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マイクロノベル集 238「ベランダ1分ミステリー」

No.1369
洗濯物を干すと必ずオナモミがつく。トゲトゲした小さな実。もちろんベランダには生えていない。猫が遊びに来てる? 好奇心をくすぐられてカメラを設置してみたら、風に乗ってシャツが飛んできた。おい、こら、人のベランダで私の服とイチャつくんじゃねぇ。


No.1370
私が犯人です。太陽の光は誰にでも平等に降り注ぐ……そんなものは嘘なのよ。地軸の傾きを考慮しなくても、建物の北と南を考えればすぐにわかるわ。だから干してやったのよ! ベランダの絶対に陽が当たらない位置に!! 「君は悪くないよ」屋根は黙ってて。


No.1371
本嫌いの男が建てた曰く付きの屋敷を借りることになった。幽霊が出るでもなく、家賃が安いこと以外は普通だ。しかし、長年暮らしていて判明した。この家の壁には何万冊もの本が塗り込まれていたのだ! どおりで部屋干しした洗濯物が異様に乾くと思った。


No.1372
「ベランダに猫が来たから」彼女は洗濯物を取り込む。ふてくされた顔の黒猫が座っていた。「この子が来ると絶対に雨が降るんだよね。ミルクをあげて」人慣れしていて、撫でても大人しい。「早くミルクをあげて」あっ、遅かった。猫は洗濯物の山に飛び込む。



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