セミナー動画の基本制作価格。
昨年から何度となく問い合わせをいただいているので、整理したことを書いておくことにします。
モノはいわゆるセミナー動画。カメラは1機で固定撮影し、セミナーなので音声の収録品質を重視してロケ。必要最低限のカット編集、タイトル(単純なロゴ出し)、説明用にインサート画像を差し込む、予め内容が決まっているので構成企画などは費用負担なし、というものとします。
この場合の「ちゃんと」は、音声・映像の収録がミスなくできることがまず最優先。安易に「あとで編集すればいいし」は、自分でやるにしても手間を増やすだけですし、編集と撮影が分業ですと嫌われます(笑)
ロケでできることはちゃんとロケでやる。画角内に余計なものが映っていないか、声は割れていないか、露出一定にできているかもセッティングで調整してリハーサルもちゃんとすることです。
ここらへんをスムーズでできるかどうかは、演者さんへの負担やストレスの軽減につながり、動画の品質向上にもなるし、なによりも時間コストが削減できます。あとは演者さんの熟練度に応じて、気持ちよくリラックスして撮影できるようにコミュニケーションを図ることも必要ですね。
ここまでしっかりやってあると、編集への余計な負担がないので作業もスムーズになります。
さて、ここまでの内容を、ちゃんと価格設定するとどうなるか。
ワタクシの場合はシンプルに①労働対価、②技術対価、③機材対価の3つをそれぞれ1時間当たりの価格として合計し、何時間かけてやるかで出します。ちなみに、記録メディアは案件ごとに新品を使用、基本エリア外への出張経費などはもちろん別途発生します。
①労働対価=1,500円/h~
きょうび、アルバイトでも時給1,500円はあり得ますから。「~」とあるのは指名料ですね。指名されるようになると付加価値として単価が上がります。
②技術対価=1,500円/h~
動画の撮影も編集も、それなりに手間や時間、お金をかけて身に着けたので、対価としてもらわないのであれば職業にする意味がありません。求められる技術に応じて価格が上がってしかるべきです。
③機材対価=1,500円/h~
必要に応じて業務用のビデオカメラや編集ソフト、編集ソフトを動かすだけのPCなど、持っていなければできないモノの使用料です。持っている機材の特殊性やレベルの高さに応じて上がります。つまり、作るものによっては、あるいは予算に限りがある場合はスマホでも構いません。撮影中に電話がかかってくるリスクはありますけどね(笑)
セミナー動画の例は、撮影時間が長い場合や、音声の調整が必要なので、率直に言って業務用のビデオカメラを使うことが必要です。最近は一眼レフでも動画は撮れますが、長時間の撮影は「餅は餅屋」でビデオカメラが優位です。マイクからの音声入力のレベル調整とか、ピントや露出の固定など設定の自由度でも優位です。
事前に内容や段取りをしっかり打ち合わせしたり、ロケ地の状況把握(環境音や雑音が入るか否か、明かりの状態など)をするのも、作業時間を短くします。ロケでできることをちゃんとやるのと合わせると、結果としてコスト削減になるんです。
つまり、「①1,500円+②1,500円+③1,500円=4,500円/h」を基本として、何時間かかって作るかで算出します。打ち合わせ、ロケ、編集、修正までを含めて納品までにかかった時間ですね。仮に今回のセミナー動画で打ち合わせとロケハン(ロケ地の下見)とロケで合わせて1日、編集と修正で半日として1日(出来上がりが最大1hの動画で編集に演出を求めないモノとして)、労働の場合の定時と仮定して1日=8hですから、4,500円×12h=54,000円が最低価格ということです。
この価格設定をしている最大の理由は、「お客様にも理解してもらいやすいから」。見積もりによくわからない専門用語で項目をいくら並べても、意味が理解できなければお客様は納得してもらいにくいのです。自分がお客さんだったらと考えればよくわからないものにすんなりお金は払いませんもんね。
最後に、「現実にはそうはいかない」という声もあると思うので、安くすることについても触れておきます。価格を下げることは、いつでも誰でもできるので、安易にやることじゃないんです。仮に「あとでいくらでも値上げする自信がある」というのであればご自由にどうぞ(笑)
安くする場合は、自分(自社)にもお客様にも理解できる理由があることが前提です。一度に複数受注できるとか、1年間毎月一定数の受注が期待できるとか。ワタクシの場合は、そのお仕事を自身の実績として広報宣伝していいという条件であれば喜んで値引き交渉には応じます。また、誰からの受注かも、これからの時代は大事だと考えています。気持ちよく、スムーズにお仕事ができる相手なら、予算が限られていてもやってあげたくなるじゃないですか。特にこれからの動画制作は、その動画を作ることで売り上げを生むのかどうかでも大きく線が引けます。売り上げにつながらない動画に潤沢な予算を用意することはまずないでしょうし、反対に売り上げにつなぐための動画であれば、予算をケチることは売り上げ達成にとっては障害にある可能性が高いのです。
料理に置き換えて考えるとわかりやすいかもしれません。
おいしい料理が食べたいとレストランに行く。食べたいものは決まったけれど、予算が合わないからって「盛り付けや器や接客は気にしなくていいから安くして」とは誰も言わないでしょう? レストランで表示する価格には、食材・調理・接客・空間の要素をすべて含んだ価格になっていますから当たり前です。おいしい料理だからと言って、不潔な店でフチが欠けたお皿に雑な盛り付け、接客も不愛想だったら、あなたはそのレストランが繁盛すると思いますか?
願わくば、「ちゃんと」動画制作をしてくれる人が増えてくれることを!