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Sonbul (2015)のレヴュー: コロケーションの頻度に関する視線計測研究

コロケーションの強さに関する視線計測研究として以前レヴューしたLi et al. (2021) で引用されていた以下の研究も読んだのでまとめておきたい。(読んだのはだいぶ前だが書きかけで止まっていた…)

Sonbul, S. (2015). Fatal mistake, awful mistake, or extreme mistake? Frequency effects on off-line/on-line collocational processing. Bilingualism: Language and Cognition, 18(3), 419-437. https://doi.org/10.1017/S1366728914000674

背景

先行研究の限界点として,(1) コロケーションの処理をオンライン,オフライン測定の両方を用いて検証した研究が少ない,(2) 母語話者を対象とした研究が多く,母語話者と非母語話者を比較した研究が少ない,(3) コロケーションの意味的関連性を統制した研究が少ない(つまり,control itemsが低頻度の組み合わせというよりimplausibleな組み合わせだった,あるいはtarget item間でも関連度に差があった),の3点を挙げている。これら3つを解決した研究として Siyanova-Chanturia et al. (2011) があるが,これはbinominlas (e.g., safe and sound) の処理を検証したもので,厳密にはコロケーションの処理を検証したものではないとのことである。

なので,この研究では英語母語話者と非英語母語話者を協力者としオンライン(視線計測)とオフライン(典型性評定)の測定法を用いてコロケーションの意味的関連性を統制したうえで(意味的に不適切になるような語の組み合わせが含まれないようにしたうえで),コロケーションの処理を検証することを目的としている。

ちなみにこの研究では,Nesselhauf (2005) による語の組み合わせの以下の3つのパターンに基づいてコロケーションを扱っている。

(1) free combinations (no sense restrictions on either word, e.g., want a car, where both words can be used in other combinations freely) 

(2) collocations (sense of one word is restricted, e.g., take a picture, where the verb take in this sense cannot be used with nouns like film)

(3) idioms (sense of both words is restricted, e.g., sweeten the pill)

Wray (2002) を引いてコロケーションと他のFormulaic sequenceが違うのはfluidness (fixednessの反対) であると述べている。

方法

実験には英語母語話者と非英語母語話者30名ずつが参加し,fatal mistake, awful mistake, extreme mistakeのような頻度の異なる3種類の「形容詞+名詞」が30組用意された(上記例では降順で頻度が下がる)。これらはBNCに基づいて頻度の違いが確証されている。(頻度レベルはnon, lower, mid, higherにカテゴリ分けされている)

文脈の中で提示されたコロケーションの処理を視線計測により測定し,first-pass reading timeを初期処理,total reading timefixation countを後期処理の指標として算出している。これらの指標とオフラインの評定値について,混合効果モデルによる分析が行われた。モデルにはlog collocational frequency語彙サイズのほか,協力者の年齢(結構幅があったため),試行順,コロケーションの長さ(文字数),最初の単語の頻度 (log),2番目の単語の頻度 (log)が変数として含まれた。(これらをforwardとbackwardの両方で選定)

結果

いろいろな変数の効果が見られているので,ここではコロケーション頻度の影響の部分についてのみまとめる。コロケーション頻度の影響はFirst-pass reading timeでは有意であったが,total reading timeとfixation countでは有意でなかった。また,典型性評定のモデルにはコロケーション頻度が予測要因に含まれたが,さらにコロケーションの頻度と習熟度の交互作用も含まれた。この交互作用は,コロケーションの頻度の影響は習熟度が高い場合により大きくなるというものであった。

このことから,母語話者も非母語話者もコロケーションの頻度 (corpus-derived) に対してはオフラインでそのsensitivitiyを見せるが(特に母語話者の場合に強い),オンラインでは初期処理においてのみsensitiveityが見られると結論付けている。

Siyanova-Chanturia et al. (2011) ではオンラインで初期処理,後期処理の両方に影響が出ていたが,それとの違いとしてはbinominalとcollcationの違いによるとしている。つまり,binominalのほうが元の表現が変わったときの許容度が低いため,こちらのほうが影響が出やすいということである。

(感想)
コロケーションの強さという点で,もう少し深い議論がされるかなと思っていたが,実際読んでみると単純なPhrasal frequencyと伝統的に使われてきたMIを指標としていたので(MIは項目選定で使われているだけ),ちょっと期待していた内容とは違ったかなと思う(期待と違っていたというだけで,論文自体は面白かった)。コロケーションの強さについては,リーディングよりもライティング(もしくはスピーキング)研究のほうがいろいろ検討されているのかもしれない。

この研究,一応母語話者と非母語話者の比較としているけれど,分析ではVLTスコアのみを要因にしていて,母語話者と非母語話者をカテゴリカル変数として入れているわけではないように読める。そうなると,VLTスコアの影響をそのまま母語話者と非母語話者の違いと解釈するのは難しいように思うが…(実際,VLT得点も母語話者と非母語話者で有意差はあるものの,思ったほど得点差は大きくない)



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