WWDC24開催前の「噂」-AppleがOpenAIと組む(組まざるを得ない)理由
WWDC24開催前の「噂」
以前からの「OpenAIとAppleが提携する」という噂が、いよいよ現実化しようとしています。
正式には、Appleの毎年の最大のイベントであるWWDC24(6月10日〜14日、日本時間では11日~15日で発表されることでしょう。
イベント会場で、ティム・クックCEOがサム・アルトマンCEOと握手をしたら、大騒ぎになるでしょうが、その時、Microsoftのサティア・ナデラCEOはどんな思いで、その発表を見ることでしょう。
このような話をしたら、ある人からこう聞かれました。
「AppleがOpenAIと提携しなくても、iPhoneやMACで、既にChat-GPTは使えるじゃないですか。提携する意味ってあるのですか?」
そうですね。確かに、iPhoneでChat-GPTアプリは使えますし僕も毎日使っています。でも、この提携(の噂)は、そういう次元の話ではないのです。
なぜ「Win-Winの関係」なのか
最近、GoogleのGeminiがandroidに搭載され、Google検索G-MailなどのGoogleアプリにAIが使えるようになるという発表があり、翌週のMicrosoftのBuildというイベントでは、Copilot+PCの発表がありました。
Copilot+PCの発表で、僕の頭にすぐに浮かんだことの1つは、「AppleとOpenAIの業務提携は実現するかもな」、です。なぜなら、この業務提携は両社にとって得るメリットが大きく、まさにWin-Winの関係だからです。
AppleにはOpenAIと組む(組まざるを得ない)理由が、OpenAIには、Appleと組む(組まざるを得ない)理由があると、僕は思っていますので、お互いから見た、業務提携のメリットをお話ししますね。
Appleの事情
AppleにはiPhone、iPad、Macなど広範なデバイスがあります。それによってユーザーとつながっている、いわゆるユーザーとの「ラストワンマイル」をおさえています。
しかしAppleが、GAFAMの中でAI開発に一歩後れを取っていることは多くの読者がご存じでしょう。Appleは内製化を好む企業ですが、最近ではAppleCarの開発断念など、自社での特にAI分野での開発は進んでいませんでした。
競合他社の動向をふまえると?
GAFAMの中で、Appleの競合と言えば、MicrosoftとGoogleです。
Microsoftは、Copilot+PCを発表して、パソコンのAI化を推進し始めました。これについては前回記事にしています。
Googleは独自の生成AIであるGeminiを全方位戦略で展開中です。androidスマホのOSにもGeminiを搭載してくるでしょうし、パソコンも今は売れてはいませんが、CHROME PCをもって、学校を中心に販売しています。
競合の両社とも着実にAI戦略を進めていますね。
そのため、Appleは競争力を維持するためにAI技術の強化が不可欠となっています。
Appleは基本内製したがる企業です。そのため、生成AIに関しても、自社で研究開発をしてきていることでしょう。しかし、内製での成果が出ていないのは、「Hey, Siri !」で有名なSiriが、未だに使えないやつであることからも、よくわかりますよね。
Appleは、もはや自社での生成AIへの取り組みはあきらめて、パートナーを探しています。M&Aは最近、独禁法が米国では厳しいので、難しいかっらです。
ではどこと組むのがいいのか?
Claude3で評価を浴びているAnthropicや、Command-Rで有名なCanadaのCohereなどが候補になると思いますが、知名度、実力ともに、OpenAIと組めるなら組みたいと思うのは当然のこととなります。
OpenAIとAppleが組めば、MACとiPhone向けのiOS用のLLMをOpenAIは開発することになるでしょうね。
OpenAIの事情
OpenAIはGPT-4oといった高度な生成AIを開発しています。しかし、そもそも一般ユーザーとの接点が持てたのはChat-GPT発表以降です。僕は以前の記事で、下のように書きました。
OpenAIが欲しいのはユーザーとの「ラストワンマイル」です。Appleと提携することで、自社のAI技術をユーザーに届けるラストワンマイルを確保し、市場拡大を図ることができます。
ラストワンマイルを押さえている企業は?
となると、OpenAIは、Microsoftが、自社のAIでラストワンマイルを内製化するのであれば、他のラストワンマイルを持つ企業と組みたいと思うのは当然です。
出口戦略をMicrosoftの1社だけに頼っていては、覇権を取れないと感じていることでしょう。MicrosoftはAIの自社開発だけにとどまらず、仏Mistral AI社にも出資して、リスク分散を図っているからです。
となると、ラストワンマイルを押さえている企業で、Microsoft、Google意外だと、残るのは、iPhoneやMAC PCを持っている、Appleしかないと考えるのが自然でしょう。
”政治調整”は無事に済むか?
そういう事情により、AppleとOpenAIが業務提携をすることは、自然の理です。
ただ、Microsoftも多額の出資をOpenAIにしているわけで、この辺の政治的な調整で、業務提携が成立するかは、6月10日開催のWWDC24までまだわかりません。
2社の提携で実現されるのは?
仮に、AppleとOpenAIの業務提携が実現したら、以下のようなことが起きるのが想定されますね。
・AIによって強化されたiPhone、iPad、Macが今以上にスマートなデバイスとなる。Siriの機能の大幅な向上。
・ユーザーの行動パターンや好みに基づいた高度なパーソナライゼーション
体験の提供。
・Appleの強力なプライバシーポリシーとOpenAIのローカルAI処理の組み合わせによるプライバシー保護。
・AI技術の最前線をアピールすることによるApple製品のブランド価値の維持。
「噂」は現実となるか?
Apple、OpenAI両社の提携は互いの強みを補完し、競合他社に対抗するための強力な戦略となります。
と考察してきましたが、この「噂」は現実となるか? 現実となるなら、どんな形で? 日本時間11日の発表を楽しみにしています。
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