ベルギーでの就職活動に関する基本情報
私は2022年から駐妻としてベルギーに住み始め、2024年にベルギーの大学院を卒業しベルギーで就職しました。就職活動の際、基本的なことが分からず情報収集に時間がかかったため、同じような立場の人(ベルギーで就職を考えている学生、駐在帯同家族の方など)に向けて私が就職活動を通して得た知識を共有します。
2024年の情報をベースにしています。特にビザ関係は条件が毎年変わるので、詳細は公式ウェブサイトで確認するようにしてください。
ビザ
海外で働くためには就労可能なビザを取得することが必須となります。配偶者ビザ、同棲ビザ(Cohabitation)を持たない場合の選択肢は主に下記のようになるかと思います。2024年時点で、ワーキングホリデービザはありません。自営業は本記事では対象外とします。
Family reunification VISA
長期滞在ビザ(タイプD)の一種です。いわゆる帯同家族・駐妻・駐夫はこのビザを取得します。つまり、ベルギーでは帯同家族も就労可能です!
ベルギー以外の国に滞在中の方がいらっしゃれば、このサイトで配偶者ビザ保持者が就労可能な国を調べることができます。
Skilled Worker VISA
高等教育機関を卒業しており、一定水準以上の給与で雇用契約を結んでいる人が取得可能です。
給与の基準はベルギーの平均年収に基づいて毎年更新されます。自治体(フランダース、ワロン、ブリュッセル)によっても金額は多少異なります。また、30歳未満の労働者に対しては少し低い基準値が設定されています。
例えば、フランダースでは、30歳以上で年収46,632ユーロ、30歳未満で37,305.60ユーロが必要です。
下記サイトで給与の条件を確認できます。
フランダース:Work permits – Highly skilled workers | Flanders.be (vlaanderen.be)
ワロン:Autorisations de travail et permis de travail B : seuils salariaux à respecter par les employeurs - Emploi et Formation professionnelle en Wallonie
ブリュッセル:Minimum remuneration | Brussels Economy and Employment (economy-employment.brussels)
Search Year ビザ
ベルギーの高等教育機関を卒業した後にベルギーで働くことを希望する非EEA圏の学生が、使用することのできる滞在資格です。
12か月間、ベルギー市民と同様にベルギー国内で就職活動を行ったり、無制限に働くことができます。Search year自体には給与に関する条件はありませんが、12か月の期限が過ぎた後はその他の滞在資格(多くは上記のSkilled worker VISAになるかと思います)が必要になるため、Search yearの期間中にビザ基準をクリアできる職を見つけなければなりません。
ベルギーの名門大学KU Leuvenのウェブサイトに詳しく説明されています。
Non-EEA students: working in Belgium after graduation — Working, volunteering & career (kuleuven.be)
就活時期
日本のように、新卒一括採用などはありません。私は大学院在学中に就職活動を開始しましたが、私の周りにはそのような人はいませんでした。多くの友人(ベルギー、EU圏、非EU圏出身全て含む)は、卒業後に就職活動をすると話していました。
とはいえ、外国人として職なしで無制限に滞在することはできないことや、履歴書のブランクが日本では好まれないこと(もちろん採用する企業側の意識が変わっていく必要はありますが…)を考慮すると、常にアンテナを張っておき、良さそうな求人を見つけたタイミングで応募するのが良いのかなと思います。
言語(英語、フランス語、オランダ語)
就職活動の方針を決定する上で、どの言語を使って働くのかということについて考える必要があります。大前提として、どのような仕事に就くかによって必要とされる言語は異なります。就きたい仕事を起点に使用言語を決めるのが理想ではありますが、実際には既に基礎ができている言語を使って就職するのが現実的だと考えます。
※もちろん、新たにフランス語、オランダ語を習得することも可能です。既に英語の基礎があれば同じヨーロッパ言語なので上達も早いはずです。それでもゼロから仕事でつかえるレベルに持っていくには1年は集中的に学習する必要があります(この期間ももちろん人や環境によりますが、周囲を見ていて概ねこのくらいはかかっています)。
上記のように考え、私は英語(+日本語)のみで働けるインターナショナルな会社、職場に絞って就職活動を行いました。言い換えると、日系企業を含む、(ベルギーから見た)外資系企業を中心に求人を見ていくことになります。
求人票がフランス語(オランダ語)で書かれていれば、言語について明記されていなくてもフランス語(オランダ語)は必須だと考えたほうが良いです。多言語国家ベルギーなので、たいてい求人票に言語要件が載っています。
French is optionalやFrench is an assetのような書かれ方をしている場合は、その言語ができればプラスにはなりますが、必須ではないという意味になります。その他のスキルや経験で採りたいと思ってもらえれば、現地語ができなくても採用される可能性があるのでねらい目です。
現地語ができなくても、学びたいという姿勢を見せることはとても大切です。挨拶と軽い自己紹介は現地語でできるようにしておくと、面接の際に好印象を持ってもらえます。
学歴の扱われ方
ヨーロッパでは学歴と職歴の一貫性が重視されます。例えばマーケティングの職種では応募資格の欄に、Bachelor's/Master's degree in Marketing, Business, or Communication、経理系ではEconomics, Finance or Controllingなどと書かれているはずです。
ホワイトカラーの職種では修士まで持っている人が多いという話も聞きましたが、私の職場は比較的年齢層が高いこともあり学士卒が多数派です。
私自身の例をお話しすると、私は会計畑のキャリアを歩んできましたが、学部は外国語学部、修士は社会学部と、関連性の薄い学問を学んできました。その点について、面接で「会計について大学で学んだことはありますか?」という形で突っ込まれました。学位はないものの、同じ職種での実務経験があり、同時に資格勉強で体系的に学んできたので、業務は問題なく遂行できるはずだと説得しました。また、なぜ社会学を学んだのかという点や、社会学をどのように職場で活かせるのかという点も事前に整理しておき説明しました。このようにして、学歴の不一致をカバーして面接を通過することができました。入社後、日本の雇用慣行では大学の専攻とキャリアは必ずしも一致しないという話をするとより納得してもらえたので、私のような懸念点がある方はこの点についても面接前に準備しておくといいかもしれません。
まとめると、一貫性と修士号があればベターだが、なくても可能性がない訳ではないというところでしょうか。最終的には求められている業務が遂行できればいいので、言語や学歴についてはダメ元で交渉してみるという姿勢も大切だと思います。
CV (Curriculum Vitae)
履歴書+職務経歴書のようなものです。国によって、写真や生年月日の有無など文化が違うので、リクルーターや現地の詳しい人(友人や大学のキャリアセンターなど)に確認できると安心です。
一例として私がどのようにCVを作成したかご紹介します。大学で出会ったベルギー出身の友人がヨーロッパで広く使われているフォーマットはEuropassのものだと話していたので、私もこれを使用しました。
Create your Europass CV | Europass
オンライン上で編集ができ、レイアウトを調整できるので簡単にきれいなCVが仕上がります。アプライする会社、職種に合わせて内容を調整するのも簡単です。
顔写真:載せませんでした。その代わりにLinkedInのリンクを記載し、LinkedInには顔写真を載せました。(実態を伴わない綺麗ごとのようであまり好きなやり方ではありませんが…)
職務経歴:簡潔にまとめました。求人票をよく読み、どのような経験・スキルが求められてるのかを自分なりに考え、それに合わせて記載する内容や強調する部分を変えました。
言語:日本語、英語のみ記載しました。私はヒンディー語も話せますがヨーロッパの仕事では使用しないので省略しました。今振り返ってみると、印象付けや話題提供という意味で載せてもよかったのかなと思います。
CVについてはベルギーでの就活を経験されたCarlさんの記事にも詳しく書かれています。
ベルギー就活・就職記録|Carl (note.com)
人脈・コネ
ベルギーで仕事を見つけるにあたり、人脈やコネは非常に重要です。私が今働いている会社はかなり規模の大きい会社ですが、職場には紹介で入ったという人が多くいます。例えば、両親が働いていた、子供同士が友達などです。
私も最終的に夫にリファラルしてもらい、仕事が決まりました。夫と私の職場は事務所が異なり、面接官と夫は直接の面識はなかったのですが、リファラルという安心感が内定に大きく寄与したことは確かだと思います。面接中には夫の事務所の人たちと一緒に食事をしたりして良い関係を築いている(=新しい職場にも馴染める)ことをアピールしました。
就活ツール
自己アピール(CVから飛んでもらう用)、現地の人脈づくり、求人検索、面接官の経歴の確認など、何かと使うことになるので、アカウント作成は必須です。大学の就活セミナーでもまずLinkedInが紹介されます。
企業のオフィシャルサイト
自分が入りたい会社のサイトを直接確認し求人を見てみるのも有効です。私はこの方法で仕事を見つけました。
Glassdoor
企業の口コミや平均給与を確認できます。このサイトは選考が進み、内定をもらって給与交渉に入る際に使うことになります。私はベルギーでの給与の相場感覚がなく、どのくらい強気で交渉していいか分からなかったので重宝しました。
ChatGPT
就活に限らず現代の必須アイテムかと思います。CVの添削、求人の読み込み、ベルギーのジェネラルな就活情報の収集、面接対策などで使い倒しました。
面接
面接については私の体験を別の記事で詳しく書きたいと思っていますが、ベルギーで面接を受ける上で重要だと思ったポイントを書き出します。
全体的に言えることとして、面接官は面接において候補者をジャッジしようとしているのではなく、お互いにマッチングを確認する場にしたいと考えているように感じました。会社や時代にも(私が就職・転職活動をしていた時から状況は変わっていると思うので)よるのでしょうが、日本よりもベルギーの方がその傾向が強いと思います。全体を通して、自分を過剰に良く見せようとするよりは、正直な対応が好まれると感じました。
Conversationalに話す:想定質問に対する回答を用意しておくことは大切ですが、暗記したものを読み上げるのではなく、自然な会話ができることが大切です。私は自己紹介で、ベルギーの大学で学んでいて…というところから話し始めたときに、「そもそもなぜベルギーに来たの?」というのが気になったようで質問されました。そこからは用意した文章ではなく、素直に夫の仕事の都合で来たという説明をしたところ、納得してもらえました。「ベルギーの印象は?」「大学はどう?」など業務には直結しない質問も多かったです。内定を頂いた会社は自分と似ている人が多かったので、会話の相性が重視されていると感じました。お互いにミスマッチがあると後々不幸なので、素直に振舞ったほうが良いです。英語面接の対策や自己アピールに意識がいってしまうと、自然に会話するという当たり前のことが意外とおろそかになってしまいがちなので、改めて意識するのは大事だと感じました。
ビザの状況、何年くらい働けるのか:雇用する側としては外国人を雇う上で、当然気になる点です。相手の心配を解消できるように説明できるように整理しておくと良いです。
以上、ベルギーで仕事を探している方の参考になれば幸いです!質問がありましたらコメント頂ければ追記したいと思います。
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