マイクロノベル集 101
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やあ、また会ったね。振り出しに戻る、だ。そんな顔をするなよ。滅多にいるもんじゃないんだぜ、そこに行けば必ず会える奴なんて。今日は旬の野菜が手に入ったんだ。あたたかいスープを出してやろう。
777
おめでとう! 誰が決めたか知らないが、こいつは数あるゾロ目の中でも特別なラッキーナンバー。ここがカジノならあんたは大金持ちだが、残念ながら俺は素寒貧だ。ま、運ってのは積み重ねるもんだ。泉とまでは言わないが、コップ一杯分はたまったかもよ?
778
「これを落としたのはテメェか?」泉の精とは思えぬ、怒りに満ちた声。「排泄行為は誰でもする。それを咎めはしねぇよ。しかしながら。都市の下水をこの泉に流し込むとはどういう了見だ、ああ?」正直者による黄金都市誕生まで、あと5分。
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月の下で恋をしたものだから、陽の下では言葉がかすんでしまい、夢で逢うことも叶わない。
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「自給自足を心がけなさい。一冊の本を分解し、文章を切り離して、一文字ずつ取り外す。そのあと組み替え、つなぎ直し、並び替えなさい」覚醒。ぼくは夢の中の疲れを残したまま、一握の文字を床に落としていく。なにを書いているのかはまだ知らない。