(第15話)二度目のチャレンジ 【サポーター目線】
こんにちは、「小瀧真理子(こたきまりこ)」といいます。洋服を作ったり、イラストやマンガを描いたり、レシピを作ったりしています。
今回は、精子保存についてのストーリーの続きです。新橋の町に迷い込んだわたしたち。待っていたのは、思いがけない「あたたかい時間」でした。
ぜひ上記の体験記も一緒にご覧くださいませ。根本さんの視点の裏側を書いていこうと思います。それでは、どうぞ〜!
二度目のチャレンジ
プライベートな空間を求めて病院を後にしたわたしたち。
根本さんが「歩いて行ける」というので車椅子を置いて徒歩で道へ出ましたが、熱があって胸が痛い人が大丈夫なはずもなく…トボトボと心配な気持ちで胸がいっぱいになりながら、新橋の方へと歩きはじめました。
GoogleMapが教えてくれた目的地を目指すと、細くて高い、いかにも「東京」っぽい薄暗いビルが。エレベーターで上階へ上がり、根本さんを部屋に残してわたしはポケモンGOをしながら待つことに。
「今日のタイムリミットまであと2時間…大丈夫かなぁ…」
しばらくするとLINEが来て、「今日は無理そうです」とのこと。チャンスはまだ残されている…と思い、今日は潔く諦めることに。
すぐに病院に戻らなくちゃ…と思うわたしでしたが「もう当分シャワー浴びれないから、いま浴びておきたい…」と言う根本さん。
「シャワーは禁止です」と伺っていましたが、根本さんの「◯◯したい」という願望はできるだけ叶えてあげたいので「カテーテルの部分を絶対に濡らさないこと」を念押しして、シャワーで体をあたためることにしました。
「気持ちいい…(ほっ)」
熱のせいか寒がっていたので、あたたかさがリラックスさせてくれたのでしょう。束の間の休息。シャワーを浴びられるだけで感動です。
毎日浴びていたシャワーが浴びれないというのはどんな感覚なのでしょう…。
本人がいちばん気持ち悪いでしょう。スッキリしないし、気分転換にもならない…「何も考えずに頭のてっぺんからシャワーを浴びられるということはしあわせなことなんだなぁ…」と思ったのでした。
外に出るとまだ陽が差していて、「おひさまの光を直接浴びられることもしあわせなんだなぁ…」と。
「制限が加わると際立つものが見えはじめる」という感覚は、
歩けること、光を浴びられること、外の空気を吸えること、風や気温の変化を感じられること、好きなものを食べられること、シャワーが浴びられること、体が痛くないこと
これらすべてに共通していて、「普通」っていうのはすばらしくて特別なことなんだと教えてくれます。
帰りのタクシーでも「外の景色が変わるっていうのは楽しいこと」という感覚に変わりました。普段何気なく見ていた景色が急に愛おしくなる。視点が広がると楽しさの感度も上がるものなんですね。
つづく...
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