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推し10,000字シリーズ5 保登心愛(?)編
みなさん、こんにちは。名古屋大学A.M.I.会員の"プチトマト"と申します。
本記事は、「推し10000字シリーズ」の第5回として、私が好きな作品『ご注文はうさぎですか?』(『ごちうさ』)より、保登心愛(ココア)について書こうと思います。誤解を招かないよう先に書きますが、私は『ごちうさ』の中でどのキャラが特に推しという事はありません。コラムのルール上推しキャラ紹介となってはいますが、いわゆるココア推しのイメージとは異なる可能性があります。また、キャラの魅力紹介というよりは、作品を読んでいることを前提とした情報整理のような側面が強いのでご了承ください。
以下では『ご注文はうさぎですか?』のネタバレが含まれます。未発売の13巻に収録されると思われる、まんがタイムきららMAX本誌掲載範囲の話も多く含まれますので、単行本及びアニメ勢の方はご注意ください。
1.選んだ理由(?)
今回紹介するキャラクターは、『ご注文はうさぎですか?』(『ごちうさ』)より、保登心愛(ココア)です。
最初に選んだ理由と、少し言い訳をします。
※この部分は記事の本筋には関係ないので、2.プロフィールまで飛ばしても大丈夫です。
まず、この「推し10000字シリーズ」のルールとしては
・推しキャラ(1人)について、10,000字ピッタリでその良さについて語る
・万人受け、ネタバレは気にせず、書きたいことを書く
・CP(カップリング)は推しキャラの紹介の範疇にとどめる
というものでした。
正直この企画を聞いた時の私の印象は「困ったなあ」でした(『ごちうさ』アニメ2期サントラ曲のことではないです)。私は普段、基本的に「推し」という言葉は使いません(これはあくまで私個人がそうだというだけで、そうした言葉を使っている方を否定する意図は一切ございません)。普段「推し」を使わないのは、自分が使い慣れていない言葉で定義も良く分からないため、誤解を招く可能性が高いと考えるからです。
そもそも「推し」とはどういった意味か、ざっくり検索してみたところ、
推し…他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物
だそうです。単に「好き」という表現との違いも調べてみたところ、
好き…心がひかれること。気に入ること
であり、「推し」は距離感が比較的遠く、見返りを求めないという特徴があるそうです。だとすると、キャラクターに対して言う場合の「推し」は「好き」とそこまで差が無いのではないかと、私は感じました。
好きな作品やキャラクターであれば、コンテンツを盛り上げるためにも、人にすすめたいのが一般的だと思います。
また、当然ながらキャラクターは現実の人間とは違うので、直接会ったり会話をしたりすることは不可能です。従って距離感は遠いと言えそうです。対象との関係の進展なども期待できず、その事は分かり切っているので、見返りを求める人もなかなかいないでしょう。よってキャラクターに「好き」という表現を使った場合でも、自動的に「距離感が比較的遠い、見返りを求めない」という部分は満たしていると考えられそうです。ですので、「推し」は「好き」という表現の集合に包含され、キャラクターに使う場合その差は少ないと解釈できそうです。
ただし、検索して出て来た意味には含まれていないニュアンスの違いがあると、個人的には思います。
あくまで私の主観ですが、特定の作品Aとそのキャラクターa,b,c…に対して、
Aのaが「推し」=Aの中でaが際立って一番好き
Aのaが「好き」=Aの中のaが好きだが、一番かどうかは分からない(bやcも同じかそれ以上に好きな可能性がある)
という使われ方をしている事が多いように感じます。もしAの中の複数キャラが好きで、「推し」という言葉を使う場合には、「CP推し」「箱推し」などの言葉が使われているように思います。
そのため私が『ごちうさ』のココアが推しと単に書くと、誤解を招く可能性が高いと思います。冒頭にも話した通り、『ごちうさ』は作品として好きではありますが特定のキャラクターが好きという訳ではありません。『ごちうさ』は、作品として群像劇の側面があり(ご注文はうさぎですか?展パンフレットp.26でも、Koi先生が本作を「群像劇」と表現されています)、どのキャラクターにも各々の魅力があると思います。そうした事もあり、私としては『ごちうさ』はどのキャラクターも好きで、いわゆる箱推しのような状態なのではないかなと思います。
しかしながら、この「推し10000字シリーズ」には、推しキャラ1人について語るというルールがあります。従って『ごちうさ』という作品そのものや複数キャラについて書く事は、基本的にできません。
そうした事情から、実はこの「推し10000字シリーズ」で『ごちうさ』のキャラについて書く事には抵抗があり、結構悩みました。『ごちうさ』以外の作品であれば、物によっては作品内で特に好きなキャラがいることもあるので、他作品で書くことも検討しました。具体例としては、『HUNTER×HUNTER』のパリストン=ヒル、『メイドインアビス』のボンドルドやワズキャン、『ワールドトリガー』の雨取千佳、『HELLSING』のモンティナ・マックス(少佐)などを検討していました。しかし、どの作品も『ごちうさ』と比較して持っている情報量が少ないため、10000字も語る事は難しいと思われます。
このように、「推しキャラ1人について語る」「10000字書く」の二つのルールの板挟みにあいました。結局、妥協案として『ごちうさ』の主人公である保登心愛を取り敢えず推しキャラと仮定してコラムを書こうという事にしました。
最近の本誌『ごちうさ』では、ココアの心情が掘り下げられているシーンが多く、ココアについての紹介記事を書いて情報を整理する事は私自身にも有益で、一石二鳥だと考えたためです。
そのため、このコラムでは、きららMAX最新号付近に至るまでのココアの心情遷移と、今後の伏線や疑問などを情報整理する内容が主になります。個人的な考えも含まれているので参考程度にお願いします。
2.プロフィール
名前:保登心愛(ほと ここあ)
声優:佐倉綾音
誕生日:4月10日
身長:154cm→156cm
血液型:B型
家族構成
父:名前不明 大学教授
母:ちよこ パン屋
姉:モカ パン屋
兄:ケイ 科学者の卵もしくは弁護士の卵
兄:イツキ 科学者の卵もしくは弁護士の卵
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高校進学を機に親元を離れ、喫茶「ラビットハウス」で居候を始める。うざかわいさ宇宙一!好きな言葉は、もふもふ。(言うほどうざいか?)
将来はパン屋さんかバリスタか国際派弁護士か…!?
かわいいものやモフモフしたものが大好きで、チノのことを妹のようにかわいがっている。
3.心情の遷移
ここからは、本誌最新号付近に至るまでの、ココアの心情描写などについての情報を整理して、遷移を見ていこうと思います。13巻になると思われる範囲も含まれていますので、ネタバレにご注意ください。
結論から書くと以下のような遷移をしていると考えました。
お姉ちゃんに憧れている
→憧れるだけじゃなく対等になりたい
→対等になるために都会に出てパン修行をしたい
→でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない
→離れていても覚えていてもらえるようにする
お姉ちゃんに憧れている
早速ですが、本編第1話が始まる以前から見て行こうと思います。プロフィールでも書いた通り、ココアは4人兄弟の末っ子として、木組みの街とは違う場所で生まれ育ちました。中学までは実家の近くの学校に通っていたようです。兄弟の影響を受けて育ったらしく、お姉ちゃんに憧れるという所は姉であるモカの影響が大きいと思われます。
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そもそもココアは他人の影響を受けやすいキャラクターとして描かれていると思われます。例えばアニメ1期8羽でも、映画『うさぎになったバリスタ』を見た影響でバリスタを目指すと言い始め、チノから「すぐ影響されて…」と言われています。街の国際バリスタ弁護士という夢も、そうした影響を受けやすい性格を象徴していると言えるかも知れません。
そうした他人の影響を受けやすいココアが、姉であるモカの影響を受けてお姉ちゃんに憧れているのではないかと思います。作中でもモカに憧れているという話は何度か強調されています。
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![](https://assets.st-note.com/img/1738131934-T8rzGIw7uXk0Ceo6QfHyvbBK.png)
憧れるだけじゃなく対等になりたい
次の段階の心情が描かれているのが原作8巻9話だと思います。ここでは「モカに憧れていることは変わらないが、真似するだけでなく対等になるためにパン修行をしたい」という心情が語られています。
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対等になるために都会に出てパン修行をしたい
先ほどの心情変化を受けて、ココアは都会にパン修行に行くという決意をします。これが語られているのが10巻12話です。
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詳しくは後述になりますが、この時のココアは笑顔を見せてはいるものの若干無理をしていた可能性も、解釈によってはあると思います。
とは言えパンの修行が終わったらまた戻ってくるつもりではあるようです。
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11巻12話でもこうした心情変化について触れられています。
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でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない
ここからは本誌掲載の範囲になります。一見すると木組みの街を離れることに躊躇がないようなココアでしたが、実際には街を離れたことで忘れられることを懸念していたようです。今まで気丈に見えたのも、「自分の気持ちに蓋をしていた」ようです。
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この部分のココアの心情は、これまではあまり見えなかった類の心情だと思います。
例えば、アニメ ダ・ヴィンチのインタビューで橋本監督は「ココアは、とにかく素直なんですね。裏表がない。」と仰っています。
同じくアニメ ダ・ヴィンチのインタビューで佐倉綾音さんも「ココアって、基本的に感情のベクトルが一方向で、明るい、楽しい、ポジティブな方向にしか向いていない」と語られています。
かく言う私もそうしたイメージを持っていたので、この部分は個人的に意外でした。
「忘れられたくない」とは言え、パン修行のため都会に行くという決意自体はゆるぎないようです。実際、2025年1月号では、偽物ココアの「都会に行くのやめる」という発言に対して、それを聞いたチノは「ココアさんが絶対言わない事」と称しています。
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離れていても覚えていてもらえるようにする
ハロウィンの終盤では、「思い出す」「忘れない」と言ったワードが多く登場します。
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そして13巻最終話に当たる(と思われる)2025年3月号では、衣替えの話が描かれました。ハロウィンを終えて季節は冬になり始め、冬用の服を買いに出かけます。13巻で活躍した狩手結良の話も深掘りされましたが、ここではココアの行動を中心に見て行こうと思います。
ココアは、フユと一緒に買い物に行くチノに対して、自分に似合うマフラーを買ってくるようにと丸投げします。
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この無茶振りに対してチノは一日中頭を悩ませることになるのですが、最終的にうさみみパンのキャラクターが入ったマフラーを買いました。それを受け取った際のココアの台詞がこちら。
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「フユちゃんと一緒の時も私の事を考えて欲しかった」とのこと。
2025年3月号でのココアの行動は、大体上記の通りになります。これが13巻の最終話なのだとすれば、13巻で発生した問題等は解決が提示されたはずなので、「都会に行きたい」と「忘れられたくない」のジレンマに対する解決が含まれていると考えるべきでしょう。
だとすると、ここからは想像になりますが、「離れていても(都会に行っても)自分の事を考えて(覚えて)いて貰えるようにすれば良い」とココアが考えるようになったという事ではないでしょうか。マフラーの件を通してこうしたココアの心情変化を描写することで、13巻の締めくくりとしたのではないかと思います。
再度まとめると、
お姉ちゃんに憧れている
→憧れるだけじゃなく対等になりたい
→対等になるために都会に出てパン修行をしたい
→でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない
→離れていても覚えていてもらえるようにする
のように心情が遷移していると考えました。個人的に最後の部分の心情は、都会に行った後も定期的にココアがアクションを起こすと考えると、ココア卒業後もまだ物語が続くようにも思え、個人的にはとても嬉しいです。ココアの卒業とほぼ同時に作品自体も終わると以前から考えていたのですが、願望としてはまだまだ10年でも20年でも続いて欲しいと思っていたので、少し希望が持てました。
4.今後描かれる可能性のある部分
ここからは、ココアの心情で今後描かれる可能性のある部分や現時点での疑問点をいくつかピックアップして書いていこうと思います。具体的には以下の3点です。
・何故木組みの街に来たのか?
・何故「忘れられたくない」と思ったか?
・「何度だって仲良くなってみせる」とは?
・何故木組みの街に来たのか?
これについては既に語られている部分もあります。原作7巻9話「我らわくわく求道者」において、ココアが木組みの街の高校を志望した動機を語るp.77が↓
![](https://assets.st-note.com/img/1738134639-lWPUxNoyECH07w9iDpO3rLXT.png)
また、チノが高校の志望動機について語るシーンも同じ回p.79にあります。↓
![](https://assets.st-note.com/img/1738134677-x9zeuH0V2IrCGBMigRmYQFhp.png)
これを読んで、ココアの志望動機について、主に二つの解釈が考えられるのではないかと思います。
一つ目は「『わくわく』以外の理由が他にあるが、この回では語られておらず、今後明かされる」という解釈。
二つ目は「チノと全く同じ志望動機であり、この回で語られた動機が全てである」という解釈。
一つ目の解釈の場合には、今後描かれる可能性のある部分が残っている事になります。
一つ目の解釈は、ココアの「本当は他にも理由はあった」という発言を重視した結果だと思います。
この解釈のメリットは、p.77の会話が自然な流れとして読むことができる点ではないでしょうか。この解釈だと、ココアは
理由1 わくわくした
理由2 ?
という2つの理由がある状態で街に来た。モカさんは理由1のみを挙げて、理由2を挙げていないので、「それだけじゃないよ」と言った。今は「来る前よりずっとわくわくしてる」つまり、理由1の比重が以前より大きくなった。…という発言だと受け取ることができます。
逆にこの解釈のデメリットは、p.79の会話がやや不自然になる事だと考えます。理由2がこの回で描かれていない未知の物だとすると、チノの高校志望動機(チノは自身の動機を「つまり」「わくわく」であると言っています)を聞いた時に「同じ志望動機」と表現するのは、モカさんとの会話もあってやや不自然に思えます。この解釈においては、モカさんもチノも理由1にしか言及していないため、ココアの反応に一貫性が無いからです。また、もう一つのデメリットとして、伏線であるはずの理由2が、p.77の後半の発言で理由1よりも弱い理由と描写されている点です。そのため、「何故その弱い理由を伏線として引っ張るのか?」という疑問が生じます。
二つ目の解釈は、「同じ志望動機」という発言を重視した結果だと思います。この解釈の場合、ココアの志望動機は理由1しかなく、
理由1 わくわくした(外の街からの生徒が多く、色んな人と知り合えるため)
という事になると思います。
この解釈のメリットは、まずp.79の会話が自然に見える点です。この解釈をした場合、ココアとチノの志望動機はほぼ完全一致していることになり、「同じ志望動機」と表現できそうです。伏線の必要性という疑問も当然生じません。また、タイトルでも使われている「わくわく」がより強調でき、話の構成上きれいにまとまるように思えます。
この解釈のデメリットは、先ほどとは逆に、p.77の会話が不自然な事です。この解釈の場合、ココアがモカの発言を否定できないはずです。強いて言えば、「わくわく」の詳細部分(外の街からの生徒が多く、色んな人と知り合えるため)にモカが言及しなかったから否定した、と考えられるかも知れません。しかし、詳細まで含めて「わくわく」とまとめているのならば、「より詳細な理由があった」という趣旨を「それだけじゃない」「他にも理由はあった」と表現するのは、言葉本来の意味から離れすぎていてやはり不自然に思えます。
ちなみに私個人としては、どちらかと言うと二つ目の解釈で考えていますが、一つ目もあり得ると思っています。
・何故「忘れられたくない」と思ったか?
前述の通り、13巻範囲の話で、ココアは「都会に行きたい」「木組みの街を離れて忘れられたくない」というジレンマを抱えていました。ですがそもそも、
「木組みの街を離れる=皆から忘れられる(可能性がある)」
とココアが考えているので、このジレンマが生じるのだと思います。では何故、「木組みの街を離れる=皆から忘れられる(可能性がある)」と思っているのでしょうか。今のところ、13巻範囲では、この思考に至ったきっかけのような物は描写されていないと思います。こちらも前述した通り、ココアは中学校までは実家の近くの学校に通っていたはずです。ココアのことですから友人も居たでしょう(ここでは仮に旧友と呼びます)。だとすると、ココアは木組みの街に来た時点で既に、旧友と離れる経験をしているはずです。しかし、12巻以前の話で、旧友と離れたために忘れられる事を危惧するような心情は、描かれていなかったように思えます。
これについて今の所考えられる解釈は、「街を離れる=忘れられる」と思うに至った具体的な何らかのきっかけがあり、「既に描かれていて私が気付いていない」または「現時点では描写されていない」というものです。問題はどのタイミングでどういったきっかけがあったのか、という点です。
既に描写されている場合、候補として例えば12巻1話や13話などティッピー関連の話が浮かびますが、いまいち「街を離れる=忘れられる」との関わりが乏しいと考えます。それ以外だとしても、10巻12話以降13巻以前のタイミングだった場合には、ココアの心情解釈が少し変わってきます。その期間に「街を離れる=忘れられる」と思い始めたのだとすれば、逆にそれ以前はそう思っていなかった事になります。つまり、10巻12話での「安心して街を離れられる」というのが本心からの発言だったことになります。
まだ描写されていない場合は、どういったきっかけなのか判断は難しいです。しかし、今後きっかけを明かすとしたら時系列を前後させることになります。伏線らしい伏線も、1巻から今までの期間に無かったと思います。そのため、個人的に思いつくのは、1巻1話より前のタイミングという解釈です。前述の通り、ココアは1巻1話以前に旧友と離れる経験をしているはずです。仮に、この時旧友と離れた事が原因で旧友と疎遠になってしまった(忘れられた)という実体験があったとすれば、「街を離れる=忘れられる」という思考に至ったきっかけとして自然だと思います。ただしこの場合、今まで旧友の話を出さなかったのは何故か、そこまで重い話をやるのは作風を壊さないか、などの問題点はあり得ます。
そもそも13巻範囲でココアが抱えていた心理的な不安などは解消されたように思えるので、今更きっかけを深掘りされる可能性は低いという見方もできます。
・ 「何度だって仲良くなってみせる」とは?
ややこしくなるのでここまで敢えて書きませんでしたが、13巻範囲でココアの心情描写が描かれている箇所は他にもあります。その一つが以下の箇所です。
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タイミング的には、先ほどまとめた心情の遷移の内、「でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない」→「離れていても覚えていてもらえるようにする」の間あたりに入ると思われます。しかし、「忘れられたくない」と「何度だって仲良くなってみせる」というのは、心情として繋がっていないようにも見えます。この点について詳しく見て行こうと思います。
「何度だって仲良くなってみせる」とは、恐らく「(仮に忘れられたとしても)何度でも仲良くなってみせる」という事でしょう。つまりこの場面では「忘れられたくない」から「忘れられても何とかする」という、一段階先の心情に変化しているのではないかと思います。
このように考えると、「何故忘れられたくないのか?」が問題になってきます。確かに、理由なくただ「忘れられたくない」という事も心情としてはあり得ます。しかし、忘れられる事その物が嫌だという話なら、「(仮に忘れられたとしても)何度でも仲良くなってみせる」に繋がりません。
そのため、「何故忘れられたくないのか?」について、三つ解釈を考えてみました。
一つ目は「忘れられたくない理由X」があるという解釈です。「忘れられたくない」よりもXの方がより根本的な原因であって、Xを解決できるならば忘れられても大丈夫という話なら、「忘れられたくない」から繋がると思います。すると次の問題はXが何であるかという所になります。
Xがまだ描かれていないとすれば、今後描かれる可能性のある部分と考えられます。しかしその場合、既に13巻範囲で解決したと思われる問題を、更に掘り下げる必要性があるのかという疑問は生じます。また、前述の心情遷移から考えても、「でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない」→「離れていても覚えていてもらえるようにする」という部分とはやはり嚙み合わないように見えます。
より単純に、「何度でも仲良くなってみせる」から、そのまま「仲良くなくなる」=理由Xという解釈もあり得ると思います。ただしこの場合、それ以前のシーンで「仲良くなくなる」のが嫌だと言っているシーンが見当たらないという問題があります。前述の通り「忘れられる」ことを嫌がっているシーンは何度かあって強調されているにも関わらず、より根本的なはずの理由Xがこのシーンで唐突に出てくるのは違和感があると思います。また、やはりこの場合も「でも木組みの街を離れて皆に忘れられたくない」→「離れていても覚えていてもらえるようにする」という部分との噛み合わせは良くないように見えます。
二つ目は、これを言い始めたら何でもありになりますが、キャラクターの心情の話だから論理的な矛盾もあり得るとして、特に理由なくただ忘れられたくないという解釈です。この場合の論理的な矛盾とは、忘れられる事その物が嫌だという話なら、「(仮に忘れられたとしても)何度でも仲良くなってみせる」と繋がらない、という点です。
この解釈の場合、実質的にココアの台詞「何度だって仲良くなってみせる」を無視できるので、他のシーンでの心情の遷移との衝突は避けることができます。
ただし、件の台詞は2024年11月号の最終ページでもあり、そんな重要そうなシーンの台詞を無視できるのかという問題は発生します。また、ココアは数学と物理が得意という設定もあるので、心情の話だからと言って論理的な矛盾もあり得ると考えるのは早計にも思えます。
三つ目は、二つ目の解釈と近いのですが、件の台詞は単にリプラビのオマージュ要素であると考える解釈です。2024年11月号はリプラビオマージュ回とも言えるような内容であったので、この最後のシーンもそうしたオマージュ要素に過ぎない可能性もあります。
この解釈をした場合でもやはり、実質的に件の台詞を無視できます。
この解釈の問題点は、オマージュ元らしき台詞が見当たらない所です。前半部分の「世界が繁栄と衰退を繰り返しても…」という所はリプラビの要素を感じられます。しかし、後半部分「何度だって仲良くなってみせる」は元のリプラビには無い台詞で、オマージュだとしたらどこから取って来たかという疑問が残ります。
5.あとがき
ここまで読んでくれた方がいたとすれば、長時間ありがとうございました。意外と文字数と時間が足らず一部についてしか書けていませんが、少しでも参考になれば幸いです。
『ごちうさ』を知らなかったが、これを読んで興味を持ってくださった方がもしいれば、書けなかった事がたくさんあるので、是非アニメや原作を見て下さい。主人公のココア以外も魅力的なキャラクターばかりです。
コラムシリーズの趣旨から外れているような気もしますが、まあ一つくらいこんな文章があっても良いでしょう。