【性の科学】セックスの疑問をホルモンで解決!
あなたはセックスをする際に、パートナーの行動や態度について下記のように感じたことはありませんか?
「どうしていきなり冷たくなるんだろう」
「こうすれば相手は喜ぶはずだ」
「もっとしたいのにできない…」
「最近、性欲がわかない…」
これらはすべてセックスの際に分泌されるホルモンで説明することができます。
このことを知っていれば、より上手にパートナーとのセックスを楽しめるようになるでしょう。
しかし、もし知らずにこれからも自己中心的なセックスや、相手に誤解を与えたままでいるといずれは破局を迎えてしまうかもしれません。
今回の参考書籍
今回の教養は下記の書籍を参考に執筆しています。
セックスを盛り上げる魅惑のホルモン
まずはじめに、セックスをする際の一連の流れにおいて、それぞれの段階でどのようなホルモンが分泌されるかを確認しておきましょう。
性的な興奮:テストステロン、オキシトシン
性行為:一酸化窒素、ドーパミン、バソプレッシン
オーガズム:セロトニン、エンドルフィン
射精:オキシトシン、アドレナリン、プロクラチン
一般的な流れは、まず性的な興奮を経て、体がセックスのための準備をし始めます。男女ともに体の準備ができたら挿入し、性的な興奮が高まったところで絶頂、そしてオーガズムを迎えます。
男性はわかりやすく射精で絶頂を迎えますが、女性の絶頂は明確なものがなくグラデーションがあり、いずれにおいてもホルモンは重要な役割を担っているのです。
なぜ、セックスにおいてホルモンの役割や分泌されるタイミングを知ることが重要なのでしょうか?
それは、ホルモンの分泌が足りなければそもそも性欲がわかなかったり、最高の快感を得にくくなるためです。
さらに、セックスのフェーズごとに適切なホルモンが、適切に分泌されなければ体の相性が悪いとすら感じてしまう危険性があります。
しかし、セックスをしているときにどのタイミングで、どのようなホルモンが分泌されるのか、そしてそれが身体的・心理的にどのように影響を与えるのかを知っておけば、パートナーの理解度も高まります。
これにより、お互いにより深いセックスが楽しめるようになるでしょう。
男性も女性もテストステロンによって性欲がわく
男性の性欲が高まるのはテストステロンという男性ホルモンによるものですが、実は、女性の性欲もテストステロンによって高まります。
下記の記事でも解説しているように、テストステロンは男女を問わず非常に重要な役割を担っているホルモンです。
女性ホルモンのエストロゲンは、閉経にともなってほぼ分泌されなくなりますが、テストステロンの分泌量はあまり変わりません。
したがって、心身ともに健康で、テストステロンを分泌する副腎に問題がなければ、閉経後でも性欲がなくなるということはなく、異性への興味を失うことはないのです。
そして、性欲をコントロールするテストステロンを分泌する器官は下記のとおりです。
男性:精巣、副腎
女性:卵巣、副腎
男女で共通しているのが副腎ですね。
最近は「副腎疲労」という言葉が書籍などでも話題となっているように、副腎は性欲のみならず非常に重要な役割を担っています。
性欲とストレスを司る臓器「副腎」
仕事や家庭、人間関係によるストレスや、不健康な食生活、運動不足などによって副腎は疲労します。これにより副腎が機能不全を起こすとホルモンバランスが崩れてしまい、結果的に性欲の低下につながります。
したがって、
「最近、性欲がわかない」
「なんだか元気がないし、疲れやすい」
「うつっぽい感じがする」
と感じるのであれば、副腎に負担がかかる生活をしていないか見直したほうがいいかもしれません。
副腎はストレスと闘う臓器であるため、ある程度はストレスに耐性がありますが、慢性的にストレスに晒されている場合は副腎疲労を起こしている可能性があります。
勃起は「リラックスと興奮」という矛盾したような状態
お互いに性欲が高まり、興奮してくると男性はペニスが勃起します。このとき、どのような状態にあるのか、科学的に把握しておくことで興奮しすぎることなく程よく冷静に対応できるでしょう。
興奮してペニスが勃起しているときは、リラックスしているときや落ち着いているときに優位になる副交感神経が活発になります。
このとき、ドキドキして性的に興奮しているとはいえ、アクセルを担当する交感神経が優位になっているわけではありません。勃起時は、実はブレーキを担当する副交感神経が優位になっているのです。
では、なぜリラックスしているはずなのにドキドキするのでしょうか?
性的な興奮を感じて副交感神経が優位になると、血管の内側にある細胞から一酸化窒素(NO)が放出されます。一酸化窒素には血管を広げる作用があるため、これにより血流が促されてドキドキする、というメカニズムです。
実際、馬の性行為中に心拍数やホルモン値、一酸化窒素の値を調べた研究でも、交感神経の伝達物質であるアドレナリンが多く分泌されているわけではないことがわかっています。
つまり、勃起時にドキドキしているからといって緊張しているわけではなく、むしろリラックスしつつも全身に血流が巡っている状態なのです。
「食べる輸血」で勃起力アップ?
一酸化窒素によって血管が拡張し、勃起が促されるということは、一酸化窒素を含む食べ物を食べることで勃起力アップが期待できると考えられます。
実際に、勃起機能障害の治療には、一酸化窒素の働きを活性化させつつ、一酸化窒素を増やす治療薬が用いられています。
そこで普段の生活に、勃起力アップのために気軽に取り入れられる習慣が、一酸化窒素を多く含む食品を食べることです。
そして、その代表的な食品が「食べる輸血」とも呼ばれるスーパーフード、ビーツ。
正確にはビーツに含まれる硝酸塩が、体内で一酸化窒素の産生を促します。日常的に食べることで勃起力が向上するかもしれません。
とはいえ、お店でビーツを見かけることは少ないため、下記のようなパックになっているものを選ぶと、調理の手間も省けてビーツを手軽に食卓に取り入れられるでしょう。
また、ビーツには「ベタシアニン」という強力な抗酸化物質や、腸内環境を整える「ラフィノース」などが含まれており、最近ではスーパーフードとして注目されています。
前戯でオキシトシンを分泌して絆を深める
もしあなたが男性で、パートナーの女性との絆を深めたいのであれば、時間をかけて丁寧に前戯を行うべきでしょう。
なぜなら、前戯の際にオキシトシンが分泌されるためです。
オキシトシンとは「愛情ホルモン」や「絆のホルモン」、「母性のホルモン」と呼ばれるホルモンで、対人関係の構築において大きな役割を果たしています。
具体的には、オキシトシンが多い状態だと、
相手に対する信頼感が高まる
自分は愛されていると感じる
相手とより深い関係を築きたいという気持ちが増す
ことがわかっているのです。
つまり、パートナーの女性が満足する前戯を行い、オキシトシンを多量に分泌させることで、より自分への信頼感や愛情を感じさせることができ、深い関係を築くことが期待できます。
また、女性は前戯だけではなく、オーガズムの際にもオキシトシンの分泌が高まります。したがって、自分だけ絶頂を迎えて満足していたら、オキシトシンの作用が薄れて愛想を尽かされるかもしれません。
勃起は副交感神経。射精は交感神経が優位に
繰り返しになりますが、勃起を司るのはリラックスを担当する副交感神経で、一酸化窒素によって血管が拡張することによって勃起します。
しかし、性的興奮が高まり射精をする際には、闘争や興奮を担当する交感神経にスイッチが切り替わり、アドレナリン値が急激に上がります。
そして、一酸化窒素によって拡張していた血管は収縮し、体はリラックスモードから戦闘モードへと一気に変わるのです。
なぜ、リラックスしていた体が、闘争に備えるように変わるのでしょうか?
これは野生動物で考えるとわかりやすいのですが、そもそも交尾の最中はスキだらけで危険なため、メスと交尾をし終わったあともリラックスしていると敵に襲われてしまいます。
そこで、交尾が終わった後はメスを外敵から守るためにも、交感神経に切り替えてすぐに戦闘に備えなければならないのです。このような理由から、射精後の男性は急激に冷静になると考えられています。
賢者タイムは「プロクラチン」が原因
とはいえ、セックスをする前の男性は「何回もできそうだぜ」と息巻いているにもかかわらず、いざ射精をすると途端に性欲が減退し、今すぐ確定申告でもできそうなくらい冷静になりますよね。
いわゆる「賢者タイム」です。
安全な室内でセックスをする現代において、「敵に襲われるかもしれないから」という進化生物学的な理由だけでは賢者モードを説明することは難しいかもしれません。
しかし、賢者モードには進化生物学的な理由だけではなく、生理学的な理由もあります。それは「プロクラチン」によるものです。
男性は射精をするとプロクラチンというホルモンが分泌されるのですが、このプロクラチンによって男性は急激に興奮が冷めていきます。
また、マスターベーションによる射精よりもセックスによる射精のほうが、4倍もプロクラチンが分泌されるという研究もあります。
相手が守りたい存在だからこそプロクラチンが分泌されると考えると、急に冷たくなる男性に対する女性の捉え方がかわるのではないでしょうか?
モテない男は前戯を疎かにする
もしあなたが男性であれば、セックスの際に前戯をおろそかにしているとパートナーに見捨てられるかもしれません。
なぜなら、女性はセックスにおいて前戯を最も重要視しているからです。
国際医療福祉大学病院の久松伸一医師が、500人の女性に対してセックスで重要視していることはなにか調べた結果、圧倒的に前戯が多かったことがわかっています。
そして2番目に多かったものが「後戯」だったようです。
一般的に、男性がセックスで求めることといえば「女性をイかせること」や「ペニスの大きさ」、「勃起時の硬さ」などですが、当の女性自身はそういったことはあまり重要視していません。
女性が重要視していることは、スキンシップなのです。
スキンシップさえ充実していれば、挿入はなくてもいいと考える女性もいるでしょう。
女性は心理的な落ち着きや愛情を求めている
男性は肉体的な快楽を求めるあまり、独りよがりなセックスをしがちです。
しかし、女性は肉体的な快楽よりも、パートナーからの愛情や信頼関係、心理的な落ち着きやを求めているのです。
ホルモンでいうと、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンや、心理的な落ち着きをもたらすセロトニンの分泌が女性にとっては重要になります。
上述したように、セックスの際にオキシトシンが分泌されるのは前戯であるため、やはり前戯が女性にとって大切であることがわかりますね。
また、オキシトシンはセックスだけではなく、日常的なスキンシップによっても分泌されるため、大切なことは日常的に自然と触れ合うコミュニケーションではないでしょうか。
大切な人がいるのであれば、普段からそのことを相手にコミュニケーションで伝えていきましょう。
「性の教養」では、下記のような記事もよくみられています。
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