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お悩み相談その001「黒歴史を吊るし上げられる学生」
本日の相談
本日寄せられたお悩みはこちらです。
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卒業目前の全校集会で黒歴史を吊るし上げられました。
私とA子は中学からずっと陰キャで、高校でもクラスの5軍くらいに位置してきました。このままではいけないと思い、高1のある時賭けに出ました。文化祭の出し物に演劇でエントリーしたのです。
演劇と言っても、演者は私達ふたりだけ。時間は3分間。派手な演出が多い文化祭で逆にコンパクトにまとめればエモいものができるのではという作戦です。スクールカーストを覆せるかもとワクワクする一方、滑ったら地獄に突き落とされるという不安に押しつぶされながら毎日練習してきました。
そして迎えた文化祭当日。演劇の開演時間。私の心臓はバクバク音を立ててました。配役とストーリーは陳腐なもので、A子が「貴公子」で私が「暗殺者」。女暗殺者(私)はとある依頼で貴公子(A子)の命を狙うも、ナイフが胸に突き立てられる瞬間互いの瞳が合って、互いに恋に落ちながらも貴公子は死んでいくというストーリー。それを3分の短時間に詰め込んで魅せる挑戦作でした。
練習の成果もあって台詞をトチることもなく、なんとか無事終わりました。正直ウケたのかどうかもわかりませんでしたが、次の日から私達の扱いは別に変りませんでした。ガッカリはしましたが覚悟はしていたので一週間もすると傷も癒え、私達は再び5軍陰キャの日常に戻っていきました。
それから2年後。私達5軍の陰キャにも卒業の季節はやってきます。卒業前に全校集会で3年送り出しパーティーがありました。これまでの3年間の思い出を懐かしんで輝かしい未来へ送り出すというアレです。
生徒会長挨拶など一通り色々やったあと、大スクリーンに3年間の思い出をまとめたスライドが映され、1軍陽キャの華々しい活躍が次々映し出されました。野球部、バスケ部、吹奏楽部、文化祭のバンド……。私達5軍にとってはフーンって感じです。まあこういうのもこれで最後かと心を無にして見てましたが、次の瞬間信じがたい事が起きました。スクリーンに私とA子の演劇が映されたのです。私は反射的に顔を覆いましたがスライドは止まってくれません。なぜか私達の演劇に結構な尺が取られ、最後にA子の決め台詞がどアップで映されました。
「おお!私を殺そうとする君よ!しかし私は恋に落ちた!
君は私から大事なものを一つ奪い、同時に一つ与えて去り逝く私を見送るのか!」
ゲーーー、という音が体育館に響き渡り、驚いて振り向くとA子が吐いていました。椅子に座って正面を向いたまま、この世の終わりのような顔でゲロをボタボタ垂れ流していました。私もその場を逃げ出したかったので、付き添って一緒に保健室に行きました。さすがに近くにいた子達は心配そうに見ていましたが、体育館全体は私達に見向きもせず変わらぬ喧騒に包まれていました。
私はなんとか立ち直れましたが、卒業式にA子の姿はありませんでした。
私は今大学一年生ですが、時折この日の事が夢に出てきます。私達は(特にA子は)一生この黒歴史を引きずって生きていかねばならないのでしょうか。陰キャがイキって大舞台に立つことは罪であり悪なのでしょうか。答えを教えてください。
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なぜ黒歴史は黒なのか?
ご相談ありがとうございます。思い出したくない記憶と戦う辛い日々を過ごされてきたのですね。
もちろん相談者さんの言う「陰キャが大舞台に立つこと」は罪でも悪でもありません。しかし過去に作ってしまった黒歴史を、まるで罪や悪のように後悔してしまう人がいるのも事実です。私達は黒歴史とどう向き合っていけばいいのでしょうか。
そもそも黒歴史が「黒」であるゆえんとは?人はなぜ黒歴史を思い出して辛くなるのでしょうか?私の場合、胸に手を当てて考えてみると以下の2つの理由が思い当りました。
1. 自分の黒歴史が他の人の記憶にも残ってるんじゃないかと思って恥ずかしくなる
2. 黒歴史行動を取ってしまった過去の自分の未熟さや痛々しさに恥ずかしくなる
他にもあるかもしれませんが、とりあえず主な理由はこの2つでしょう。順番に対処を考えていきましょう。
1. 黒歴史が他の人の記憶に残ってるんじゃないかと恥ずかしくなる
さっそく結論を言ってしまいますが、はっきりと断言します。人は他人の黒歴史をいちいち記憶してません。
突然ですが問いかけです。1年以内に発生した誰か(他人)の黒歴史を、1分以内に思い出して下さい。
……思い出せましたか?
私は何人かにこの問いかけをしてみましたが、答えられた人はいませんでした。そもそも「誰にとって何が黒歴史なのかもよくわからない」という人がほとんどでした。
もちろん、何かのきっかけで人の黒歴史を一瞬思い出すなんてことはあるかもしれません。例えばまとめブログの「お前らの黒歴史を教えろ」という記事を読んでいて、ふと過去の同級生の黒歴史を思い出すことはあるでしょう。それでも多分1分後には、その歴史も忘却の彼方です。他人の黒歴史なんて所詮その程度の情報なのです。「誰かが私の恥ずかしい過去を思い出すかも!」という心配は人生において不要なので切り捨てましょう。
2. 過去の自分の未熟さに恥ずかしくなる
気持ちはわかりますが、ぶっちゃけ黒歴史を作ったあなたと今のあなたは別人です。
人間、一年もすれば別人になります。特に高校3年から大学1年までの1年間は人を別人にするには十分な時間です。なので、黒歴史を作った痛い自分は別人だと思いましょう。別人の歴史を背負っても何にもなりません。
そもそも……
人が何か新しい事や慣れない事にチャレンジしようと思えば、手探りで進むことになります。最初は未熟な状態なので、成熟してから振り返ると恥ずかしくなる行動を取ってしまうことがままあります。未熟な行動を否定するということはチャレンジを否定するということです。
相談者さんとA子さんは陰キャたる自分を打破しようとして、慣れない演劇にチャレンジしました。人前に立つ事も慣れていなかったはずなのに、一念発起して人前に立ちました。その精神自体は人生においてプラスに働きますし、大事に持っていたほうがいいものです。
黒歴史はそんなチャレンジの過程で生まれた余計な荷物です。気にして前に進めないようならササッと下ろしちゃいましょう。
黒歴史対策テクニック「意識をサッとずらす」
とはいえなかなか理屈通りにいかないのも事実。なのでひとつ思考テクニックをご紹介します。
黒歴史を思い出したら、別の事に意識を逸らしましょう。
黒歴史を何度も思い出してしまう理由を、雑に科学っぽく紐解いてみましょう。人間はひとつの出来事について考え込むと、その記憶についてのシナプス(神経細胞のつなぎ目)が強くなり、フラッシュバックしたり思い悩んだりするようになって悪循環に陥ります。
なので黒歴史が頭を過ぎりそうになった途端、今日のご飯の事や積んでるゲームの事にサッと思考を移しましょう。思考を移した直後は脳にムズムズ嫌な感じが残って黒歴史の事に思考を戻したくなるでしょうが、ぐっと堪えて別の事を考え続けましょう。これを繰り返すと黒歴史を思い出す思考回路が徐々に弱まっていき、そのうち大して思い出さなくなります。
これができるかどうかに性格は関係ありません。繰り返せば習得できる技術ですので習慣化してみましょう。
本日の余計な一言
この記事自体もいくら丼の黒歴史になるかもしれない。
ご清聴ありがとうございました。