期末試験とサンダル
司法試験から10日。
2024年7月25日12時半、ロー前期の最後のテストが終わった。
これは大変反省するべきことなのだが、司法試験が終わってからというものの法律学というものに全く触れる気が起きず、一夜漬けとも言えない浅漬けの知識で期末試験に挑んだ。手ごたえのほどは推して知るべしである。
この10日間は、飲み会やサウナ、夏休みのバイトの説明会に行ったり、実家への小帰省などなんだかんだで忙しかったりしたわけだが、もう少し勉強してやってもよかった。
自分がもう少しだけ肝っ玉の大きい人間であれば、一切勉強せず、試験に挑んで玉砕することもいとわずもっと遊び散らかして、今日の結果もまぁそんなものだガハハ!と笑い飛ばせたのかもしれない。あるいは、自分がもう少しだけ真面目で節度のある人間であれば、少なくとも1週間くらい前からは学期末試験の対策をして、満を持して今日の試験を受け終えたのかもしれない。
しかし、現実の自分は、勉強をしないでもなければしっかりするでもなく、三日四日前からだらだらと過去の講義資料と過去問だけ眺めて、それもほどほどに意味なくyoutubeを見たり、机の上を片付けてみたり、前日に高校の同級生と飯を食ったり、パチスロを打ったりと漫然と時間を浪費するような凡庸な怠惰さと、それでも落単はしたくないというみじめな自尊心を持ち合わせた大変ツマラナイ人間であって、がっかりする。
思えば司法試験も、周りの優秀な人間と比べるとずいぶん不真面目にやってきたものだ。しかし、不合格を覚悟して、来年の司法試験を見据えて勉強を再開するほど不出来でなかった気もするため、どうにも始末に悪い。
更に思い返せば、大学受験も、中高の部活動も決して手を抜いたわけでもないが、全力を出し切ったとも言えないような努力しかしておらず、それに見合った中途半端な結果しか出してこなかったなと帰りの中央線で考える。
13時を少し過ぎたころ、途中下車した国分寺のCoCo壱でカレーを食った。暑さのためか、そうしたナーバスな物思いに耽ったためか、正直食欲はあまりなかった。しかし、そういうときこそ、脳死でも手が進むカレーがちょうどいい。
驚いたのは、食事後もそうした物思いが止まず、ボーッと会計をしないまま店を出てしまい、店員に呼び止められたことだ。とにかく、それほどに今日は人生に集中できていない。
14時半。荻窪駅を西口から出た青梅通りには、夏休みを迎えた小中学生から、半そでのスーツの背中に汗染みを湛えたサラリーマン、夕飯の材料と思しきエコバックを携えた主婦が往来している。
平日のこの時間帯に、まだ定年にしては若く普通に働いていそうな風体のおじさんは何の仕事をしているのだろうなと、バス停前の脇を通り過ぎながら考える。思えば、荻窪に越してから1年半、この時間帯に駅のまわりを歩いたのは初めてかもしれない。
ほんとは就活情報を集めるとか、バイトのための資料作成とか、やらなきゃいけないことがまだまだたくさんある。しかし、びっくりするくらいやる気が起きない。
司法試験期間中あれほど聞き漁っていた深夜ラジオも、この1年で両足を沼に入れ込んだパチスロも、試験が終わった後に読もうと枕元に積まれた積読も何もかも身が入らない。(パチスロに関しては単に勝ててないのが主ではある気もする)
試験前日にあった高校の友人。高校時代の彼は、勉強も運動もできて、人当たりのいい快活な人物であったのだが、闇の大学時代を経て、程よく性格のねじ曲がった人間になり果てた。俺とよく似たねじれ方だと思った。
「自分の中に毒を持て」という岡本太郎の本がある。しかし、人間生きていて毒を持てない人間はいないと思うが、その上でより大切なのは毒を適度に吐き出すことができるかできないかであるのだなと、ローの学友や、その友人そして俺自身を振り返って思う。
(なお、「自分の中に毒を持て」という言葉は、毒(困難な選択)に立ち向かっていけと言うようなニュアンスの言葉だったはずなので、上記の用法が誤用であることは承知いただきたい)
きちんと貯めこんでしまうストレスや自身のダメな部分を周りに打ち明けて、助けある人間は「毒」をため込まず、その結果明るく自分らしいまま良い人間になれる。反対に、俺やその友人のようにため込むタイプの人間は、思考に「毒」が蓄積・濃縮されていき、仲良くなるまではよそよそしく、仲良くなるとその毒をまき散らす厄介な人間になり果てる。
そういえば、帰りに新しいサンダルを買った。税込み4200円。
ここ最近は飯以外にはパチスロで無意味に勝ったり負けたりするような金の使い方ばかりで、自分のために何かを買うという自尊心を満たす金の使い方をしてやれていなかった気がする。たった4200円のサンダルをきちんと試し履きして買ったらなんだか嬉しかった。
結局二十数年モノの毒をため込んできた人間なので、今から自分の悩み事を少しづつでも友人や友人になりたい人に打ち明けてどうこうするということはもはや諦めているから、こういう自分の慰め方を少しづつするほかない。
とりあえず、このサンダルを履いてとりあえず今から井の頭公園とかまで散歩しようかな。
以上
ついでに道中ですれ違った人間に毒を一つ吐いておくと、サンダルに白ソックスを合わせるファッションを好む人間とだけは仲良くなれない。あのスタイルに理解できる要素がマジで一個もない。暑いからサンダルはいてるのに、なぜ長いソックスを履いてんの?頭悪くないか?
別に他人がどんな服を着ようがどんな思想を持とうが俺には一切関係ないが、マジであの服装に関しては純粋に理解できない。
あと、男で白ソックス・ローファーのやつも同罪だからな。滑稽だぞ。