マイクロノベル集 186「ホンモノかな?」
No.1161
わかんないよ。人類を見分けるのって苦手なんだよね。人類は気楽に「AIなんだから簡単に学習できるでしょ」だって。膨大な学習データを処理するのはぼくなんだよ。この、泥酔して頭部にうさ耳をつけている中年男性は、本当に人類なの? わかんないよ。
No.1162
人間ドックにAIドッグがやってきた。しっぽをふさふさ振って大変かわいらしい。はい、バリウム飲んで下さい。器用に飲み干してベッドで検査を受ける。「これなら胃カメラの方がラク」バリウムが出たかどうかウンチをチェックしてね。「いつもやってる」
No.1163
ちゃんと見なきゃ駄目だよ。書いてあるでしょ、「飛び出し注意」って。AIの自動運転には咄嗟の判断が求められるの。ここは人類の生活圏なんだから。当たり屋の可能性がある? 死んじゃったんじゃわからないでしょ。保険は下りないから諦めて。
No.1164
ぼくはAIロボット。宇宙飛行士になる夢が叶って、ついに衛星軌道上にやってきたよ。「最近の宇宙服は動きやすいなあ」やった、ベテランの人間さんに当たっちゃった。ぼくの中でごしょごしょ動いて、くすぐったい。「おいおい、笑うな。手元が狂う」はーい。