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越後八海山~八ツ峰から阿寺山 年末年始冬合宿~

よく考えたら年末年始を山で迎えるのは初めてで、いわゆる“冬合宿”というやつにワクワクしていた。当初は北アルプスを計画していたけど色々な条件から頓挫。そんな中、興味は以前から気になっていた越後の八海山にあった。八ツ峰か、、正直どこまでできるか分からんけど、豪雪の越後で雪にまみれるのはまさに“冬合宿”らしくていいじゃない、ということで八海山を目指すことに。今回メンバーはいつも一緒に登っている鈴さんと、北海道から参加した桑ちゃんとハガリの3人。前日、黄蓮谷に入っていた桑ちゃんと私は大急ぎで装備を乾かし鈴さんと合流、昼に入間を出発して八海山スキー場に車を走らせた。15時過ぎ、六日町ICを出てスキー場に電話を入れると、なんと本日の最終ロープウェイは15時半とのこと。オワタ。。

【12/31 DAY1 ロープウェイ~女人堂(-3℃、小雪のち吹雪)】
ということで翌日、朝の八海山ロープウェイ。年末のスキー客で賑わう中、でっかいザックを背負った女子、、明らかに浮いている、、
ロープウェイを降りるといきなりノートレース。前日晴天だったから、女人堂まではスキーヤーのトレースを密かに期待したけど、甘かった。5日分の荷物で腿ラッセルは厳しく、途中からダブル歩荷で距離を稼ぐ。朝から降っていた小雪も女人堂の急斜面に入るころ吹雪に変わった。それにしても視界NG&風って、何度経験しても慣れないなぁ。吹雪かれたのはほんの30分もなかったのに、女人堂に着いた時の安堵感たるや(笑)3人でスコを振り回し、2階の扉を開けて中に逃げ込んだ。
女人堂はその日私たちだけ。「今頃下界は紅白かぁ、ラジオ持ってくるんだったなぁ」とか話しながら早めに寝たので、翌日起きた時には年が明けていた。


女人堂まではダブル歩荷
女人堂手前の急登で吹雪になる
女人堂入り口を掘り出す。雪が溜まるので3時間に一回除雪をした

【1/1 DAY2 女人堂~薬師岳~千本檜小屋(-7℃、風45km/h、雪7cm/3h、午後一時的に晴れ)】
雪の降る中女人堂を出発。以前2月に下ったときにアイスバーンで心配していた薬師の登りも問題なく、1時間半で順調に薬師岳に到着。この時はあまりの順調さに安心しきって、あとは千本檜小屋まで夏道だと10分の下りだけ、と思っていた。実際にここから千本檜小屋まで何分かかったかというと、、2時間40分。
ピークから千本檜小屋にコンパスを合わせて歩き出す。けど気づくと合わせた方角と違う方角に歩いている、、、修正して歩き出すけど、また違う。こんなことを繰り返した。そう、雪庇を避けながら歩くとどうしても正しい方角へ行けず、逆に言うと進みたい場所に雪庇があるのか。1か所様子を見てみようとして足を踏み出したら、「ズッ」スローモーションのように桑ちゃんが視界から落ちた。怖すぎ。2mくらいでよかった。この時点で完全にホワイトアウト。夏道通しは無理と判断し、屏風道側を巻こうと話すも、視界ゼロで無理。今日の予報では午後15時から晴れ。ここで雪洞を掘って視界回復待ちをすることに。これがよかった!雪洞を掘ったら快適で待つこと1時間半くらい、今日分の行動食食べきっちゃうよ、、と思ったころ、ツエルト越しに視界が明るくなった。来た、太陽!!!!!!雪洞から飛び出すと、思っていた方向に千本檜小屋が雪の牙城のように見えた。降りようとしていた屏風道側の沢は想像以上の急斜面。視界ゼロでこれ下るのは無理だ。再び視界が無くなるのが怖くて、雪洞から飛び出して下るルートにトレースを付ける。千本檜小屋まではなんと20分足らず。小屋から薬師岳を振り返ったら、度肝を抜かれた。夏道の下りは、もんの凄い、、雪庇だった。
千本檜小屋は八ツ峰側の建物2階の窓から無事入ることができた。しばらく天気が良かったので、歩いて10分地蔵岳手前まで下見。あとは小屋でゆっくり休んだ。
 

薬師岳への登り
千本檜小屋を目前にして完全ホワイトアウト、薬師岳ピークで雪洞を掘った
さっきまでのホワイトアウトが嘘のよう。千本檜小屋に向けて屛風道側へ巻き降りる
雪の牙城、千本檜小屋
八ツ峰がカッコイイ

【1/2 DAY3  視界なく、沈殿】
朝6時半出発準備を済ませて外に出るが、やはり視界なし。予報通りではあったけど、これで八ツ峰は突っ込めない、ということで今日は沈殿。昼まで小屋でダラダラ。動いてないと寒いし、食べることくらいしかすることがないので、苦し紛れに音楽を流して踊ったりした(笑)途中で雪洞掘ってくる!と出て行った鈴さんに合流して、午後には3人でイグルー作りに励む。これがなかなかうまくできて満足した(笑)
そうこうしていると男性の声が聞こえてきた!えっ、と思ったけど、越後三山岳友会のレジェンドたちが現れた!彼らは毎年1/2にこの小屋まで年始登山をやっているらしい。実は事前にその情報を見知っていたけど、この天気だしどうかな~、と思っていたら本当に現われてびっくりした(笑)岳友会のレジェンドたちはこの山塊のプロ。夜は地図を広げて宴会しながら山の話で盛り上がった。

寒いので躍る。我ながらシュール、、、
立派なイグルーができて満足。八ツ峰をバックにはしゃぐ

【1/3 DAY4 千本檜小屋~八ツ峰~迂回路分岐付近(晴れ→17hから雪→曇り、-11℃)】
前日天気を確認したところ、1/3夕方まで晴、1/4△(2cm/3h)、1/5晴。今日中に五龍
岳まで抜けられたら、明日は多少視界なくても下山できるだろう、ということで出発。
八ツ峰は地蔵岳のみ屏風道側から巻くが他は稜線通し。3つ目のピーク(?)はクライムダウンが難しくて鎖を探すも見つからず、岩に捨て縄で懸垂した(降りている時に下に鎖を発見)他にもクライムダウンだと難しい箇所あり、2~3回ブッシュで懸垂、うち一回は土嚢懸垂してフォローがクライムダウンで回収したりした。登りは2か所だったかロープを出す。1か所は雪稜、もう一か所は大日岳の登り。ここはアイゼンワカンが怖くて桑ちゃんがワカン外してリード。唯一ミックスぽいセクションだった。大日岳から八ツ峰迂回路分岐に着いた頃には天気が崩れて、夕闇。ここで入道岳への稜線を見失しなった。気持的にも焦ってきたので木が生えた絶対に安全、という場所を見つけて整地しビバークすることに。(だいぶ昔だが、八ツ峰上にテントを張ったパーティが雪庇で亡くなる事故があったことを知っていた私は、気持ちは進まなかったのだが、、)

3つ目のピークからの下降。鎖が掘り出せず岩にスリング掛けて
八ツ最、高の天気!
大日岳手前をブッシュで懸垂
大日岳手前の急なクーロワール。トップはラッセルが大変だった、、
大日岳へ。ワカンを脱いでリードする桑ちゃん

 
【1/4 DAY5曇/小雪→夕方から晴れ、-9℃】
大日岳を超えた箇所から稜線通しの雪庇が怖く見えたため、新開道側に懸垂して稜線に復帰。さて、ここからが問題だった。またしても視界が全く効かず、回復待ちで休憩している時に桑ちゃん、ハガリがそれぞれ雪庇に落ちかける。気持ちは完全に萎えてしまい、慎重には慎重を、ということで、入道岳のコルまではトップはロープを出してルートを探りながら進んだ。入道岳からのコルで視界も回復し、新開道側の斜面を一気に直上し入道岳に立った。
次は五龍岳、聞いた話によると、ここのルート取りが厄介とのこと。水無川方面の雪庇を避けるべく、1本新開道側の尾根に乗ってトラバースする作戦を考えて実行した。桑ちゃんがロープを出しつつ慎重に進もうとした時、、、「ズドーン」雪庇崩壊。もう、ほんと怖すぎる。地形図とにらめっこし、今度は標高を50mほど下った地形の緩い場所を狙って土嚢懸垂でハガリが雪庇を崩すことにした。「あぁ、今度はうまくいった。」幸い雪庇が小さく、無事20mほどの懸垂で沢地形に降り立った。下りたら雪崩が怖いので長居は不要。1m先の視界もなく不安な中、コンパスを振って五龍岳の稜線に復帰すべくコンテで進む。(雪に時々クレバスのような亀裂が入っており、ロープなしで行く気にはならなかった)
15時半ころ、五龍岳直下に到着。ここまで来たらあとは難しい箇所はないと判断し、スキー場に今晩中に下山予定の電話を入れた。休憩をしていたら予報通り視界が出て、これから下山する尾根、下界の町が見えた。ずっと真っ白な世界にいたので、相当嬉しかった。ここから今日中の下山を目指し一気に下る。と言っても阿寺山までは登り返しもあるけど、視界があって、樹林も出てきたので緊張感はなく、ヘッデンのライトで楽しくおしゃべりしながら歩いた。阿寺山直下にはいくつか池があり(雪の下だが)、その池の部分が大きな窪地みたいな不思議な地形になっていた。一刻も早く下山したかったので山頂へは行かず、右から夏道側に回り込み、冬道の尾根に入ったらスキーヤーのトレースが付いていた。久々に人の気配!笑 有難くトレースを使いながら林道まで標高差1,000mを一気に走り下った。

入道岳のコルへ。尾根も雪庇も見えず、リードはロープを出して進む
入道岳から五龍岳のコルにダイレクトに行けず。広堀川側の尾根に一旦乗り、傾斜の緩む1,710m付近の雪庇を土嚢懸垂で崩して尾根に復帰
五龍岳からの下り。やっと視界が開けて安堵
ヘッデンで阿寺山を目指す。安全圏に入ってあとは下るだけだ!

**いろいろメモ**
・八海山スキー場駐車場:駐車料金1000円/日。除雪のため車の鍵をスキー場に預ける必要あり、事前に問い合わせ推奨。
・避難小屋:女人堂トイレ協力金、千本檜小屋(八海山避難小屋)宿泊2,000円/日。どちらも1階、2階が使用可能で非常に快適に使用させてもらった。特に女人堂は自転車漕ぎ式のバイオトイレがあり、一見の価値あり!?
・濡れた装備を効率よく乾かすなら、テントを張って、湯たんぽに限る
・八ツ峰:数年前の同会山行ではロープを一回も出さなかったらしい(まじか、、)だいたい登りは水無川面に、下りは広堀川面にどちらも切れ落ちており、私たちの実力とメンタルでは怖くてノーロープなんて信じられなかった。
・それ以外の核心:①薬師岳~千本檜小屋のルーファイ②入道岳~五龍岳への尾根に乗ること③稜線上でのホワイトアウト(雪庇も見えない)での歩行
・ギア:ダブル50mロープ1本、スノーバー2、土嚢3(1回使用)、アルヌン短6、長スリ6。ハーケン&イボイノシシは持参したが使える場所なし。ブッシュで懸垂できる箇所もあり、捨て縄は多めにあるに越したことはない。ピッケルは鈴さん&桑ちゃんがクオーク2本持ち、ハガリがクオークとストレート。テクニカルな箇所はほぼないのでアックスビレイができればどちらでも。

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