羊の社詣で 因幡夏参りその2 イイ・ヤシロ・チ vol.72
大満足の、一の宮参りの後、タクシーは鳥取駅周辺に戻ってきた。最寄りの神社はどうかな?とググってみると、鳥取県では開運神社巡りと称して、干支に因んだ12社と、開運八社巡りがあるようだ。↓
その中の羊の神社、聖神社がどうやら近いと判明。旅友さんの一人が先ほどの宇部神社で「わたしの干支の羊の可愛いお守りだわ」と授けていただいておられたので、「羊の神社って珍しいし、御縁感じるね」と向かうことにした。
例によって優しいドライバーお姉さんが「駐車場があるんですが、遠回りなのでこの近くに待機していますから、此方の鳥居から入ってください。」と運んでくださる。ますますな炎天モードの青空の下、なるべく暑い戸外を余分に歩くことのないよう気遣ってくださる心配りが、嬉しい。
社前に到着すると、其処は住宅街に囲まれた場所だった。地域の氏神さんとして祀られてるのね、と思いながら下車した三人。
一歩足を踏み入れると、それまでの街中な雰囲気がさらりと切り替わり、立派な大樹があちこちに立ち並んで木漏れ日が揺らめく空間になった。
手口を清めようと手水舎に近づくと、その手前に不思議なコブのある古木が立っている。「此処もパワスポだね」と三人は、はしゃいでコブの大樹にご挨拶して進む。
そうして、またしても暑さを忘れて拝殿前に出ると、思った以上に立派な建築に驚かされた。
全くのいきなり参拝はどうやら大正解のようで、この神社の境内は憩いの空気に満ちていた。事前に何の情報も持たず訪れたにもかかわらず、確りと「ご縁」を感じられるのが不思議だった。
木々から放たれるフィトンチッドか、木漏れ日の揺らぎか、心地よく吹き渡る風のおかげか、それらが相まっての相乗効果だろうか、何とも言えない居心地の良さが拡がっていた。先ほどの磐座での神秘的な雰囲気とはまた違う、参拝者を癒す優しい空間、とでも言えばいいのか。
黄葉の頃はきっと見事だろうと想像できる、素晴らしい公孫樹の大樹も、この日は緑の葉を繫らせて、厳しい太陽の熱と光線を遮ってくれている。古代から人々は、磐座で神と交信し、高い樹木に身を寄せ、心身に安らぎを与えて生きていたのだろうと、妄想する。
公孫樹の木陰の下で本殿を見やると、改めてその技術レベルの高さに驚く。
「この本殿、すごいねー」と誉めそやしながら、本殿の周りをぐるりと一周し、今度は日当たりの良い灼熱空間に出てしまったにも関わらず、思わず見入るハイレベル建築である。この建物にはたくさんの瑞兆な物々の木彫が施され、お目出度いやら、眷属の護りが施されて頼もしいやら。
木彫についてまとめられている、この記事↓は帰宅後に見つけ、美術的な値打ちも改めて感じ入ったわたくしである。
思わぬご褒美参拝は、最後に羊のスタンプ(ヘッダー画像)と書き置きの御朱印を頂いて、無事完了。
改めて社殿全体を俯瞰すると、福井の岡太・大瀧神社の様子を思い出した。
あの社殿にフォルムが似ている。こんな素晴らしい建築物が街中に存在するこの国のすばらしさと、宇部神社と紙幣つながりな岡太・大瀧神社を連想してしまった偶然の妙に改めて感じ入ることだ。
わたくしたちを乗せたタクシーの最後の目的地は、駅近の民芸美術館。その前で下車して、親切ドライバーさんと笑顔でお別れとなった。蔵のような設えの涼しい空間で、懐かしいノスタルジックな器や家具などをゆっくりと鑑賞し、その後は直会タイムに近くのカフェを訪れた。
此処では、都会の喧騒な午後とは全く無縁のゆったり時間が流れていた。鳥取駅前で、生活用具の美が詰まった器でいただく直会は、格別な趣きも味わえた。「土曜の午後のお茶で、こんな優雅な雰囲気にひたれるのは貴重だね。」と心身が解けるショートトリップに、またしても嬉しがるトリオ。
その後、カフェからぶらぶらと散策しながら駅に戻り、到着直後に目を付けていたお土産物を首尾よくゲットして、予約のバスにスムーズに乗車できた。帰路途中には雷雨エリアもあったけれど、予定通り到着した終点では気温も下がり、雨も降ってはいなかった。
「アレは送り出しの雨だったのかしらね?」と笑いつつ解散したことも、記憶にとどまるよい巡り合わせ。酷暑もしのぎながらの楽々参拝に、つくづくと神恩感謝である。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。