「あの人は下手くそだった」と言われた
今日は、暖かい日でたくさんの予約が入っていた。
私は16時からの出勤で、髪の毛が真っ直ぐストレートのボブがとても似合うご婦人を担当した。
スタッフは私ともう1人のRちゃんの2人だった。
4つあるベッドの奥のカーテンで仕切られた方を、私は使った。
よく喋る方もいらっしゃるが、この方はほとんど話されなかった。
話しかけられたくないのかな?と思い、最初のご挨拶と強さ確認だけして、あとは黙って施術していた。
その前に、今日お店に来る道中、「いずれ、カリスママッサージ師と言われるようになりたいな」と考えていた。
ここに入って3ヶ月が過ぎ、少しは上達したかな?と思ったのだ。
そこへ、Rちゃんのお客様が来て、そちらもマッサージが始まった。
その方は私も以前1回担当した事がある、とてもよく話す男性だ。
大きな声で話すので、話の内容が思いきり聞こえてきた。
なんでも、お正月は静岡県に家族で富士山を見に行ったが、行きの新東名で事故があり渋滞に1時間はまって、帰りも新東名で事故があったから、旧東名で帰ってきて大変だった。
家族は、車で寝ていたから楽だったかもしれないけど、俺はずっと運転で、ものすごくくたびれた。と話していた。
そりゃ大変だ。正月から富士山見に行く人って、やっぱりいるんだ〜。などと私もその人の話を聞き込んでいた。
すると、その男性は急にここの店のスタッフの話になった。
「この間、◯◯さんがマッサージしてくれたけど、全然ダメだったよ。あの人は下手くそだった。ここを揉んで欲しいってところを全然やってくれなくて。俺はもっとグリグリやってほしかったのに」
その「◯◯さん」とは、私のことです。
ガーン。ショック。
えーーー、気に入ってなかったんだー。ぜんぜんわからなかったーーーー。
割と良い感触だったと思ったのに。。。
ええーーん。なんだー。
全然、気持ちよくなかったのかぁー。
私はカーテンの向こう側にいたし静かだったので、まさか当の本人がいるとは思わなかったのだろう。
困ったのはRちゃんだろう。
私に確実に聞こえたであろうと容易に想像がつく。
すると彼女は「あ、そうでしたか。マッサージは、相性がありますからね。でも私、こないだ◯◯さんにやってもらいましたけど、気持ちよかったですよ」と優しくフォローしてくれた。
その言葉に、どれだけホッとして勇気づけられただろう。
ややや、優しい〜あー、Rちゃん、ありがとう。
その後、かなりショックを受けつつも、今やっているお客様に集中しようと気持ちを切り替えてみる。
今目の前のお客様の、肩こりと頭痛、腰の痛みを和らげることに専念した。
ストレートボブのご婦人は、施術が終わると「とても気持ちよかったです。ありがとうございました」とおっしゃってくれた。
リップサービスかもしれないけれど、私は嬉しかった。
だが、1日経っても、やっぱり昨日のことが頭をリフレインしてくる。
「あの人は下手くそ。あの人は下手くそ。あの人は下手くそ」
私の目標は、カリスママッサージ師。「カリマサ」だ!
いつにならわからないけれど、いろんなお客さんを、楽にできるような私になりたい。