牛肉のしぐれ煮のはなし
料理のタイトルですが、レシピではございません。
あしからず。
さて、何故に『牛肉のしぐれ煮』と銘打っているかというと
思い出深いメニューだからなのです。
まだ実家に住んでいた頃
両親共働きで、弟たちはまだ学生で
私は少しお仕事からドロップアウトして、ゆるくバイト生活してました。
実家でもろもろ養っていただいてる代わりに家事をしていたんですよね。
全然得意じゃないけど、ほぼほぼ毎日料理していたんですが…
弟たちは、私の料理よりも母の料理の方が好きで。
当たり前といえばそれまでなんですけど、『お母さんのはこうじゃない』って結構クレーム入れられてたんですよ。
イライラしつつも、確かに母との違いを感じて、出来るだけ舌の記憶を頼りに母の味に近づけていっていたつもりなのですが…
うちの母、めちゃめちゃ料理上手で。
料理本だけの本棚があるくらいの勉強家でもあったので、まあ、ちょっと主婦齧ってるだけの私が追いつけるなんて到底無理なレベルだったんですよ。
それを、調味料とかで誤魔化しながら
『記憶にあるお母さんの手料理』
に近い味を探ってるだけの私には、本当に雲の上の存在だったんですよ。
そこで話が戻ります。
ある日、牛肉のしぐれ煮を作ったんです。
お肉が入ってるから、弟たちは文句を言わずに完食。
晩酌中の父にも出したところ、
「おまえ、料理上手くなったな。母さんの味とは違うけど、これ、すごくうまいよ。」
って。
普段、人を褒めない父に褒められたことが嬉しくて、でも、そんな父の前だから私も感情をうまく出せなくて、
「ホント?よかった。」
なんて素っ気なくかえしちゃったけど、
実はすごく嬉しくて、でも嬉しいことが恥ずかしくて、ストレートな褒め言葉に照れてしまった私はそのまま自室に戻って、1人泣いてたの。
嬉しくて。
家に長い時間いるようになって、家事をしてたけど、
家事って本当にキリがなくて。
拘れば時間がなくなるし、それでなくても時間に追われていたし。
でも、私も家族もやって当たり前って感覚だったから、日々の家事がやっつけになってきちゃってた時もあったのですよ。
だけど、それは違うんだなって思い知らされた日だったので、とてもよく覚えてるんですよ。
それから早数年の時が経ち…
牛肉のしぐれ煮は、私の得意料理になりましたとさ。
今もあんまり料理は得意じゃないけど、
誰かの為に作っている
私がこの人の命を作っている
そう思うと、疲れて、つらくて、しんどくても
少しやる気を底上げしてくれます。
父を思い出したのでツラツラと書きました。
思い出したって言っても、
父、存命しておりますがね?