マイクロノベル集 190「ぬいぐるみもタイヘン」

No.1177
悪魔の俺が気づくとぬいぐるみになっていた。体が上手く動かないし、自分の姿もわからない。ここはどうもぬいぐるみ売り場のようだ。幼子がやってきて、俺の隣のぬいぐるみを指さす。「この天使がいい！」な、なにぃ!?　悪魔の誘惑の力、見せつけてくれる！

No.1178
ぬいぐるみは見た目ではなく、中身が大切なのです。このわたしをご覧なさい。ぽかぽかの湯たんぽが入っていて大人気です。夏になったら氷枕に変えてやっぱり大人気。「湿気でカビちゃうよ」いやだぁ！　ベランダで逆さ吊りにされるのはいやだぁ!!

No.1179
ぬいぐるみたちで連絡を取り合って、行進することにした。いわゆるデモってやつ。「取れた目を直せー」「直せー」「片寄った綿を戻せー」「戻せー」なかなかの注目度。これは要求が通っちゃうかも。「ペットを近づけるのはやめ……ね、猫だあ！」「解散!!」「ギャー!!」

No.1180
吾輩は猫だったかもしれない。ついに、自分の名前が書かれたネズミのぬいぐるみをもらった。お姉ちゃんが「これはみっちゃんの物だよ」って。むふー。絶対に誰にも渡さないぞ。「みっちゃんが前世でよく遊んでたよ」どおりで匂いを嗅ぐと安心するね。