
端午に丹後旅 その2 イイ・ヤシロ・チ ㉚
丹後旅レポートの後半。
前日の宿での夕食(羽衣という和食のコース)も朝の和定食もおいしく堪能し、二日目も元気に出発。引き続き快晴の午前中は、久美浜の観光スポットを散策する。
まずは、疫病騒ぎの中で空前のヒットとなった「鬼滅の刃」のシーンに採用されて注目を浴びた磐座のある、神谷太刀之宮へ。駅から徒歩5分ほどの近さと、アクセスも抜群。鳥居を潜って立派な並木が続く参道を進み、小さな神橋を渡って境内に入る。境内では光の質が変わって、拝殿もとてもきれいに整っていた。
当社の情報は、偲フ花さんのブログで予習済み。↓とても参考になる内容と記事のスタンスに、尊敬の念がたえないブログである。
https://omouhana.com/2018/03/09/%E7%A5%9E%E8%B0%B7%E5%A4%AA%E5%88%80%E5%AE%AE%E7%A5%9E%E7%A4%BE%EF%BC%9A%E5%85%AB%E9%9B%B2%E3%83%8B%E6%95%A3%E3%83%AB%E8%8A%B1%E3%80%8056/
さらに道を渡って、石段の先の八幡宮に向かうと、右手に磐座があった。八幡宮の背後は、古墳のようにも感じる。
そして、大きな磐座の向かって正面は少し引っ込む感じで、御嶽などの拝所とよく似た雰囲気である。さらに奥に続く石段は、女人禁制が近年まで続いていたらしいが、古代祭祀主は女性であったはずなので、其処から女性を排除したのでは、たぶん祈りも届きにくかったのではないか?などとと想像した。
巨石の配置は、夏至の日の出の陽光が入る通り道を作り、その光が当たる目印岩を中心地に据え、北極星の位置を指し示す北向きにとがった岩があり、暦や天体観測の役割を果たすことが推察されている。農耕を星々の運行に従って行う人々が、此処で様々な祈りをささげ、神託を請うたのだろう。
そんなことを思っていたら、突如「炭次郎が切った岩だ‼」と弾んだ声が聞こえてきた。神様もまさか漫画の聖地になるなんて想像しなかったのでは?と思わず苦笑してしまった。でも、これもまた、人間が創る新しい神話の一つと言えるのかもしれない、と思ったことだ。
たとえ人間がどんな夢物語を重ねたところで、それでも、イヤシロチの力は大きく、眩い光が降り注ぐ、心身を癒やす空間であることに変わりはない。これまでも、これからも、人の仔はその波動に引き寄せられ、神なる存在を求めるだろう。
参拝を無事終えて、駅前に戻り、次の目的は、海側の「豪商稲葉本家」の見学である。入り口で大きな龍のお出迎え。コレは昔この地に恵みの雨をもたらした良い龍の姿?
久美浜のかつての栄華を示す、優れた日本家屋には、お目出度い端午の設えが各所に施されていた。名物のおはぎと珈琲のセットを頂きながら、翠溢れる庭園も眺める贅沢休憩タイム。貸し切り状態で過ごせたのもラッキー。
一服のあとは、久美浜駅に戻り、さらに天橋立方面行きのまた青松号で峰山駅に移動する。30分後に到着した峰山は、丹後ちりめんと天女の羽衣伝説の町である。
二日目の午後のイベントは、ここで公演される羽衣という舞踊の鑑賞。人間国宝坂東玉三郎の舞踊を直接目にできるのは、この時代に生きる幸せの一つと思っている。
峰山の天女は羽衣を取り上げられ、その後、養父母から捨てられる気の毒な身の上であるが、玉三郎の天女は、不憫に思った男が羽衣を返してくれて、お礼の舞を披露して天に帰るお目出度いストーリーである。夢のような美しさ、人ではないモノの在り方を垣間見る舞台芸術であった。
https://www.youtube.com/watch?v=pQeVAT7OQEk
↑の動画の18分ほどの辺りに、羽衣を返してくれたらお礼に舞を見せようという天女に対し、羽衣を拾った若者が「羽衣を渡したら、約束の天女の舞を見せないで飛び去ってしまうんじゃないか?」というシーン。天女がピシャリと「偽りは人に在り!」と凛々しく一喝する台詞回しが凄まじく恰好良かった。約束を守らない、嘘をつく、だます、そんな低俗でみっともないことは、天はしないのだ。
今の世界情勢も、日本の国内も、嘘が多く、理屈の通らないおかしな感情操作などがまかり通って誰かが利するように動いている。そう感じるわたくしには、この言葉は胸に勁く響いた。
その約束の通り、返された羽衣を纏った天女が喜びの舞を披露して、晴れて元の天界に舞い戻っていく姿を目撃した。ハッピーエンドとはこういうものだと明るい気持ちになった。美しく正しい世界は、幸せなのである。同行の友人と共に、ご機嫌よろしく大満足で帰途に就く。帰りは天橋立経由の福知山行きのたんごリレー号に乗った。
車内は日よけがすだれ調だったりと、木材を多用する内装が落ち着きと心地よさを与えていた。もちろん自由席に座ってのラクチン移動である。旅の幸せをお土産にのんびりと帰宅できた丹後ツアー。身も心も大満足のまさにゴールデンなウイーク、この愉しさも平和であればこそ。殊更に心底平和を願う今年の連休であった。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。