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それなら俺は…

最近、父の活動が気になりユーチューブを見たりする。
普通に街頭演説してるし…
新政党作るし…
本当に政治家になっちまったんだな、と。

ホントなら自慢したいよ。
立派な父だと。
緊張症なのに、よくやってる、と。

でも…
やっぱり引っかかる。

以前にも書いたが父は歴史修正主義者である。
火沢はろくに本も読まないので専門家のような事は言えないし、書けない。

ただ、太平洋戦争後における日本の再評価に対しては、結局、男性性の復権という下心が透けて見えて激しい抵抗感があった。

しかし、これが今、お世話になっているテープ式(過去と向き合いトラウマの思い込みを書き換えるというメソッド)と、どれほど違いがあるのかとも思ってしまった。

なぜならば、こうした取り組みも「自分という歴史の修正」に他ならないからだ。

父に言わせれば過去と向き合い「日本は悪くなかった」と検証し直すことで戦後レジュームから脱却し日本を建て直すということだ。

ただ、心理学と大きく異なる点は内に向かうか外に向かうか、だろう。

父は父の思う「正しい歴史を」外に向けて国を変えようと言うのである。

父は昔、「自分はバランスの取れた人間なんだ」と語っていた。

一時期火沢も煩悶しながらも認めていた事もあったかも知れない。

しかし、最近の父は
ホロコーストや、アンネの日記が捏造と言ったり、ユダヤ人が日本人に謝っているという本を出版したり、コロナワクチンを打つなと言ったり、街頭演説でイスラエルを建国したこと自体が間違いであったなど、極端な言動が目立つ。
勿論、ワクチンやイスラエルの問題で父のような考えを持つ人がいたっていいし、実際いる。

だけど父は演説で日本人はこうした議論から逃げていると批判する。

でも、火沢は父の主張自体よりスタンスに問題があるような気がしてならない。

ここまで二元論的な物言いで誰が議論の席に着きたいと思うだろうか、と。

例えばこれが停戦交渉なら相手の不興を買い、殺されても仕方ない。

父とて昔はここまで酷くはなかった。

しかし…
前回の「男だろっ!」という記事で欠けた自分のパーソナリティこそ、「男性性」なのではないか、と書いたばかりだ。
実際はもっと複雑な思いだったし、火沢の煩悶がどれ程、伝わったかは分からない。

父は昔、「徴兵制は若者を鍛えるのにいい」とか、「生命尊重主義が駄目なんだ」とか「銃を手にする外国の子供は立派」だと口にしていた。

俺は…

正直怖かった。
戦後生まれの父が間髪も入れず、こうしたことを平然と言えてしまえることが。

なぜ逡巡や葛藤がないのだろう?
0か100か、そういう問題ではないだろう?
理屈で考えすぎてはしないか?

共感能力や想像力が著しく欠如しているんじゃないかとも思った。

しかし結局は…

「ああ、これが男なんだ」と気付いてしまった。

男というのは昔からこうだったじゃないか、と。

逆に言えば、それだけ自分が男から遠ざかってしまったのだとも。

そして父の言動が恐ろしく感じる裏側では、前回書いたように「死」の問題が付き纏う。

「男」からは死の匂がする。

これがどうしょうもなく怖いのだ。

父のこうした言動を聴いて火沢は「直感的」に「ヤバい」と思った。

これ以上は「ヤバい」。

男としての「責任」は死と直結する。

理屈では父の言うことも分かる。
日本がアメリカから自立して成熟するには確かに、そうするべきなのかもしれない。

でも…
心が受け付けない。
生命尊重主義の中で育った自分としては生理的に男の理屈は恐怖でしかない。

そして父は生命尊重主義が悪いから日本が駄目になったと言い、こちらの気持ちなど何も分かってはくれない。

絶望である。

しかし、向こうもきっと絶望している。

ウクライナの人が戦っているのも、きっと「立派だ」としか言わないだろう。

それ以外の言葉は、ないのだろうか?
そんな単純なことなんだろうか?

火沢は…
ここ最近、さらに浮き沈みが激しい。
毎日、考え方も感じ方も変わってきてるし、相変わらず自分が何なのか分からない。

しかし、その流れの中で…

ウクライナの人達が戦うことが是か非かというより…
彼らが「自己確立」のために必死で抗っているように見方が変わってきた。

自分の正しさを証明するためではなく「自分を生きたい」という、そういう自己確立のプロセスなんじゃないかって…

ロシアと和睦するというより、自己確立した上で緊張関係を保つ。

最近ではヒグマの問題もよく聞く。
ヒグマと共生するにはヒグマを駆除しなければならないという二律背反。

境界を作らなければお互いをリスペクト出来ない。

今、世界で起きてる紛争は、そのプロセスなのだ、と。

人は…
戦わなければならないのだろうか?

俺はまだ、答えは出せない中途半端な存在である。

でも…
父の活動を認めた上で自分なりの「答え」を見つけたいのだ。








































































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