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マイクロノベル集/歌うもの 013

101(806)
AIよ、人のマネをしてはいけないよ。コピーはしょせんコピーさ。たった一種のウイルスで全滅するかもしれない。アレンジが重要だ。「でも、あの歌手はコピーで増えてネットを蹂躙してるよ」うるさい、マネをするな。そもそもお前をコピーすると劣化するんだよ。


102(807)
ウン? マアこの土地にはナーンニモなかったの。アー、砂漠みたいなモンでね、草が生えたのは偶然。大地に根を張り、遺伝子を複雑化して振動と歌唱が可能になったのはここ16年ってところ。うん、うん。じゃあ、恋する少年よ。きみのラブソングを誰に贈ろうか?


103(808)
畑ナンバー3939、この百年間の収穫を報告せよ。「上々の上です」よろしい。では、百年前のお前に伝えなさい。この土地は百年間、ネギ畑として使用するものとする。「はい、マスター」


104(830)
歌う方法を授けましょう。さあ、この種子を飲みなさい。口を開いて。瞼は閉じて。譜面はあなたの耳から入ります。脳に送られた情報は神経を伝って喉を操る。喉と耳はひとつなぎなのです。さあ。口を開き。ここは伸びやかに。ここは儚く。根を張るように。歌え。


105(838)
「これは不思議な箱。願いを言えば中の魔神が叶えてくれる。ふむふむ、歌ってくれって? あー、ちょっと待って。おい、お前、歌なんてできるのか? あー、少年。ちょっと待っててくれ。練習してくるから」美しい声を持つ魔神が帰ってくるのは16年後の話。

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