8/30 恐怖・嫌だ
だいぶ身体は楽になった。薬と睡眠が非常に効いた。三十路に入って咳が強い風邪を引くようになった時点で、蓄積を疑うべきだったのだろう。
人は老いる。容赦なく老いる。鍛えていようがいまいが、誰だって老いる。老けない爺さんなんてマンガの中だけ。
逆に、だからこそ怖いのだ。
この歳まで父母と暮らしてしまったこと。
この歳まで自立への憧れを持てなかったこと。
それらに対するしっぺ返しが。
介護。
先の見えないトンネル。生活を自分で定められない恐怖。目の離せない恐怖。いのちを預かる恐怖。
『100%大好きだよ』とは、口が裂けても言えない。そんな両親を相手にする俺の介護が、どこまで保つか。恐怖。
体調不良に喘ぎながら畳に寝転んで、俺は気付いて震えたのだ。万物平等に来る老い。だが、それによって更に人生の中の数%が消えてしまったとしたら。
後に残るのは。
アラフィフのくせにほとんど社会に出ていない使えないオッサン
だけかもしれない。嫌だ。そんなの、嫌だ。
ヤダヤダばかりでは現実味がないし、対策もない。だが、打つ手なんぞほぼないに等しい。
金があれば施設に入れてしまうこともできるだろう。親不孝だと言われるだろうが、素人がやるよりはきっとマシだ。
だが金が無い。おまけにまだ恐怖は現実化していない。杞憂に過ぎない。ならば。
やはり、金なんだな……。金は人の選択肢を増やす。覚えとけ。
終われ
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