#1 恵方巻をもくもくと食べたら、あったかい記憶が引きだされた。

2021年2月2日、節分。

ひとり暮らしをして7年がたった今年、はじめて恵方巻を食べた。

仕事帰りに駅前のお寿司屋さんで買おうと楽しみにしていたけど、いざ行ってみたら行列&売り切れ。まいっかと思ってセブンで1本買うことにした。


iPhoneで今年の方角「南南東」を調べて、正座して。

ひとくちひとくち、ゆっくりかつ大胆に食べてみる。

なんでだろう、だんだん口角が上がっていく。

味がおいしいのはもちろんなんだけど、そのとき頭に浮かんでいたのは、

まだ実家に住んでいたときに家族で恵方巻を食べた風景だった。

みんなで同じ方向を向いて、無言で食べる。

1本食べ終わって、「おいしかったね」と。

そしてその後は豆まきスタート。

実家では、まいた豆をすぐに回収する、というルールがあったので

鬼の役、豆をまく人、回収担当、に分かれて1列になって順番に豆をまいた。

大きな声で「おにはーそとー」っていうと近所に響くから、できるだけ小さな声で家じゅうに豆をまく。

そして回収した豆をみんなで食べる。

そんな日のことを思い出した。

恵方巻を食べなければ、きっと思い出すこともなかっただろう記憶。

ひとり暮らしをはじめてからは、季節の催しに時間とお金と感情を使う余裕なんてまったくなかった。

誰かと食べるならまだしも、自分ひとりのために楽しむということが今までできていなかったんだと思う。

コンビニの、たった1本の恵方巻を食べるだけでこんなにあったかい気持ちになるとは思ってもみなかった。

ごはんと幸せの記憶を作ってくれた家族にありがとう、と思いながら、

今年はこんな風に季節ごとのごはんも楽しめる1年でありたいな、

そんなことを考えた2021年の節分でした。


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