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マイクロノベル集 130

921
ぼくはどんどん小さくなる。移動するだけで減っちゃう。それでもあなたに接近。どんどん近づく。距離と質量は反比例する。そして距離と時間は等価値だ。ぼくとあなたはニアミスする。どう? なにか観測できた?


922
人間は自然の一部なのです。遺伝子も科学ではなく自然なのです。「フィボナッチ」だから人間は自然の中でこそ幸せを感じるのです。さあ、この美しい木漏れ日をご覧下さい。「フィボナッチ。なんの話かって? ありゃ悪魔だ。下手に返事をすると魂を取られるぞ」


923
「あなたの二重螺旋は美しい。ぜひ僕のお姫様になって下さい」と、コピーして持って帰ってきたのが16年前。なぜ色とりどりのマーブルチョコになってしまったんだろう。「あんたが放置したからでしょ」反省した僕はチョコを波形に並べる。これは秋の道だよ。


924
この箱は嫌われている。祖父は見つけ次第、縁側から庭に投げ捨てる。相撲取りなのかもしれない。いまのところ祖父の1勝28敗5引き分けだ。


925
眠っている彼が唇に指を当てている。かわいい。なにをしてほしいのかな? 「あっ」ひょっこり出てきた虫歯と目が合った。口の中に引っ込む。逃がすか!

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