見出し画像

内視鏡中の血圧低下時の対処法


処置中の血圧低下をしのぐために様々な方法があります。
処置医によって好む手段は異なると思いますが、基礎知識として知っておくといいでしょう。

薬剤に関しては採用薬、溶解方法、配置場所などを確認していつでも使えるようにしておきましょう。

下肢挙上

血圧が下がった場合にはとりあえず下肢挙上しましょう。
循環血液量が増えるので、次のアクションまでにかかる時間稼ぎになります。

枕2つ分程度、足が上がれば十分です。
掛け布団を丸めて足の下に置く形などしましょう。置くものがなくて人員の余裕があるのであれば一人は足を持つ係にしてしまっても良いかもしれません。

大量補液

血圧が下がった場合、昇圧剤も有効ですが、そもそも血管内に血液がなければそれらも十分に効きません。
そのため、血圧が下がったら補液は必須です。

可能なら2ルート、
なるべく太めの針(できれば22G以上)でルートキープを行いましょう。
※血管虚脱していてあまり太い針はルートキープ困難な可能性あり

投与する点滴は、
生食・乳酸リンゲルなど、
Naがなるべく多く含まれているもの。

血圧を高めるためには血管内に水分貯留する必要があります。
ナトリウムを多く含んでいるもの、もしくは膠質液(ボルベン、サリンヘス、ヘスパンダーなど)を投与することによって血管内に水分を保ってくれ、結果的に血圧上昇・維持につながります。
反射的に使えるように、自施設の採用薬剤や配置場所は把握しておきましょう。

極端な心不全がある場合を除いて、
血圧低下時の大量補液での大きな合併症はあまりありません。
少なくとも急変時には大量補液せざるを得ないです。

血圧が下がっていて危険な状態であれば点滴は可能な限り全開で、かつ点滴を吊す高さも高くして速やかに点滴が入るようにしましょう。

もっと極端に血圧が低い場合にはポンピングといって30mlや50mlシリンジを三方活栓でつないで、点滴をシリンジを使って押し込むことで自然落下以上に早めることもあります。

補液のまとめ

・点滴ルートは複数、太めでとる
・ナトリウムの多く含まれている点滴、もしくは膠質液を把握しておく
・投与速度は全開で
・ポンピングという方法があることを知っておく

ノルアドレナリン

主に敗血症性ショックの際の昇圧剤として使用します。

末梢の血管を締めることで、ほかを犠牲にして心臓に血液を集めるようにするイメージを持つと良いと思います。

心臓に血液を集めることで血圧、特に心臓や脳への血流を保つことができますが、同時に四肢や腎臓などほかの臓器への血流を絞ることになります。

そのため、前述の通り、まずは大量補液で血液の量自体を増やさないと、集める血液もないし、絞られている臓器への負荷も大きくなってしまいます。

ノルアドレナリンの投与量

投与量は体重あたりに換算したγ(ガンマ)計算を行います。
基本的には0.3γが最大量となります。
これ以上投与すると末梢組織に負担がかかりすぎるため許容できません。

投与が始まった際に0.3γとなる流量がいくつなのか確認しそれ以上を超えないようにしましょう。

いろんなサイトで解説されているので検索してみてください。
皆さん苦手ですよね。笑
私も苦手です。

医療系アプリのHOKUTOにはγ計算できるものもありますので、使ってみてもいいかもしれません

私の場合はスプレッドシートにノルアドレナリン3Aを50mlに溶解したものと5Aを50mlに溶解したものを保存していて、その表を見ながら決めています。(周りの医師によって溶解量が異なる為2パターン準備してます)

できれば自施設で統一した溶解方法、投与表を作っておくと便利ではないでしょうか?
すでに施設に決まった投与方法があるかもしれませんので各施設の状況をご確認ください。

ノルアドレナリンまとめ

・末梢を締めて血圧を保っている
・末梢の臓器を犠牲にしている
・最大量は0.3γ

ネオシネジン

あくまでも処置中に血圧が下がったものをほんの10分程度上昇させるものです。
1mg1Aであれば生食等で1mg10mlに調製し1mlずつivして血圧の反応を見ながら使用します。
5mg1Aであれば生食100mlのボトルに入れてしまい、2mlずつ使用すると上記同様に0.1mgずつivすることが可能です。
血圧の反応が早いため比較的使用しやすい薬剤です。
ただし効果が切れるのも早くこまめに投与する必要があるのでご注意ください。

血圧低下時には焦ってしまい、なかなか冷静に考えられません。
そんなときのために、日頃余裕のあるうちから複雑なγ計算や薬の配置状況などを確認して、少しでも迷い無く動けるように日頃から備えておきましょう。

院内で定期的に勉強会をしてもいいかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!