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「Copilot+PC」の登場,AI業界のゲームチェンジの予兆

 マイクロソフトが開発した最新のAI機能を搭載したWindows 11デバイス、コパイロットPC(Copilot+ PC)が話題になっています。

 僕はこれを、AIビジネスにおける、大きなゲームチェンジの予兆だと捉えています。「どういうこと?」と聞かれることが多いので、その点について書いてみたいと思います。


コパイロットPC(Copilot+ PC)の特徴

 まず、コパイロットPCの特徴は、

コパイロットPC(Copilot+ PC)の特徴

コパイロット(アプリ)が呼び出せる

・ユーザーがブラウザではなく、直接アプリとしてコパイロット機能を呼び出せる
・Windows 11のインターフェースに統合されており、ユーザーが簡単にAI機能を利用できるように設計

NPUが搭載されている
AI処理を高速かつ効率的に行う専用「ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)」が搭載
・これによってローカルでAI機能を実行する性能が大幅に向上(=クラウドへの依存が減少)。

 NPUについては、別の記事で説明したいので、今回はここまでとします。

 さて、周囲の話では、コパイロットPC関連で目を引いたのは、リコール(回顧)機能のデモとのことでした。

 リコール(回顧)とは、PCのユーザーが過去にPC上で見た情報や、行った操作を簡単に呼び戻す機能です。

リコール(回顧)機能

記憶と検索の効率化
・ユーザーがどのフォルダに保存したか、どのウェブサイトにアクセスしたかなどの、過去の情報や操作を迅速に再発見できる。

直感的なアクセス
・個人の経験に基づいた関係性や連想を利用して情報を整理。
・忘れていたことを思い出す手助けをし、また覚えている手がかりを使って、探しているものをすぐに見つけることが可能に。

 このリコール機能、デモ栄えは凄かったのですが、こんな意見を耳にしました。

 「すごいなぁ。2時間見前に見た画面を表示させれるのは便利かもしれないけど、あまり使わないかな?」
 「記録されるって…なんだか不安」

 Copilot+PCのデモを見た大方のビジネスパーソンの反応は、AIが搭載されたパソコンって、パソコンでChat-GPTを使うのと何が違うの?と感じたようで、あまり期待感は感じられませんでした。

 でも、僕は、まったく別のことを感じました
 「あぁ、AIも次のステージに進むんだな」と。


デモ動画から直観した「AI、次のステージ」

 僕はこのデモを見て、

①AIビジネスのゲームチェンジが起きること
②お蔵入りにした「AI中山」を復活させること

 の2つが頭をよぎりました。

 長い内容になると思いますので、今回は手短にPCにAIが搭載されることの意味を記します。また、なるべく1テーマ1記事になるように、周辺情報や僕の思うところをまとめていこうと思います。


PCにAI搭載の「真の意味」

 PCにAI搭載。このことは、一般的には大きな意味として捉えられていないように感じます。

 「今はChat-GPTをはじめとした生成AIアプリがあるので、それを使えばいいんじゃないの?」はユーザーからすれば、もっともな反応です。また、「もしSiriが、ちょっと賢くなれば嬉しいかな」というところでしょうか。

 でも、ネット経由で生成AIにアクセスすることと、パソコン内にAIが搭載されていることには、大きな違いがあります。

 整理すると、

●ネット経由での生成AIアクセス
(Chat-GPTをはじめとしたAI)

クラウド依存
 クラウド上の強力な計算リソースを利用するため、複雑な処理や大規模なデータセットの解析に適する。

常時接続が必要
 インターネット接続が必要で接続環境に依存。

プライバシーの懸念
 データがクラウドに送信。プライバシー保護の観点の懸念も。


パソコン内にAIが搭載されている場合
(Siriが賢いAIになったイメージ)

ローカル処理
 すべての処理がデバイス内で完結。
 
インターネット接続が不要。遅延が少なく、オフラインでも利用可能。

プライバシー強化
 データがデバイス外に送信されず、プライバシー保護が強化。

パーソナライゼーション
 AIがユーザーの使用パターンやデータを学習し、個別のニーズに応じた最適化や提案が可能に。


過去のコパイロットはクラウド依存

 「でもコパイロットPCって、今までもあったよね?」という指摘もあると思うので、付け加えます。

 それは、今までのコパイロットPC=クラウド依存のAI処理だということ。今まではAI機能の多くがクラウド上で実行されており、ローカルデバイスはその結果を受け取って利用していました。

 最新のコパイロットPCはクラウド依存から脱却した、そこが大きなポイントです。


PC内のAIが「学習」すると

 さて、深堀りしていきましょう。PC内のAIは、ユーザーがPCを使うごとに「学習」していきます。

PC内のAIが「学習」すると可能になること

カスタマイズされたアシスタンス
 ユーザーの好みや行動パターンを学習し、より的確なアドバイスやリマインダーを提供。

効率的な作業
 頻繁に使用するアプリケーションやファイルへのアクセスを最適化し、作業効率を向上。

パーソナライズドセキュリティ
 ユーザーの行動パターンを基に異常なアクティビティを検出し、セキュリティを強化​。

 ここで提供されるのは、よくいわれる「スマートで直感的なPC体験」…だけでしょうか? 


近未来の仕事風景

 みなさん、オフィスでの仕事でどんなことをされていますか?

 僕は、
 ・パソコンでオンライン会議
 ・会議室に自分のPCを持ち込んでのリアル会議
 ・パワポで資料作成
 ・メールの作成、返信
 ・交通費精算 ...等 をよくしています。

 リコールの機能は端的に言うと、僕が朝オフィスに来て電源を入れて、オフィス貴社時にシャットダウンするまで、僕がパソコンで何をしたかを記憶しているということです。

 これって、つまり、上記のようなことはすべて記憶しているということですから、すなわち、僕の仕事そのものを、毎日AIが記憶して再現できる可能性が見えてきませんか?

 近い未来、ビジネスパーソンが、毎日、オフィスで使っている、パーソナルAIと化した自分のPCに、こう命じたとします。

 「昨日、私がこのパソコンでやったことを教えて」

 PCは、昨日の仕事の一覧を表示します。

 「この●番目の仕事と同様のタスクを、これから入力するデータで行ってください。終わったら教えてください」
 「わかりました」

 これによって、自分の仕事を、そのままPC搭載のAIに行わせることができます。自分のPC内で完結していますから、社内データや個人的なデータといった、既存の生成AIが網羅しきれない情報についても閲覧可能です。

 もちろん、外部のアイデアや知識が必要なときは、インターネット経由で生成AIのサポートを受けるという使い分けをします。

Copilot+PCに組み込まれるAIは何?

 そういうわけで、パソコンでChat-GPTが使えることと、Copilot+PCでAIが使えることは根本的に違います

 では、どのようなAIが、Copilot+PCに組み込まれるかというと、Microsoftが自社で開発したLLMならぬSLM(小規模言語モデル)で、名前は、「Phi Silica」と言います。

 SMLは、Chat-GPT4が1兆パラメーター(?)と大規模なのに比べて、大きくても70億パラメーターと、大きさが、1/1000と小さいのです。小さい故に、推論時に、計算がすぐできるため、パソコンのNPUのような小さなチップでも動くのです。

 パソコンのNPUでも動かせる程度の小規模言語モデルは、現時点、OpenAIは持っていません。

 ですので、Microsoftは、「Phi Silica」と、そのAI機能とWindowsアプリをつなげる「Windows Copilot Library」を自社で開発して、Windowsに組み込んでいるのです。

 この「Windows Copilot Library」というインターフェース経由で、パソコンのアプリケーション(例えば、SLACKのようなデスクトップアプリ)開発ベンダーは、AIを利用したアプリを開発できるようになります。

 ちょっと話が技術的に難しいお話になってしまいましたね(笑)

 要するに、Copilot+PCにAI「Phi Silica」を、Microsoftが組み込む理由は、

・パソコン内のアプリやデーターをAIでコントロールできるようにする
・パソコンのAIを利用したアプリを、アプリ開発ベンダーに開発させる

 という2つの目的と意味があるのです。

 これを実現するには、Chat-GPTは使えないのですね。

 そして、この2つが進化していくと、パソコンでの仕事の生産性やできること、その自動化の世界が、将来待っています。 

 デモ動画を見て、僕は近い未来に起こる、こうしたビジネスパーソンの日常を思い浮かべました。これが冒頭で述べた ①AIに関して、ものすごいことが起きるです。

 この、Copilot+PCについて、そしてそれと関連するNPUについて、これ以上ここで書くと、あまりにも長くなります。そこで別の記事で、技術的なこと、ビジネス的な背景を説明します。


AIビジネスのゲームチェンジ-AIの分業制時代

 本記事で書いたように、今までの生成AIは、OpenAIやその他大規模言語モデルが、クラウド上で動いていました。それがパソコンやスマホで動くようになる

 そうなると、今後、どのようなことを、パソコンのAI(SML)にさせるか、どのようなことはクラウドのAI(LLM)でさせるか、という、AIの使い分けの時代に突入したのです。

 こうなることで、AIの分業制時代が始まりました。

 ここに、業務特化型のAIが、オープンソースの中規模なSML(Llama3の8Bモデルなど)で作成され始めていますし、パソコンで動くAIを活用したゲームやビジネスソフトを、今後、ソフトウエア開発ベンダーが開発していくようになります。

 今まですべてのアプリはブラウザーで、というのがパソコンアプリの潮流でしたが、これも変わっていくかもしれません。

 まさに、群雄割拠のAI時代の幕開けです。ですので、僕は、AIのゲームチェンジが始まると思ったわけですね。

「AI中山」を復活させようと思った理由

 今まで述べてきたことは、同じく冒頭で述べた、②お蔵入りにした「AI中山」を復活させるにもつながります。

 こうした世界観においては、自分のPCを使って日々の仕事をすること=自分のPCのAIの精度を高めていくこと=「AI中山」の強化、につながっていくからです。


コパイロットPCの「買い替え問題」も別記事で

 ところで、コパイロットPCはそのPCの中だけで完結している世界、となると、「PCを買い替えたとき、どうなるの?」という疑問も浮かんできます。つまり、「PCを買い替えるとき、自分用にカスタマイズしたAIを、新しいPCに移植できるの?(できないと困る)」です。

 それについても、いずれ考察していきます。


次回「なぜApple社がOpenAIと組むのか」

 これらのことから、ビジネス面からも読めることがあります。

 なぜApple社がOpenAIと組むのか

 僕はこれについても、そうならざるを得ないだろうと思っており、その通りになってきました

 次の記事では、このテーマについて語ります。



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