白山七社 石川秋分旅二日目 ィイ・イヤシロ・チvol.74
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白山七社旅二日目はやはり雨天で始まった。かのや旅館の皆さんに温かく送り出されて、九時に予約をしていたさくらタクシーさんのピックアップで白山七社めぐりの続きに出発。
まずは一番遠い笥笠(すがさorけがさ)中宮神社を目指す。
雨は降ったり止んだりであるけれど、山奥に向かうので、さてどうなることやら?と言いつつも、のんびりお気楽モードのおみなたち。
本日お世話になるベテランドライバーさんは、予約時から丁寧な言葉づかいで此方の希望を細かく尋ねてくださり、とても誠意が感じられる優しいおじさん。道中にもいろいろとレクチャー頂き、白山市の地理や歴史、スキーシーズンの様子や道路事情までたっぷりと学べた。
スキー場や温泉地のある社近くまで車はスムーズに進んだけれど、あと五百メートルほどというところで、「通行止め」。深い谷あいの社は、降水量の増加が予想されるために昨夜から立ち入り禁止エリアになったらしい。
当方は「こんな天候だから仕方ないですよね」とサッパリとしているのだけれど、ドライバーさんは気の毒なくらい申し訳無さそうなご様子。七社満願は叶わずとも安全第一で、とわたくしたちはすっかりと納得なのに。「遠方から来られたのに」と当人たちよりも残念がってくださる。
まあまあ、次に行きましょう、他の神社は普通の道沿いだからたぶん大丈夫、となぜかわたくしたちがとりなして二社目となる佐羅早松神社に進む。
主要な道路沿いの山手だとナビは示すが、登り口がわかりづらい。それを上手に見つけて、だんだんと細くなっていく道の手前で車を降りて先の様子を確かめに雨中走ってくださった。戻っておっしゃるには、「ちゃんと先に進めますからね」と狭い参道を安全に運んでいただいた。熱心にまじめに業務に取り組む姿勢に感謝しきりである。
そうやって到着できたお社は、眼下の田園や集落を見守るロケーション。お天気が良ければ本当に気持ちの良い眺めが楽しめる場所だった。
下車して石段を登っていくうちに雨は段々と小降りになってきて、参拝は気温も丁度で、むしろ快適なくらいになってきた。一昨日の35度に此処に来るのは厳しかったろうと素直に思った。
拝殿でのご挨拶を済ませて見回すと、左手に三本の巨木が立ち並んで、その向こうに社殿が見えた。
なんだか御神気感じるね♪と呼び寄せられてみれば、其処にはなんと菊理姫神社が御鎮座されていた。
二人して菊理姫にご挨拶して、やはり災害消除をお願いする。そして、人の仔同士が扶け合って難事を乗り切るためのご支援を乞うた。なぜだか白山比咩神社よりも菊理姫を身近に感じる不思議な御神前だった。「やはり今日もしっとりとしたお参りだね」と笑い合う。
車に戻って「お陰様で自力では絶対にお参りできなかった神社に参拝できました。ありがとうございます」とドライバーさんにお礼を伝えて、三社目の白山別宮神社に向かってもらった。
ほどなく街中のお参りしやすいお社前に無事到着。此処からは里宮なのだと理解した。境内には古い遊具もあり、子どもたちの遊び場にもなってきたのだろう。わたくしも友達と近くの氏神さんで遊んだ頃を懐かしく思い起こした。
無事に参拝を済ませて、最後の岩本神社へ。
白山七社巡りではこの神社が岩根宮とみなされているが、実はもう一つの候補地、岩根神社が離れてあるという情報も目にした。今回はうかがえないけれど、チャンスに恵まれれば是非ともお参りしたいイヤシロチである。
車は白山市からお隣の能美市に移動するうちに、ドライバーさんからまたレクチャー。七社が沿う手取川は、大変な急流なので、なかなか橋を架けられず、人々は手を取り合って(つないで)渡ったという由来があるとか。言われてみれば、わたくしが見たことのないような大きな丸い石が無数にゴロゴロと河川敷に広がる様から、流れの勢いが如何なるものか想像された。そしてこの川がかつて「石川」と呼ばれていて、今の県名になっていると。
なるほどと納得しきりのうちに、三社目岩本神社に到着した。こちらも地域の児童公園のような空間も境内に備わって、親しまれている氏神さんの様相だった。
「加賀白山衆という農民でありながら戦上手の豊かな人々の隆盛の名残がこの地域にはあるんですよ。加賀のお殿様も対処に苦労されたそう」とまた貴重なレクチャーをいただいた。義経さんもその力を頼って立ち寄られたのだろうか?と金剣宮の石やこちらの石碑から想像した。
とにかく、こうして一社足りないながらも、白山巡りが早めに完了できたので、そのまま金沢まで運んでいただくことにした。道中では、道路の呼び名や金沢の観光、地元で人気な贅沢回転ずしのお店情報なども教えてもらううちに「観光客に石浦神社さんが人気ですよ。」とお勧めされる。
スムーズな車移動のおかげで新幹線の予約時間まで随分余裕ができたので、行き当たりばったりオプションに、金沢観光ともう一社の参拝を加えることが決まった。移動中にプランを組める気持ちの余裕が生じ、無事に金沢駅前に到着、下車となる。ドライバーさんに感謝である。
混雑する駅でまずは荷物をコインロッカーに入れて身軽になった後、市バス移動で広阪下車、近くで軽いランチを済ませてから、石浦神社に詣でた。
到着して初めて知ったのだけれど、なんと此処は「菊理媛神」が御祭神だった。「あらまあ、白山七社巡りになっちゃった。」図らずもの七社満願にニンマリしながら拝殿に向かえば、お目出度いことに花嫁さんがおいでだった
拝殿前にすすむと、頭上に立派な木彫が。いったいこれは?と見上げたけれど、次々と参拝者が並ぶので、謎のまま退去する。
拝殿の左手に進むと、お稲荷さんが祀られていてその手前には出雲構え型の立派なコマさんが異彩オーラを放って、逆立ちしていた。
その付近の湧き水横に、石浦神社のマスコット?の大きなきまちゃんが立っていた。ここはゆるキャラ?との撮影スポットだろうと、つられてつい撮影。
大人気の石浦神社の近隣はアートエリアが広がっており、その中の国立工芸館を見学することにした。伝統の漆工芸作家さんのビデオを視聴したり、新時代の工芸にも触れ、文化的なひとときを静かに過ごせたのも楽しかった。
金沢駅に戻る前に広阪のバス停前のカフェでひといき直会しましょうと、「雰囲気が良さそう」という勘だけで入店を決めた、古都美さん。ちょうど席も空いていて、広い窓から雨に洗われた鮮やかな緑を眺める贅沢おやつタイムとなった。
目にも口にも幸福に、旅先でこれほどほっこりと過ごせるとは思いもしない展開は、1社目参拝叶わずで余裕時間が与えられたこそ。結果的に七社を巡拝できたし、加賀の国の歴史や文化などすばらしさを堪能できたので嬉しい限り。
駅に戻る市バス移動もスムーズに、教わった回転ずしのテイクアウトとちょっぴり土産も買い込んで帰路の新幹線の座席に座った。車窓に流れる風景は雨上がりの緑豊かな金沢平野。この平安が国土全体に広がりますように、と祈るばかりだ。
出発前は、ちゃんと参拝できるのか、帰ってこれるのかと懸念された今回の石川旅。同じ県内で大きな災害が発生していることは、ずっと心にかかっていたが、振り返ってみると石川県の歴史や風土を学び、土地の食材を季節のままに味わえ、人々の温かさに慰められた良き参拝旅になった。この旅のことはきっと忘れることはないだろうし、忘れてはいけないとも思う。平穏無事と復興を願う、同じ日本の国で生きるはらからとして。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。
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