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御師ェルジュ イイ・ヤシロ・チ ㊱

播磨旅レポート第3弾は、「御師という存在」へのアプローチとする。
 
思いがけず、御師と広峯神社が繋がった、ランチのカフェ。実を言えば、わたくしにとって御師は特別な感情を呼び起こすキーワード、なのだ。

御師(オシまたはオンシ)という言葉を知ったのは、いつ頃だったろう?

つらつらと思い出すうちに、わたくしが御師という存在に初めて出会ったのは、10年ほど前、富士山周りの浅間さんを数社巡るツアーに一人で参加した時だったと、確認できた。

河口浅間神社の社前に御師のお屋敷があると知り、御朱印待ちの自由時間にその門を潜ったけれど、あいにくご不在でその代わりにご自由にお取りください、と置かれていた御札を頂いて辞した。コノハナサクヤヒメのご神像図を見て、山の女神はお猿さんを従えておいでなのだなあと至極ビギナーな感想をもったことを憶えている。↓

それからわたくしは、イヤシロチ巡りの中で、有名な伊勢、熊野、出雲の御師のことを順々に少しずつ知ることになった。行く先々でちらりと姿を垣間見せる「御師」。なぜか気になりながら、深追いすることもないままにこれまで来てしまった。

残念なことに、2021年に伊雑宮そばの御師の家は閉鎖になったようだ。わたくしは3年前にその軒先を通り過ぎ、倭姫の旧跡地?にも詣でた。時間も足りなかったのではあるが、その時は中を覗こうとは敢えてしなかった。

伊勢の御師に関する情報として、ブログ主さんの優しいお心持が丁寧な記事に溢れているこちらの記事を、シェアさせて頂く。↓

森新の主である、伊勢御師の末裔、森和夫さんの生前のインタビュー動画を見つけられたので、↓に貼らせていただく。今はほとんど知られていないホントウノコトを、御師が代々の口伝の中に残してこられた大切さを知り、わたくし自身も遅まきながら一般的には知られていない貴重なことがらがたくさんあるのだと思ったことだ。

チャンスを逸したことへの反省も込めて、この機会に各地の御師について少し調べてみようと考えた。かつて隆盛を誇っていた熊野の御師については、学術的にまとめられている以下の資料を見つけた。↓

そして、出雲の御師の活動が、今の御神徳とされる縁結びを作ったというこの記事も大変に興味深い。現代風に言えば、優秀な企画広告サービス業としての機能も担ったということだろう。その経済効果は計測不能なくらい絶大であることは間違いない。

そして、今再び播磨旅(播磨の廣峯神社)の御師についてみてみると、黒田官兵衛とのつながりや目薬の販売の促進のはたらきが知れる。

その活動が兵庫県内に限らず広範囲に及ぶことも、鳥取県の記事でさらに確認できた。↓

このように調べていくうちに、移動の自由が今ほど保障されていないその昔に、特別に日本各地への自在な情報ネットワークの拡充と情報拡散機能を持っていたと知れる。聖地巡礼のツアコンとして、聖俗の二面性を併せ持っていた御師。宗教儀礼、医療などの重要な知識を持ち、天体の運行に合わせた暦の頒布も行う一方、地理や歴史の情報を駆使した特産物の発掘と販売能力、神社仏閣の宣伝、旅行宿泊サービスの提供などに従事する。それと同時並行的に、めんめんと続く歴史の伝承のお役目も果たす、マルチな活躍のアレコレ。なかなか表には出てこないが、底知れぬ才覚と影響力が伺える存在であることは間違いない。段々と日本社会から姿を消しつつある御師に、妄想的なロマンを感じてしまう、わたくしである。

御師について全般的な各資料からの解説としては、↓のとおり。ご興味を持たれ、さらに詳しく知りたい方には、ここから派生する情報や学識を探求されるのも一つの方途かもしれないと思う。

さて、よくよく考えてみると、わたくしの喚ばれ旅では、誰かをイヤシロチに誘うことも重要なミッションの一つではないかと、この頃自覚し始めている。一人で詣でる時は、まるでその為の下見のような具合である。そうして、来る日時、参るべき人々を、訪れるべきイヤシロチにご案内するのだ。そのオーダーは天から降ってくるかのように、不思議なくらい天候もスケジュールもお参り日和というのがピッタリな状況で当日を迎えるのだ。(まさしくご招待としか思えないようなシチュエーション)

そんなわけで、わたくしは御師が気になって仕方ない。もし自分に前世があるとすれば、どこかの御師をしていたのではないか?と感じてしまうほどなのだ。もういっそのこと、天職「御師ェルジュ」(おんしぇるじゅ)とでも名乗ろうかと、友人たちに冗談混じりに話している。本物の御師にはまったく及ばない実力なのに、大変畏れ多いことだ。それでも、そうできれば、善男善女のイヤシロチ詣でに何かしらお役に立てるのも良いな、と想像する。そんなわたくしの稚拙な妄想を、廣峯神社の本殿背後のお社のお屋根の上から玄武が、朗らかに笑って見下ろしていたのだった。

ネリネのピンクが嬉しい初冬

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。


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