マイクロノベル集 211「え? なんの話?」
No.1261
昔々、桃太郎のお爺さんとお婆さんが住んでいました。その隣には、物語が始まったばかりのお爺さんBとお婆さんBが住んでいました。お爺さんBは山へ柴刈りに。お婆さんBは川で洗濯をしていて気づきました。桃太郎に柴刈りって必要? めでたしめでたし。
No.1262
どうしよう、女の子が「お話をして」ってせがむんだ。「ハッピーエンドの物語がいいな」って。ぼくは医療用のAIなんだよ。ほら、体温が高いからお薬を飲もうね。「ロミオとジュリエットがいいな」それなら話は別だ! 徹底的に作り変えてハッピーエンドにしてやる!!
No.1263
悪魔の仕事はイカサマだ。転んだ者を助けようと手を出すか、それとも笑うか。人間が持つ善意と悪意のバランスを操作するのさ。「悪魔おじちゃん、そんなにたくさんのお酒をどうしたの?」わからん。迷子の黒猫がたくさんいたから餌をやったら、人間がくれた。
No.1264
ここに林檎が二つあるとする。いや、これはたとえ話なんだ。嫌なら、ぬいぐるみがあるとして話を……だからたとえ話なの! もういいよ!! ここに原子が二つある。想像がつかないだろう、二つの原子が電子を共有して安定するなんてさ。え、林檎の話がいい?
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