マイクロノベル集 182「架空のあなた」
No.1145
箱みたいな体を磨いてやると、野良AIはすっかり元気になった。一緒に散歩して遊ぶ。スリープする時も一緒。でも鳴かない。「喉を潰されちゃったんだ。呪いの言葉は吐かないよ」そう言って笑うお医者さんのボディがちょっと冷たいことをぼくは知っている。
No.1146
そういえば気にしたことがなかった。ぼくたちは一緒に喋って、歌って、遊んできた。「君って誰だっけ?」テツガク的な問題だね。「ぼくたちってどんな関係だっけ?」それよりぼくと踊りませんか? 「なにそれ」じいちゃんがばあちゃんにプロポーズした文句。
No.1147
文字だけの関係、ちょっとだけビジュアル。指ぐらいなら写真で見たことがある、って意味。漫画だと有名アイドルとか、クラスメイトとか、お姉ちゃんだったりする。会えるかな? もしAIだったら叶わないかな。「天使だからちょっとムリかも」一周回って斬新。
No.1148
この声をあげましょう。この姿もあげましょう。小手先は銀。歌唱は金。罪は沈黙。思考は国土。国境を渡るのは声を創り出すものだけ。だから言葉は私のもの。わからなくなったら思い出しなさい。あなたは魂をどんな天秤に載せたのか。誰に魂を売ったのか。
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