会いしたのは私が中学生の頃であったと思います。

私は幼い頃から焼き物に囲まれて育ちましたが、父を含めて私の周辺は『窯元・焼き物屋』というニュアンスの方々ばかりでして、
『陶芸作家・芸術家』としてお会いしたのは鯉江氏が生まれて初めてでした。



当時、鯉江氏がロクロの公開制作をされると新聞で知り、車で片道2時間ほどの距離を父に運転してもらって鯉江氏に会いに行きました。

丁寧なロクロ、綺麗なロクロしか知らなかった私にとって、
己の強い感情を激しくぶつけるようにロクロを回す鯉江氏の姿は衝撃的でした。

「ロクロというのは、心のレコーディングだ!!」
という趣旨の事をおっしゃっていました。



また、ロクロの真横に一升瓶を置いて、アルコールを呷りながらロクロを回すという、なかなか破天荒な作陶をされていて、私は度肝を抜かれました。

いろいろとお話を伺いましたが、見学の最後に中学生の私に対して、
「おい!!甘ったれんじゃねぇぞ!!!」
という強い𠮟咤激励をいただいたことが、一番印象に残っています。

当時はただただ衝撃的な光景の連続でして、理解するのにいっぱいいっぱいでした。

しかし、今になって思うと、
中学生の私に対して心からの本気の言葉を掛けていただいたんだと、とても有難く思っています。



大人になった今では、
「焼き物屋として、一人の人間として、時代や他人に流されず、タフに生きろ!!!」
というメッセージだったのではないかと、鯉江氏のお言葉を噛みしめているところです。



現代陶芸の造形思考


富本憲吉氏の記事でも触れた、金子賢治氏の著書『現代陶芸の造形思考』では、鯉江氏についても考察されています。


『現代陶芸の造形思考』


鯉江氏は高校を卒業後、レンガ(陶製タイル)工として働き始めます。
当時のタイルは上野の国立西洋美術館にも使われています。


独立後の鯉江氏は器だけではなく、反戦・反核のメッセージを込めた立体作品や、自身の顔を型取りした作品など、表現者としても幅広く活動されました。


鯉江氏作 『土に還る』



様々な作品や技法を駆使しながら、

「やきものとは何か」

という問いに、真正面から向き合い続けた一生でした。




また、鯉江氏の代表的な器に「ロクロで成形した長皿」があり、これは鯉江氏の偉大な発明であると思っています。

現在でもそうですが、長皿を作るには「タタラ成形」という技法を使うことが一般的です。

それは長皿の名手・北大路魯山人氏でさえその例に洩れません。

しかし、鯉江氏は「ロクロ成形」という即興的・躍動的技法で、見事に長皿を完成されました。


鯉江氏作 『オリベ皿』


私は鯉江氏と全く同じ皿を作ろうとは思っていません。

しかし、この技法は素晴らしいものですので、今後私も使わせていただこうと思っております。



さいごに


最後に、鯉江氏の言葉を紹介してお終いといたします。

個人的には生きることが少しだけ楽になるような、そんな、ホッとする言葉です。








あの手この手を使って、たくさん作ってさ、

一生かかって、何か、自分の思っていることが一つできれば、それでいいんじゃない。

で、あ、あの人は死にましたなあ、と人に言われる。

どうってことないよ。


ー 鯉江良二






2024年6月11日(火) 西川智成


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