AI絵師がNAIリークを捨てられない理由

Novelaiの公式声明がAI絵師にここまで動揺を与えた理由は、もうNAIリークを捨てることができないからです。理由は3点あります。
1点目は、LoRa等の「資産」を蓄えすぎたからです。無断の追加学習によって蓄えられたLoRa・HN・TI・DBは基本的にNAIリーク産のSD1.x系でしか使えません。新しく2.x系で始めるのはかなりの労力がかかるし、開発するだけのメリットがない。よってAI絵師は愚かにも「資産」を捨てることができないから、NAIリークを捨てることができないのです。
2点目は、NSFW表現です。まず確認しますが、AI絵師界隈ではNSFWが出力できないモデルが興味を持たれることは非常に稀です。SD2.xでもNSFWはできますが、SD1.xほど得意ではありません。先述した「資産」の問題もあり、NSFWを出力できない2系はAI絵師の興味の対象にはなりません。同様に、niji等のモデルも評価の対象になりません。よって、NSFW表現をこなすことができるNAIリークから逃れることができないのです。
3点目は、技術力のなさです。NAIリークが出てからあれほど時間が立った今でも、NAIリークを超えるモデルを作ることができなかった。このことは、画像生成界隈の約一年弱の動静を見ている方ならご理解いただけるでしょう。少なくとも日本の画像生成AI技術は、NAIリークに関しては本当に役立たずだった。
NAIリークを捨てるためには、少なくともこの3点を乗り越えなければいけません。すなわち、①NAIリークの影響を消し去る形で「資産」を引き継げて、②NSFWの表現が1系と同等かそれ以上にできて、③それらを可能にする技術を持たなければならない。このほとんど不可能な難題を達成しなければいけません。
さらに絶望的なのは、これをクリアしてもdanbooruと無断学習の問題が残っていることです。極めつけに、この二つの問題はNAIリークなどより遥かに解決することが困難です。つまり、AI絵師にとってはNAIリーク問題を解決しようとも、それは新たな問題を前景化するための徒労に過ぎないということです。
だから目を逸らし続けてきたのでしょう。なぜなら、どうせ問題を解決しても意味がないのなら、問題を無視した方がよっぽど精神的にラクだからです。「NAIリークは黙認されている」とか「NAIリークを流出させたやつは英雄だ」とか言って忘れたフリさえしていればよかった。
しかし、そうは言ってられない事態がきました。公式が発言したからです。公式はAI絵師の忌々しい記憶を刺激しました。「法的措置」を検討するとまで言われたら、どういう人間でも覚醒します。AI絵師は、そういうトラウマチックな体験を、今無理矢理によびおこされている。だから、彼らはここまで動揺しているのです。

(2023年6月24日)

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