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マイクロノベル集 184「聞いた話」

No.1153
これは聞いた話だよ。この宇宙は巨大なコンピュータなんだって。今もこの次の瞬間を計算してて、その結果がわたしのこの話。ああ、静かな音が聴こえるね。きっと雪が降る音、冬の足音だよ。コンピュータの冷却が効き過ぎているんだ。これは聞いた話だよ。


No.1154
君がくれた星が瞬くたびに思い出す。君はこの星に住んでいて。この星の所有者で。僕にこれを譲ってくれた。僕の目の中で、もう存在しない星が瞬く。ちょっと取り出してみようか? 君って誰だっけ。まあいいか。この星の所有者は僕なんだし。


No.1155
海の近くで暮らしていた頃の話。毎朝、砂浜に犬の足跡があった。右側にはまるで杖をついたような穴。「触らないでくれるかな。それはぼくの大切な思い出なんだ」今にも折れそうな木の棒に頼まれて、ぼくは投げる。それ以来、僕の手から磯の匂いが取れない。


No.1156
一つ二十円でぇす。道ばたで、いつもの爺さんが季節の果物を売っている。そんな値段で生計が成り立つとは思えないけど。「人生には前借りってぇもんがあるんだわぁ」ぼくは道ばたで、いつもの爺さんとして紅茶パックを売っている。一つ二十円でぇす。

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