THE SECOND考察(後編)
※こちらの記事は後編になります。前編は⬇️
去る4月20日および21日、THE SECONDのノックアウトステージ(以下、KOステージ)16→8が行われ、グランプリファイナル(以下、GF)に進出する8組が出揃った。今年は16→8を配信で観たのだが、いずれの対戦もかなりレベルが高く、正直「これどっちだ!?」となった対戦も幾つかあった。
そんなハイレベルな戦いを勝ち抜いた精鋭8組を、4月25日に行われた抽選の末決まった対戦カード毎に見ていこうと思う。後編では第3、4試合に登場する4組を見ていく。
第3試合
5. ななまがり(Cブロック代表、初)
2008年結成、吉本興業(東京)所属。近年賞レースを席巻する“学生お笑い”出身者であり、大学の先輩・後輩には多くの賞レース王者が名を連ねる。昨年、M-1のラストイヤーでは決勝進出とはならなかったが、勢いそのままに悲願のGF進出。ボケの森下さんは漫才・コント・ピン芸のトリプルファイナリストとなった(史上2人目)。
漫才でもコント同様に、その独特すぎる不気味な世界観が光る。32→16では歴代最高得点を更新(後にガクテンソクが更新)するも、16→8では1点が6人という、とても“らしい”感じのネタで通過してみせた。このように、かなり好みは分かれるかもしれないが、ハマった時の爆発力はファイナリストの中でも随一である。その為に、いかに6分で自分たちの空気を作り上げるかが勝負どころだろう。
6. タモンズ(Aブロック代表、初)
2006年結成、吉本興業(東京)所属。兵庫県神戸市の高校の同級生コンビだが、芸人としてのキャリアはずっと東京である。大宮の劇場を拠点とする『大宮セブン』の一角にして最終兵器が遂にGF進出。これにより『大宮セブン』は全組が全国ネット賞レースのファイナリストとなった。つ、強すぎる…
KOステージ16→8を見た印象としては、安部さんのキャラクターがとにかく前面に押し出され、それを大波さんが上手いこと操る漫才、という感じだった。これは32→16で対戦した同期の祇園・木﨑さんもnoteで言っていたが、そういった所謂“ニン”が出るネタは自分たちの空気に持っていきやすい。更に、その祇園との対戦で歴代最高得点を更新(後にガクテンソクが更新)した事もあり、その自信も引っ提げて挑んでくる事だろう。
第3試合 展望
こちらは同期にして盟友同士の対決となった。ここが1回戦で潰し合うのは見たくなかったというお笑いファンも多いことだろう(僕もそうである)。芸風としてはタモンズの方が受け入れられやすいだろうが、M-1の勢いをそのままにぶつけてくるななまがりも脅威となることは間違いない。
第4試合
7. タイムマシーン3号(Fブロック代表、初)
2000年結成、太田プロダクション所属。昨年度準優勝マシンガンズの事務所の後輩である。ぶっちゃけ今回のファイナリストの中では一番名が知られてるといっていいだろう。漫才もコントもレベルが高く、テレビやYouTubeにも活躍の場を広げる、まさに“器用なおデブさん”である。
昨年はKOステージで同じファイナリストの金属バットに敗れ、あと一歩のところでGFを逃した。今年は32→16のvsヘンダーソンでその日の最高得点かつ歴代3位の記録を叩き出し、16→8では“事実上の決勝戦”と言われた囲碁将棋との対決を制した。多忙を極める中で予選会から圧倒的な強さを見せつけてのGF進出は、まさにベテランの意地と言ったところだろうか。優勝候補との呼び声も高い中で、どんな戦いを見せてくれるか楽しみである。
8. ザ・パンチ(Eブロック代表、初)
1998年結成、吉本興業(東京)所属。今大会のファイナリストの中では最長芸歴(27年目)である。M-1ではラストイヤーにして初めて決勝進出するも最下位に沈むという、あまりにも苦い経験をした。それから16年、進化を遂げて再び賞レース決勝の大舞台に帰ってきた。
僕はその当時のM-1は見ておらず、今回のKOステージ16→8で初めてザ・パンチのネタを拝見した。どうやらその当時とは結構芸風が変わっていたらしく、“寄席感”とでも言うのだろうか、そんな雰囲気を感じた。面白いのはもちろんのこと、見終わったあとに「楽しかった〜」「良いモン見たな」と感じられる漫才師はそう居ないのではないだろうか。にもかかわらず本人らは「特に対策はしていない」と言うのだから恐ろしい。それほどまでに地力が強いのだろう。
第4試合 展望
1回戦のトリを飾るのは、芸歴上位2組によるベテラン対決。両者ともにM-1ファイナリストの経験もあるが、それでも賞レースにはかなりのブランクがある(特にザ・パンチ)。とはいえそこは百戦錬磨の猛者達。そんなブランクすら微塵も感じさせないほどの笑いを巻き起こしてくれる事だろう。
以上、ファイナリスト8組と各対戦についての考察である。本当は準優勝、決勝についても書きたいところではあったが、普通に長くなるのと、これはKOステージを見た方ならわかると思うが、SECONDは1対1の勝負かつ観客審査なので、本当にその日のコンディションや空気感によって番狂わせが起こりやすいと個人的には思っている。なのでそんな野暮な考察は割愛させていただく。
今年は昨年とはガラリとメンツが変わり、より“THE SECOND感”が増したような気がする。さらに盛り上がりも昨年より格段に大きくなっている。第2回にしてここまでの盛り上がりを見せる賞レースが過去にあっただろうか。これもひとえに初代王者ギャロップ、そして準優勝マシンガンズを始めとするファイナリスト達の活躍によるところが大きいのだろう。今年はどんなドラマが生まれるのか、1ヶ月後が今から待ち遠しい。