ベルギーで中古車を買う
ベルギーで仕事を始めるにあたり、通勤の足として自動車を手に入れる必要がありました。車にもベルギーの手続きにも詳しくない私が、0からスタートして無事購入に至るまでに得た知識をまとめました。必要な方に届けば幸いです。
ベルギーでの自動車購入の基礎知識
マニュアル（MT）車が主流
AT車も増えてきてはいるものの、まだまだMT車が主流です。AT車だけで探そうとすると、その分選択肢が少なくなります。私が探していた価格帯では、同じスペックで比較するとAT車の方が€2000ほど高かったです。
状況が許せば、MT車の免許を取得することをおすすめします。
排ガス規制
ガソリン車（ハイブリッド含む）を購入する場合に注意が必要になるのが、ヨーロッパの排ガス規制です。
ベルギーの場合、ブリュッセル、アントワープ、ゲントにおいて「低排出ゾーン（LEZ: Low Emission Zones）」が導入されています。これらのゾーンでは、基準を満たさない車両の進入が制限されます。
基準の詳細はこちらで確認できます。
Page en pratique | Low Emission Zone (lez.brussels)
目安としてガソリン車ならEURO 5以降、ディーゼル車ならEURO 6以降を選べば、今後数年はブリュッセルLEZ内も走行可能です。
基準を満たさない場合は、LEZへの侵入が不可となります。1日だけ有効な通行許可証を購入することは可能ですが、LEZ内に住んでいる方が毎日許可証を購入するのは現実的ではありません。
Car-Pass
Car-Passとは、車両の走行距離や修理歴が記載されたデータのことです。中古車掲載サイトにリンクが記載されており、ネット上で確認できるようになっています。売り手にとって不利な情報を隠蔽するのを防ぎ、中古車市場の信頼性を向上させる仕組みです。買い手としては利用しない手はありません。
サイトにリンクがない場合、売り手に「Car-Passはあるか？」と確認し、ない場合は購入は控えたほうが安全です。
必要手続き、書類
全体の流れとしては、(1)運転免許証の準備、(2)中古車探し、(3)登録証の入手、(4)自動車保険加入、(5)ナンバープレート入手、(6)駐車場の申込、(7)車両受取、となります。
(1)、(2)は同時進行が可能ですが、(3)～(6)はその前の手続きが完了するまで先に進めないので、車が必要な予定がある方は余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。全てがスムーズに進んだ場合でも、車を決めてから車両受取まで1か月ほどかかりました。
(1)運転免許証
有効な日本の運転免許証を持っている場合、ベルギーで試験等を受ける必要はなく、書き換えの手続きを行うことでベルギーで有効な免許証を手に入れることができます。
運転免許証について | 在ベルギー日本国大使館 (emb-japan.go.jp)
ベルギーの運転免許証の取得手続きは、(a)日本の運転免許証の翻訳、(b)コミューンでの申請の二段階に分けられます。
(a)日本の運転免許証の翻訳：正式には、運転免許抜粋翻訳証明と言います。日本大使館で日本の免許証をベルギーの公用語へ翻訳してもらいます。申請には予約が必要です。必要書類は下記の通り。
申請書
運転免許証原本
ベルギー滞在許可証（IDカード）
写真（ 縦4.5cm×横3.5cm）
(b)コミューンでの申請：次に(a)で取得した翻訳を持ってコミューンにベルギーの運転免許証の申請をします。必要書類は各自治体のウェブサイトでご確認ください。私の住む自治体では申請書、翻訳、IDカードのみで申請できました。
上記(a)(b)の手続きを完了するのに、一か月ほど見ておくと安心です。
(2)中古車探し
ディーラー選び、車両選びについては下記に詳細を記載しました。
(3)自動車登録証
自動車保険の申込に必要となる書類です。正式名称はDemande d'Immatriculation d'un vehiculeですが、ピンク色をしていることからformulaire roseとも呼ばれています。
ディーラーに前金を支払うとこの書類を準備してもらえます。私の場合は、メールで送られてきました。
保険会社からは名前（C1.1, C1.2）、住所（C1.3）、国民登録番号（C10）、サイン（X8）を自分で記入するように指示されました。ナンバープレートを自宅ではなく他の住所（カーディーラーに直接送る人も多いとのことです）に送ってもらいたい場合は、X10にその住所を記入する必要があります。
記入例はこちらのサイトにありました。
私はPDFデータ上でAdobeの「入力と署名」という機能を使って記入しました。
記入が完了したら保険会社に送付します。
(4)自動車保険
ChatGPTによると、KBC、AG Insurance、AXA Belgiumが大手のようです。3社のうちKBCだけが英語で見積が可能でした。私は銀行口座もKBC Bankを使っており、同じアプリで一括管理できるのが便利だと思ったのでKBCで契約しました。
自動車保険には3種類あり、違いは下記の通りです。
Third-Party Liability (T/P Liability): 第三者賠償責任。法的に義務付けられている保険。他人に与えた損害や怪我をカバーするが、自分の車の損害はカバーされない。
Semi-Comprehensive Insurance: 準包括保険。第三者賠償責任に加え、盗難、火災、自然災害などに対する補償がつく。ただし、通常、自分が起こした事故による自分の車の損害はカバーされない。
Fully Comprehensive Insurance: 完全総合保険。準包括保険に含まれるすべての補償が含まれ、自分に過失がある場合でも、自分の車への損害もカバーされる。
ネット上でどの種類を希望するかや、車両情報やドライバー情報を入力し見積依頼を出すことができます。翌日、保険会社から電話がかかってきて、詳細な見積をしてもらえました。私はベルギーでの運転歴がないため保険料が少し割高になるそうで、完全総合保険+ロードサービスで€74/月という見積結果でした。ご参考まで。
(5)ナンバープレート
保険会社と契約が完了するとナンバープレートが一枚送られてきます。車の前後に取り付けるために、そのナンバープレートを複製する必要があります。
Auto5というお店にネットから注文し、1時間後に店舗で受け取ることができます。ベルギーの各都市に店舗があり、ブリュッセルには5店舗あります。
Votre plaque d'immatriculation Belge au meilleur prix - Auto5
他には、Autoconnect SHOPに注文すると、自宅まで配達してもらえます。17時までに注文すると即日発送とのことです。
ナンバープレートを持参してディーラーに行き、購入した車に取り付けてもらえば車を受け取る準備が完了します。
(6)駐車場
(a)住宅に付属する駐車スペース（地下など）と(b)自治体の管理する駐車場の2種類の選択肢があります。
(a)を希望する場合は、住宅管理会社に連絡をして契約をすることになります。駐車場の料金は家賃と一緒に支払うことができます（詳細は管理会社にご確認ください）。
(b)の場合は、自治体に駐車許可証（Parking Permit）を申請します。申請には下記の書類が必要となります。自治体によって多少異なると思いますので、詳しくは各自治体のウェブサイトでご確認ください。
IDカード
自動車登録証
車のナンバー
中古車の見つけ方、選び方
検索サイト
AutoScout24というサイトが使いやすく、多くの業者が投稿しているのでおすすめです。
私は年式、走行距離、トランスミッション（オートマまたはマニュアル）、排ガス規制（EURO 6など）、出品者（車に詳しくない場合、一般の人ではなくプロの業者から買うのが安心だと思います）でソートして探しました。
中古車ディーラー
全ての業者が安心して取引できるわけではないので、口コミ、登録年度、住所を確認しました。業者によってはGoogle Mapで検索しても見つからない場合がありました。口コミが少なすぎる、新しすぎる業者も避けました。
試乗に行った際に、購入をせかしたり、きちんと質問に答えてくれない業者も避けたほうが良いです。
また、トラブルを避けるために前金などのお金を支払ったときは領収書をもらっておくことが重要です。
ディーラー保証がある場合は、保証範囲を確認しておきましょう。
ご参考までに、私はこちらのディーラーで購入しました。1年の保証が付きます。英語でのコミュニケーションも問題なく、質問等も丁寧に答えてくれます。書類手続きも迅速に対応してもらえました。
鉄道の駅からは遠いので、既に車を所有しているかレンタカーを使う必要があります。試乗と受取で少なくとも2回訪れることになります。
試乗
ベルギー特有の話ではないですが、下記の点に注目して購入予定の車をチェックしました。
エンジンルームがきれいか：丁寧に使われていたかが分かります。汚れたままである場合、業者の質も疑わしいです。
エンジンオイルはきれいか：定期的なメンテナンスが行われていたかの指標となります。車に詳しくなくても汚れていればすぐにわかります。
座り心地が良いか
うるさすぎるなど、音に違和感・不快感はないか
試乗して問題がなければ、先方に購入したいという意向を伝え、書類手続き開始となります。ディーラーであれば先方が慣れているので、指示に従えば問題ありません。
ベルギーの中古車購入に必要な情報は以上となります。一つ一つは大したことありませんが、異国の地で英語、フランス語、オランダ語を使って上記を全て完了するのはなかなか骨が折れました。私の経験がどなたかのお役に立てば幸いです！