マイクロノベル集 136
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どうしても走馬灯のことを考えちゃう。家族との思い出か。ジョンと散歩をして初めて知って楽しさか。甘酸っぱい恋の思い出か。わからない。どうしてケーキをのどに詰まらせた記憶ばかりが流れているの。いま、目の前に熊がいるのに。
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サイコロが走る。お前がそんなに走るなんて知らなかった。テーブルの上をツルツルと滑って落ちるなんて。まるで味噌汁が入ったお椀が滑る「ボイル=シャルルの法則」みたい……と思ったら、サイコロがタヌキに変化した。俺の味噌汁を盗み食いしやがったな!
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ジュースの自動販売機に「AR機能付き」との張り紙。好奇心で買ってみたら手にCGの缶がくっついた。なるほど。飲むことはできないけど、こりゃ面白い。ためつすがめつ眺めていたら。はてな。中からコーラが垂れてきた。不良品かな。
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いいかい、我々は人間や天使と違って勤勉なんだ。そう、勉強してるって意味だよ。よく知ってるね。天使たちは見向きもしないけど、人間が捨てた物には欲望が詰まっているんだ。あっ、お嬢ちゃん危ない。お酒のビンは割れてるかもしれないから悪魔に任せなさい。
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生後七ヶ月ぐらいで人見知りが始まる。世のおじいちゃんおばあちゃんが後悔するのはこの頃だ。「スマホのAI認証が働かないんですけど!?」あまりログインしてなかったんじゃない? あっ、いつも窓から遊びに来る猫ちゃんだ。
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