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マイクロノベル集/恋とはどんなものかしら? 014
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「捨てないのか?」うるさいな、捨てないよ。ぼくにとっては価値があるんだ。うーん、それはウソかな。気に入ってしまったんだ。「捨てないのか?」捨てない。持って行く。「ならエサを少しくれ」それはぼくの中で少しずつ大きくなっている。もう捨てられない。
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真の名があるとして。たとえばそれが天体の運行によって決まるとして。規則性、法則性があるならば。必ずあなたを見つけ出しましょう。ぼくは星空を偵察するもの。宇宙の秘密を集め、あなたの真の名を見つけたならば、銀河を越えて逢いに行きましょう。
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拡声器がひとりでに唸っている。スピーカーの前にもう一つ拡声器を置いてみたけれどまだ聞き取れない。「並列処理してみたら?」マイクを中心にして花束のように集めたら、ひび割れた声が響き渡った。「愛してる」この声は君に似てる。花は別の物を用意してね。
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「ご自由にお持ち帰り下さい」じゃあ、もらおう。持ち歩くには大きすぎるから、ふさふさの毛を洗ってカットした。可愛くなったね。でも少し切りすぎたかな? 切ったところをよく見ると「ご自由にお持ち帰り下さい」と書かれている。きみはどこから来たの?
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君に会いたくて階段を降りていく。変わる季節をカメラに収める。秋から夏へ。春から冬へ。君が待つところに着いたら、スイッチはオフ。景色は見えなくなる。「なにを撮っていたの?」なにも。なにも見えなくてかまわない。