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決して“正統派”ではないけれど



 M-1グランプリ2023ももうすぐ1回戦が終了し、シード組が登場する2回戦に突入する。今年からは前年準々決勝進出組にもシード権が与えられ、100組ほどがここからの参戦となる。その中で僕が特に注目している、というより思い入れの強い漫才師が4組いる。

・ダイヤモンド
・黒帯
・シシガシラ
・チェリー大作戦

の4組だ。

 ご存知かとは思うが、この4組は2022年から『漫才至上主義』というユニットライブを東京・大阪で交互に毎月行っており、その他にも名古屋や福岡などでも公演をしている。僕はこのライブに2023年1月の東京・ヨシモト∞ホール公演に初参戦して以降、4度参加している。5月の名古屋公演についても以前投稿したnoteに記した。

 そして回数を重ねる度に四者四様の魅力をひしひしと感じているつもりだ。今回は、正統派ではないけれど確かな実力を持った4組の魅力を僕なりに紹介できればと思う。まあ文章力についてはお察しください。

 ⚠️また、何度か他のコンビの名前を出すことがあります。決して悪く言うつもりはございませんが、意図せず不快な思いをさせてしまう可能性はございますので、嫌な方はここでお引取りを願います。⚠️








(1)ダイヤモンド

2017年結成。野澤輸出(左)、小野竜輔(右)のコンビ

 M-1グランプリ2022ファイナリスト。このユニットで初のファイナリストである。「漫才至上主義」自体は2022年からその名を聞いていたのだが、足を運ぶきっかけになったのがダイヤモンドの決勝進出である。

 僕が思うダイヤモンドの強みは、とにかくネタのバラエティが豊富なところだ。ダイヤモンドで有名なネタといえば「スタバ」や「国旗」などが挙げられるが、これらのように身体で色々表現するネタもあれば、M-1決勝で披露した「レトロニム」のようなしゃべくり“寄り”のネタもある。ただ、これらのネタは「コント漫才」「しゃべくり漫才」のどちらかに分類されるようなものでは断じてない。そんな曖昧なところで数多のネタを生み出すことができ、かつ笑いを掻っ攫えるのが他にはない強みであり魅力だと思う。

 また、彼らは∞ホール屈指の「企画屋」であり、年始の「ダイヤモンドno寄席」を始めとする主催ライブは軒並み盛況である。きっと彼らの持つずば抜けた「おもしろへのアンテナ」がネタにもこういった企画にも現れているのではないかと考える。

(2)黒帯

2010年結成。大西進(左)とてらうち(右)のコンビ

 M-1グランプリ2018~2022準々決勝進出。どこかアングラな雰囲気を漂わせるコンビ。今年8月に大阪で開催された「レッドブルサンパチ」にももや金属バット、Dr.ハインリッヒと並ぶメインメンバーとして参加した事でも有名だ(行きたかった〜)。

 大西さんの飄々としたボケにてらうちさんがこれまた飄々とツッコむ「大喜利漫才」。声も張らず勢いは無いはずなのに笑いが生まれるのは、やはり間であったりワードセンスが卓越しているのだろう。

 僕は元々このスタイルがあまり好きではなかったが、去年の1回戦のネタ「トム・クルーズ来日」や、漫才劇場8周年ネタ「スクープ」で見事にハマった。ボケ数こそ多くないのだが一発でしっかり刺してくる、「大喜利漫才」の極みのようなネタだったように感じた。そして今年は一発の強さはそのままにボケ数も増え、てらうちさんのツッコミも声を張ることが増えたように感じ、さらに聞きやすく、笑いやすくなった(あくまで主観)。M-1のチャンスはあと3回、何とかいい所まで行ってほしい。

(3)シシガシラ

2018年結成。浜中英昌(左)と脇田浩幸(右)のコンビ

 M-1グランプリ2018~2022準々決勝進出。つまり結成から5度の挑戦で全て準々まで上がっている実力者なのだ。この記録ははもっと讃えられても良いのではないだろうか。

 彼らの武器は何と言っても脇田さんのハゲを弄り倒すハゲ漫才。ただ、ハゲ漫才師は過去のM-1ファイナリストにも存在する(トレンディエンジェル、ギャロップ等)が、そんな歴代ファイナリストにも負けないほど、否、それ以上と言っていいほど弄りのレパートリーが豊富なのである。時にストレートに弄り、時に遠回しに弄り、時に脇田さん自身がハゲである事を自虐し、さらにはつかみの段階でハゲ弄りをするなど、ありとあらゆる角度からハゲにアプローチする。

 一方で、2022年の準々決勝のネタには衝撃を受けた。それは「浜中クイズ」というネタで、このネタにおいてはハゲを殆ど封印しているのである。それでいて大爆笑を掻っ攫っている。つまり、そもそものネタの力が強いのだ。そして、ハゲ以外のサブウェポンも豊富である。声が高い、耳が小さい、おじさんすぎる(これは浜中さんも)などなど。アドバンテージとなる要素が多い上に、それに甘んじず巧みなネタを量産する。今年「漫才至上主義」からファイナリストが出るとすれば恐らく彼らではないかと思う。

(追記)㊗️敗者復活戦勝利、決勝進出!!(2023/12/24)

(4)チェリー大作戦

2016年結成。鎌田キテレツ(左)と宗安(右)のコンビ

 M-1グランプリ2020~2022準々決勝進出。コントを主力とするコンビだが、漫才でもその実力は若手随一である。昨年度末の「ytv漫才新人賞決定戦」にも進出し、トップバッターで堂々たる漫才を披露した。

 彼らのネタは、一言で言えば「どこかぶっ飛んでる」。といっても、マヂカルラブリーやランジャタイ、フースーヤのような一目見てわかるぶっ飛び方ではない(勿論、それはそれで面白い)。一見正統派なコント漫才に見せかけてからの「そう来たか」の連続。それはキャラクターや場面の転換であったり、行動であったり、さらにはツッコミであったり。常にこちらの予想のつかない事を仕掛けてくる。

 また、見た目とのギャップも笑いを増幅させる。スーツでメガネの鎌田さんがその見た目に似合わないコミカルな挙動でボケて、強面の宗安さんはそのボケに翻弄されるように、諭すようにツッコむ。決して強いツッコミはないが、だからこそ笑いが生まれる。先の「ytv漫才新人賞決定戦」で披露した「居酒屋デート」が正に彼らの真骨頂と言えるだろう。昨年の準々決勝のネタ「犬を飼いたい」もまた、チェリー大作戦ここに極まれりといったネタだった。何故上がれなかったのか…。今年はぜひとも準々の壁を打ち破ってほしい。

(追記)鎌田キテレツさん、10/16の単独ライブをもって芸名を「ねんど」に改名されました。
(追記)宗安さん、2024/8/23に芸名を本名の「宗安聖」に改名されました。

 


 と、ここまで4組紹介してきたが、その魅力が少しでも伝わったのであれば幸いである。もっとも、僕自身この4組の魅力や強みを完全に理解してるわけではない。何ならご本人達がお互いの強みや、「漫才至上主義」について語っているインタビュー記事もあるので、元も子もないことを言うがそちらの方が参考になるかもしれない。

だからこそ「漫才至上主義」は今後も継続して参戦したいし、もっとこの4組の魅力を知っていきたいと思っている。


 このライブのコンセプトはそもそも、次のように語られている。

 『M-1グランプリ』で「あと一歩で結果を残すだろう」と期待される4組が手を組み、2022年3月に始動した。

https://wluck-park.com/interview/9766/

 そう。ダイヤモンドが昨年決勝に進出するまで、この4組は準々決勝で長いこと燻っている。ただ今年は違う。まず、ダイヤモンドの決勝進出によってこのライブの知名度も大きく上がったと思われる。上記のインタビュー記事にて、知名度も大事な要素だと語っている。そして今年、『芸人雑誌 vol. 10』の表紙を飾るなど、着実に注目され始めている。

 そして、その期待値の上昇に負けないほどネタが強化されている。僕はこのライブ自体にはまだ4回しか足を運んでないが、この4組自体はそれ以前から知っていたしネタもそれなりに見たことはあったので、バチバチに進化しているのはすぐに分かった。特に2023年9月の公演は全組凄まじいほどのウケを誇っていたように感じた。

 だから、僕はこの4組は今年、全組準決勝に進出すると本気で信じている。願望などではなく、確信している。近年のM-1では、いわゆる正統派ではない組、ネタにも確実に追い風は吹いている。そして、準々決勝、準決勝の入れ替わりも激しくなっている。そんな中でこの4組がどのような戦いを見せるか、今後も注目していきたい。


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