401:歪な現実主義者
南雲麗は、現実を見る。自分の現状や、世間の現実を見てしまう。だから、時にこう思う。
「夢とか理想なんて、夢物語じゃないか」
そんな人間なのに、小説を書く。物語を書く。だから、話が、キャラクターが。歪になる。現実の、つまらない、型にはまった人間になる。
無論、現実に足をつけたお話はいくつもあるのだろう。現実にある要素だけで構成されたお話など、枚挙にいとまがない。
だけど南雲は、少なくともラノベの片隅に足をおいている。ならば、夢を見せねばならない。時に現実を越えねばならない。
そこに必要なのは、決して突飛でないにせよ。「図抜けたなにか」だ。
才能。
執念。
欠落。
欲望。
屈強。
能力。
それらがあるからこそキャラが生きてくるし、現実に根ざした作品においても、特徴を強調する。
南雲という人間にあるのは、その履き違えだ。「現実を見過ぎるあまり、現実にとらわれている」のだ。
リアリティ。ありえなさ。そういった現実に足を引っ張られ、南雲は想像の翼を広げられていないのだ。故に。歪な現実主義者。
現実を見ながら現実に生きられず。夢を見ながら夢に翼を広げられない。そんな生物が南雲で。そんなだからいつまで経っても地に足をつけられない。
現実を見すぎて、現実の苦しさを知ってしまっているから。
自分のしょうもなさを、自分で制御できないと知ってしまったから。
他人の恐ろしさを、身をもって知ってしまったから。
それでも、なんとか生きていきたいから。
今日も南雲は、ふわふわと生きている。
おわれ
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