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『修学旅行は、親思う旅』
親と教師の内緒の話
多くの学校では一学期に学級懇談会があります。修学旅行が間近に迫っている学年では、懇談会の中で修学旅行の説明会も行われます。
私は、ある年から三年生を担任すると、修学旅行前に保護者と内緒話をするようになりました。
「子どもたちに内緒で、お願いがあります。修学旅行先で子どもたちが家庭に手紙を書きます。その時に、保護者からの手紙をそっと用意しておきたいのです。」
とお願いをします。
担任からの急なお願いに多くの保護者はためらい、わが子へ何を書いたらよいのか困っている顔をします。
「『修学旅行を楽しんでいますか?』の一言でもいいのです。お願いをします。みなさんがわが子へ書いた手紙は、封をして、そっと私に届けてください。」
とさらにお願いをします。
修学旅行へ出発
修学旅行当日の朝、生徒たちと見送りの保護者が集合場所に集まりました。私のかばんの中には、生徒の誰もが知らない保護者からの宝物が入っています。生徒たちは修学旅行へ行く楽しさが顔に表れています。みんな笑顔でいっぱいです。二泊三日の修学旅行の出発です。
毎回、修学旅行の業者の方に「この子達にとっては、一生の思い出になる三日間です。よろしくお願いします。」と伝えます。業者の方も「もちろんです。素晴らしい旅にしましょう。」と答えてくれます。
新幹線の中でも、そして京都・奈良に着いても子どもたちは元気いっぱいです。様々な学習を行い、一日目の活動が終わります。
子思う親・親思う子
夕食、入浴を終えた生徒たちは、大きな部屋に集まりました。班ごとに反省を行い、健康状態を確認しました。
その後、生徒一人ひとりのテーブルに便箋と切手を貼った封筒を配りました。そして、「家族に旅の便りを」とプログラムを進めました。
ちょっと間をおきました。生徒たちは何かあったのかと思い、部屋はシーンとなりました。
「みんな目を瞑って。今日一日を振り返ってみよう。みんなの親が朝の見送りをしてくれたこと、修学旅行へ向けていろいろと準備をしてくれたこと、みんなと一緒に修学旅行へ行けるようにお金を積み立ててくれたこと、一つ一つを思い出してみよう。」
と静かに話をしながら生徒一人ひとりの席を回り、保護者からの手紙をそっとテーブルに置いていきました。
「目を開けてごらん」
生徒は自分の目の前にある名前の書かれた封筒を見て驚きました。ある子は嬉しそうに、また、ある子は恥ずかしそうにその封筒を開け、読み始めました。
部屋はシーンとしています。どこからとなくすすり泣く声が聞こえてきます。そのすすり泣く声は徐々にひろがり、部屋のあちらこちらから聞こえてきました。流れる涙を友達に見られないように、顔を伏せ、返信を書いている子もいます。男子も女子もみんな目が真っ赤です。
私には保護者が何を書き、子どもたちが何を返信しようとしているのかわかりません。ただ、「子思う親と親思う子」の姿がそこには確かにありました。
「先生、早く手紙を親に届けてあげたいので、今夜私が郵便局まで行って投函してきます」と添乗員さんが声をかけてくれました。添乗員さんの目も真っ赤でした。 (子は宝です)
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